第8話 心と体


 回路図が描かれた黒板。


他人との協力なんて、家族でも事情があってもつれるのに、こんがらがって出来るもんじゃない。


心から信用するとか。

俺自身、周りに色々な人がいて、優しくて、頑固で、出来るとは言ってるけど、本心は、

隠したい。まだ分かってないし、突っつかれたくないから。

でもそれは辛い。

でも俺が選んだ道だから、まだ納得できる。


四角形や台形の枠線に、ところどころ挟まる、えんぴつ型、削っていないえんぴつ型の記号、スイッチ、矢印、某伝説の配管工の帽子みたいに、中に大きくMを書かれた丸、その他多種多様な記号が並べられて幾重にも重なり、回路図が幾何学模様のような形になっている。


教授の書いたモノは、英語の筆記体みたいに書かれて、全てを理解するのは至難の業だ。



 今見ている皆んなにも、分かるんじゃなかろうか、自分の目の前にある物が理解できなすぎて、似てもないのにそれにしか見えなくなってしまう現象。

例えば雲がおっぱいに見えたり、木の木目が犬の顔に見えたりなど


 ヒロシはそんな現象に陥っていた、黒板いっぱいに描かれた回路の一部がまるで、カクカクのピクセル化された、ブタの顔みたいに見えていた。


ヒロシは理解できなかった訳では無く、別の理由があってそう見えているのだが、一瞬だけ背筋が冷えるのを感じる。


可愛いブタ。 ブーブー


レッドボア。 ブーブー……フシュー



怖かったな〜、

あの時は初金テンションだったし、

姫を助けるみたいなゲームの憧れの場面だったから、カッコつけたまま行けたけど……


もし俺がアニメの主人公とかだったら、

自分の傷を見て興奮とか、恐れに勇気が勝った!とか、感動的でどこか意味ありげな事があるのかもしれないけど、


やっぱり……こえーよ。


 昨日の理想的な救出劇とは打って変わって、現実が現実味に溢れている。

冬休みを通って2ヶ月ぶりに見た校舎は、何故か綺麗に見えたけど、今はそこまで。ふと横を振り返っても空席が有るだけで、ヒロシはつまらなく感じていた。


電子工学の講義室、ヒロシが座っている、この教室は一目見ただけでスカスカと言った印象だった。

前から上がっていくように段々になった、特性上、人が大量に入れるように作られているはずが、今いる教室はまばらに人がいるだけで、生徒たちは別の事をしていて、人気も無い。


教室の何処に座っても、大きすぎる二枚の黒板が見える。横に黒板を動かすためのチェーンがついた、滑車式の古い学校にはよくある黒板だった。


一番に目につく黒板がかなり時代を感じる作りをしていて、それとは対照的に、高そうな作りの生徒達の机と椅子。



素材は黒檀で、木とは思えないほど黒く、丁寧に研磨されていて、どの角度から見ても角が無いなだらかな机と椅子、深い羽毛の中みたいな、色味も相まって見ているだけで心が落ち着く様に感じる。

それでも、机と椅子が地面に固定されていて、椅子と机の間が狭くて、背中を押され、猫背にさせてくれない。椅子に授業をちゃんと受けなさいと言われてるみたいで少し窮屈にも感じる。


座面が固くてケツも痛いし。


ヒロシが大学の講義の一つに電子工学を選んだのには、理由がある。


近年この世界は、時代の進歩や技術の発展もあり、昔では専門的な内容だった電子工学が、今では就職時や就学時の面接でも聞かれる、かなりメジャーな項目になっていた。

例えば、そこら辺を歩いている小学生に学校でよくやる授業は?と聞けば、国語、算数、理科、電子工学!と言うくらいには浸透している。

子供の時から教えられる、だからプラスでより専門的なものとなると難しく、授業を受けようとする者は少ない。


だが、もし、ゲーム好きがゲーム好きの感性を持ったまま、スクスクと大学まで育って行き、そして体育会系 理工学系 文化史系、この中から一緒に旅をする相棒を選べと言われれば、どれだけ気に入らないラインナップをしていても、趣味と少しでも関係する、工学に進むのは当然と言えるのではないか。

説明過多になりながら、うだうだ考えたが、結論はシンプルだ。


『ゲームが好きだから。』


教室はスカスカで、

教授もス……電子工学バーコード的に禿げている。

ヒロシは頬杖をついた、伏し目でその頭を見ていた。


もしあの人が、電脳世界リバーススカイを何か急にクジで当選とかして、売ろうか使おうか迷って、売るって選択肢の方が強かったけど、一度だけ、一度だけ好奇心でつけてみて。

起動して、自分のキャラクターを作るんだとしたらさ、自分の頭にコンプレックスを隠す髪を生やすのかな。


最近は、そんなことばっか考えてしまう。

相手にとっても勝手にコンプレックスを想像されて、気分のいいモノでは無いだろう、むしろ、本当に失礼なことなのに。


「ミ、キミ、君の番だぞ。」

そんな想像の中に閉じこもっていると、突然斜め後ろに座っていた女子から、肩をチョイチョイと叩かれて、前を見るように促された。前を見ると教授から指揮棒を刺されていた。


