わたしとのんちゃん

 のんちゃんは、わたしの中学時代の同級生だ。とびきり可愛くて、でもとびきりわがままで、そしてちょっと不安定な女の子だった。

 問題児だったのんちゃんは、友達がいなかった。授業をサボったり、敬語を使わなかったり。とにかく色々な問題行動が目立って、のんちゃんは孤立していた。

 そんなのんちゃんとわたしがどうやって仲良くなったかは、思い出せない。でも気まぐれなのんちゃんのことだから、ただ暇つぶしの相手が欲しかっただけだったんだろう。ちょうど良くわたしが一人ぼっちだった、ただそれだけなのだ。

 高三になった今も、のんちゃんは相変わらず可愛くて、わがままで、不安定な女の子だ。

 例えば、「恋愛とかクソ」と言った一ヶ月後には、「あたし彼氏がいないと生きてけないわ」と言う。本音は後者だと思う。のんちゃんは何かに依存しがちなとこがあって、SNSを見る限り今は大学生の彼氏に夢中らしい。

 他にも、「ちーはあたしの友達だよ」と笑った一時間後には、「あんたはただの暇つぶしなんだかんね」と冷たく言う。こちらの本音もやっぱり後者。いつまで経っても、わたしはのんちゃんにとって『都合の良い暇つぶし』だ。だからこそ、のんちゃんとの関係が続いているわけなんだけど。

 今日だって、こっちの予定にも構わずに突然誘われたのだ。おかげでわたしは、友達との遊ぶ予定をドタキャンすることになった。でも、後悔はしていない。のんちゃんに怒ってもいない。わたしの最優先は、どうしてものんちゃんだからだ。

 恋は盲目というやつだろうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る