第2話
ティトリトアが大袈裟に驚いたのにも訳がある。
まず、マスターである彼は基本書類に追われていてマスター室からでない。
そして、例えマスター室から出たとしてもこの温室に入ることはないのだ。
その理由は不明であるが。
そして、魔力感知、気配感知が人より数十倍優れている彼女でもマスターが近づいてきたことに気づかなかった。
(ここに来るのは私だけという概念は無くさないと)
「何用?」
「特に何も?」
「であれば、ここに来る理由ないわ。何用で?」
彼は先程までティトリトアが座っていた椅子に腰を下ろす。
ティトリトアの口調はそうでないとしても彼女のその見た目から優しい雰囲気が滲み出る。
「はあ、」
「幸せが逃げるよ」
「マスターにタメ口なのはお前くらいだからかえって落ち着くな。要件は本当に何もない。ただ様子を見に来ただけだ」
「様子を見るという要件ね。でもそれだけではない、でしょ?」
「、、、、、、書類処理を手伝ってくれ!」
「こんなのが本当にマスターでいいのか、、、」
彼らの間には割って入れるような物ではない、何かがある。でも、それでいい。
書類の処理は、普通のギルド員や隊員にはできない。
マスターと、そこら周辺を把握しある程度の権限を与えられている者だけだ。
山のように重なったそれらの書類は処理しても、処理しても、再生するかのようにまた増えていく。
そしてなんとか処理し、その書類が半分まできたところで1枚の他のとはまた違う材質の良い紙に目を止める。
(これは、、、)
「、、、、」
手を止めたティトリトアに気づき、マスターがその紙を見る。
「マスター、これはいったい?」
「それは、、、」
学園の入学届出 受理
そう文字が綴られ下にはマスターの署名がかかれている。
そして、ティトリトアの偽名であるラウという名も。
それはマスターがティトリトアを学園に入れようとしていた証。
「私の名前が書いてある、けれど私は学園に行こうとは思わない。それだけよ」
(マスターはおそらく、私も思っての行動をしただけでしょうね)
何故この紙がこれら書類に埋もれていたかはわからない。
「マスター、いつこの話を私に切り出すつもりだったの?」
「さて、いつだろうな。だが、学園に入学する手続きは済ませてしまった」
「私は望んでいません」
ティトリトアのような15歳になると、帝国国民は学園に通い始める。
この歳は皆学園に夢を抱くのだ。
新しい関係、環境、将来への1歩。
しかし、ティトリトアは例外だった。
(私にはまた別のやることがある。勉強というのはとっくに終わらせているし、今更友達を作ろうとは思えない。それに、私もギルドの一員である身。最近は人手不足もあるし、ここで私が学園に行く訳にもいかない)
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