のんちゃん、好きだよ。

たちばな

「ちー」

 あだ名で呼ばれて、わたしは顔を上げた。わたしのことをそう呼ぶのは、たった一人。

「のんちゃん」

 目の前にいたのは、のんちゃんだった。会うのは三ヶ月振りだから、少し驚いてしまう。

 この前は金髪だったのに、いつの間にか黒髪のツインテールに戻ってる。黒髪に差し込まれたメッシュはピンクで、目元のアイシャドウも、ぷるつやのリップもピンク。ピアスは三つくらい増えてる。でも服と口元のほくろは変わってなくて、ほっとした。

「……どこ見てんの、きも」

「ご、ごめん」

「良い、行こ。今日色々行きたいの」

 ぐっと手を引かれて、わたしは慌ててのんちゃんを追った。のんちゃんは足が速いから、気を抜くとすぐ置いていかれる。駅の人たちに混ざって、いなくなってしまう。

「まだ電車来ないよね」

「うん」

「じゃーちょーど良かった。トイレ行ってくるから」

「うん」

「置いてったら許さんからね」

 わたしがのんちゃんを置いていくわけがない。のんちゃんは置いていくけど。わたしが素直に頷いたのを見たのんちゃんは、満足げに駅のトイレに行った。

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