想像にハマって、記憶に残らなかった時の視界を思い出すと、前に座った人から順番に問題を解かせていたらしい。


問題が何処の問かもわからなくて、必死に探している間、しばらく沈黙して居ると先生の方から、慣れっこというような顔をして、助け舟を出された。

「34ページの記号配列だ、答えてみなさい」


「え〜と、ハイ。〜〜〜〜〜です。」


ヒロシは実際、単体一つの教科なら頭は悪い。ヒロシの強みでもあり弱みでもある、それは生粋のゲーム脳だ。

先では、相手のことを勝手に想像して、ゲームだったらと言うヒロシの考えを、悪い意味で使ったが、



良い意味で使えば、どんな問題もどんなテストでも、ゲームとして考える事で計算能力も跳ね上がり、ゲームの理論なら勉強も覚えられる。教授の出した意地悪問題にも、

難なく答える事ができる。


「…ホウ、素晴らしい。理由を聞いても良いかな?」

「え、ハイ分かりました。〜〜」


ヒロシが答え終わると、教授が何か急に機嫌が良くなったかに思う、少し早いテンポで授業は進み、ノートを写るのが大変だった。


そしてやっと終わった。


長い廊下を歩いて開けた場所に行くと、相手が見えて、二人して小さく手を振った。そこは学校の中にある広場、ベンチに腰掛けた。


 リバーススカイの広場に似た、噴水が見える。その周りは、低木の生け垣や人だかりがあって、状況まで似ているように見える。

 噴水はかなり昔に壊れてそれから、もう何年も水が流れることはなくて、もう置いてあるだけのオブジェクトになっている。


最初の授業は別別の、自分の気になるものを受けて、それ以外は同じ授業をとってある。


ヒサにニヤニヤした顔で、頭を突っつかれる。

「どうだった。」

「ハー、弄られまくったっての、」

ヒロシはヒナの手をうざったいように払っが、顔は安心しきっていた。


「やっぱり、急にその頭になったらいじられるって、なんて言われたの。」


「ヒナもあったことある奴だよ。」


俺が教室に入った時、よく遊ぶ奴らに声をかけた。


「よぉ〜久しぶり!」


みんな目を点にして、俺の顔と髪を行き来していた。そいつらの第一声は、三人揃って

「「「誰だ。」」」だった。


「俺だよ」

「誰だよ、わかんねぇよ。」


「オレオレ詐欺いや、クラクラ詐欺か?」


「金髪の友達なんていたっけな〜、ちょっと家帰って卒業アルバム漁ってくるわ。」

口々にボケを言って、離れて行こうとするのを、肩を掴み止めて。もう一度名乗った。

「俺だよ、海輪ヒロシだって!」


「「なんだーお前かー」」


「前々から、まだ変えないのかなとは思っていたけど、今か。」

教室の扉のほうに走り出したやつが、髪を触ってくる。


「金髪か〜似合ってんじゃねぇか、

ヒロシ………クラ◯ド。」

「ク◯ウドじゃねぇって、」


そっから、知らない人いじりから、

金髪キャラいじりに変わって、また始まった。


「ってな感じで、めっちゃ弄られたよ。

アイツら一回いじって良いって思うと長ぇーんだよ。今までたまに話す奴も、近づかなくなっちゃったし、今日は周りから変な視線もよく感じるし。」


「えー別に、気のせいでしょ、変じゃないもん。」

「おお、…そうか?」

周りも静かになった気がするぐらい、何か変な雰囲気が流れて、二人とも静かになった。


「今日は、リバーススカイで何するの?」


「最初、電脳世界を始めたとかに、ボードゲームやろうかなって言てたよね、」


「そうだっけ、…あーそうだったそうだった気がする、確か多分…。」

「本当に忘れてんのかい。」

ヒサの頭をチョップで叩くと、ヒサは目を萎めて一瞬だけ猫みたいな口になる。

何故かそのタイミングで、ヒロシのお腹がぐーと鳴る。


「ん?どうする、一旦ごはん摂っても良いんじゃない。」

「そうしますかね、朝飯からまだ何も食べてないもんな。」

椅子から立ち上がり、


「何あるかな、メニュー。」

「私はずっと決まってるよ。」

「カレーうどん!」

「正解。」


お話しにならない会話を繰り広げて、

二人は離れて行った。


誰かが、二人の会話を聞いていた。


人一人にしては、かなり小さい影が、草むらの中から頭を出した。と言っても身長のせいか、口元ぐらいはギリギリ出ているが、

顎から下は一切草むらの中から出て来ようとしない。


小刻みに震えていて、その草から覗くキツそうな顔からして、多分背伸びしているのだろう。ついに足の力が抜けて、口元まで草に埋もれていった。


「今、アイツ電脳世界リバーススカイって言ったよな。」

齧歯類を思い出す口調、と独特な声の高さで、年齢も男女かもわからない。


ガサッと何もいないはずの、草むらが動いたのに驚いて、ただ歩いていた女生徒が叫ぶ。


「きゃーー!」

隠れていたのに急に発せられた声に驚いた、小さい者は。


「うわぁーーー!」


二人に声が聞こえないほど離れた時、

二人の悲鳴が響いた。


〜〜〜〜〜〜〜〜

コレは絶対直します。

日常回みたいな感じで読んでいただければ、

まだ、大丈夫なのかなと思います。


ちょっと時間もない中で、頑張って書かせていただいたんですけど、すいません。

見ていただきありがとうございました。

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電脳世界で虚乳な彼女 (アックマ) @akkuma

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