第4話 何者になるか
コンプレックス
それは誰しもにあって、誰しもが隠そうとする。
例えば、中世の戦禍の中、激烈な刃が人体を裂き、血生臭い匂いが混じった空気が渦巻く。自身の死を国がために投じる世に、ただの一騎、使いの武器一つで、千の兵隊を薙ぎ倒し、国の民を守り抜いた勇者も。
近代まだ、神のみわざもしくは魔法の領域と、確実に実現不可能の研究と定められ、将来有望だった天才の人生を無駄にした。くだらない研究に手を出して何をするか?と、散々見放された。
世界で初めて電気を操縦した科学者も。
世界の歴史を創造していった、数々の英雄にも多分…あったのだろう。
ではいつの時代も誰もが、隠そうとするのは何故か。
突かれればどんな強い者でも倒される弱点だからか。
身動きが取れずに支配される、操縦桿だからか。
自分だけが知っている事で、やっと安心感に浸れる、自分の心に一番近いところだからか。
結論はわからない。
世界を犠牲に燃しても、自分第一位で考えていた人間が、一つの転機で自分を大嫌いになる。
「もうムリー。ピョンッ」
自分から火に飛び込もうとする。
そんなことを考えているヒロシには、大量のシャワーが、頭にかかっている。
金属製やプラスチック製の、水道管から登ってきた適温に調整された温水を、吹き出す部品。固形の製造物シャワーヘッドが落ちてきて頭にぶつかってるわけじゃ無い。
お湯だ。
頭を流れて行くお湯は、床に垂れても湯気が出ていない。
考えられる原因は周囲の温度が高くて、湯気が出るほど温度差がない、熱い季節といえば夏それでも無いのでは。もしくは、
電光端末に表示されている温度は38度、いつもシャワーの温度とは違う、ぬるま湯を頭に被っているのには少しだけ意味がある、少しだけ肌寒いぬるま湯で体を冷やしてしまっても、熱くなっていた頭を冷やすことの方が優先している。
付き合って3年
カップルになり始めた時は自分も彼女も、どの程度なら、自分を曝け出して良いのだろうとか、それは諦めて自分より相手に合わせようと、脳を回して画策してきたはずだ。
もう、今では互いの事も知ってるし、言わなくてもお互いが相手のことを思っているから、察しあう。
俺も自分を隠さずに…出してる。
相手もそのはずだ、彼女のコンプレックスは知ってる、初めの方に言ってくれたから。でも俺のコンプ……は知っているだろうけど自分からは…言えてない、
ちょっとだけ笑われそうで。
(ゲームの世界にも、俺が身勝手に誘ったことだし、俺の事は)
冷やしたのにまた熱され始めた議題について考えていた。ヒロシの居る風呂のドアが勢いよく開けられる。
「ヒロシ!今日はどうするまた、昨日と同じゲームにいく?」
「ああ、別のウッ…ヒサはどうしたい?」
「私はまた、あそこ行きたいかな、今度はちょっと強い敵いる場所にしようよ。」
ヒサはいつも以上にワクワクした眩しい目で、俺を見ていた。
いつもだったら、嘘くさい演技できゃーっと叫んで体を隠すとか、わざと見せつけるとかするのに、今日はしない微動だにしない俺に、違和感を持ったのだろう、首を傾げていた。
「大丈夫?なんか怖い顔してるよ。」
「大丈夫。先に行ってて良いよ、俺風呂上がるまで時間かかるし。………あの、
飛沙!俺のどんなところが…好き?」
震える声でヒロシはそう聞いた。
「わかった」と言って背中を向けて歩き出そうとしていた、飛沙を引き止めると。
飛沙は嬉し恥ずかしそうに話し出した。
「どうしたの、急に。そんなに悩んでいるなら、言ってあげようか、私の好きな人の特徴トップスリー。
まずは顔。普通の醤油顔なんだけど、ちょっと伏目で宝石の原石みたいな、磨けば光る顔してるところ、髪をもちょっと切れば、もっと万人ウケする顔してんのにね。
たまに夕日のベンチとか、海岸沿いとか変な場所でカッコつけてる時とかはツッコミ入れてるけど、ちょっといいかもって思う時もあるよ。」
「次は優しいところ、すごいメジャーなんだけど、本当だよ。
自分がどんだけ辛くて悩んでる時でも、相手のことを見ていて、相手のことを第一に考えて、行動しようとしてくれるとこ。」
「あとはあとは、私を見つけてくれた事。
頼れるものが運動部だけだった私は、大学では友達作りができなくて困ってたよね。
受験もギリギリで、大学の勉強には当然着いていけなかった。毎回毎回ギリギリで、友達に聞くこともできなくて困ってたとき、そのときに声をかけてくれた、それが貴方。
そしてまた誘ってくれた。ありがとうねゲームに誘ってくれて。じゃあ!先行っとくからね。」
自分ですら言い出すのは恥ずかしかったのに、具体的にいうなんてもっと照れ臭いだろうから。期待はしてたけど、言わないって場合も考えていたのに、気がついたらいっぱい言われて、去っていった。
コレは嵐の後の静けさなのか、頬を染めて
少しの間考えこくってしまった。
「言いたいことがあったのに…アイツも変わらねぇな。」
立て続けに言って去ってきた。
ヒサはゲームの中に入っていて、街を散策していたところだった。
「恥ずかしいーー!!!」
街中で叫ぶ。突然予告もなく襲ってきた羞恥心に耐えられなかった、ヒサは自分で耳を塞いだのに、耳がキーンとした。
街にいた相当の人に聞こえて、いたようで、
街を行き交っていた人々が皆んなこっちを見ていた。
ヒサは申し訳なさと人の目が気になって、街外に歩き出した。足早に歩くその足取りは、段々と早くなっていく。
(あんなヒロシ久しぶりに見た。昨日私が何かしちゃったのかな。
…本当に楽しかったな、初めてだったから、一緒にゲームするのなんて。)
「そんな彼氏が悪いみたいな言い方しちゃダメだよね、私が断ってたんだし!
私下手だから!邪魔しちゃわないように!」
足を引っ張っちゃうなら、最初から走らない方がいいと思って。
昼を過ぎて日差しの強さを増した時刻、
ヒサは草原でいつの間にか走っていた。
原っぱに足が付くときには、足の付け根からピンと伸びていて、腰の高さが変わらない。
足で地面を跳ねる感覚で、足を関節から駆動させる。腰の関節、膝の関節、足首の関節、指先の関節まで、足を抜くときも同じ最初と同じ、ピンと伸びた状態から膝を前に出すようにして、足を前に引きつけていく。
プルンと揺れる。
適度に脱力していて、振り切った後の腕の動きからわかる。だらんとしていて、風に動かされた手首が曲がる。
プルンと揺れる。
踵がつかない状態で走る。
なのにアキレス腱が軋む音を立てない。
天才プログラムマーでも人体を完全に再現する事は無理だった。筋肉だけのようだった。
否、このプログラマーは再現しなかったのだ。鍛えることができない腱や神経なんかが追加されていたら、プレイヤーによって実力差や、個体差ができてしまう。
それを楽しむ開発者はいるかも知れないが、
ここの開発者はしなかった。
何故かはわからない。
プルンと揺れる。
スライム狩りの動きも慣れてきた。
走りながら、大剣を振っても変わらない、腰の高さそれによる。変化しない走る速度。
自分からは絶対に、やらなかったのに今では、一人でも楽しめる。
(でも、一人かぁ。)
実力が足らないからか、
何かが足りないような、無力感。
久しく忘れていた感覚。
ヒロシもこんな気持ちだったのかな。
一緒にやろうって、こんなに言いずらかったんだ。
走るのってこんなに楽しかったんだ。
「ハーハーハーハー……スゥーーハー!」
走ると頭がスーとした。
難しいこと考える暇がなくなるから。
背中に新記録のトロフィーを表示させながら、ヒサは優しさを胸に秘めるように、
手を胸に置いた。
プルンと揺れた。
〜〜〜〜
※ここらへんの話変えるかもよ〜
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