第2話 ゲーム選択画面
黒地の背景に、白字で書かれていた。
『
この場所は新しい自分になれる、
第二の世界です。
貴方の自由に限界は無いのです、
どうか全力でお楽しみください。
リバーススカイ発案者より。』
それを見て、ヒサは無邪気に声を上げた。
「すごーい、発案者って事は一番最初に思いついた人って事だよね。まだ生きてるのかな?」
「ん、あー分かんねぇな、別に死んでても出るんじゃね。」
開発者からのテキストメッセージ、
利用規約と同じ感じで、大体の人は流し読みもしないで、ただ飛ばすだけだ。
ヒサはゲーム自体が新鮮に見ていて、俺にはその姿勢が新鮮でヒサに釣られて初めて見た。
こんなゲームを作ったんだ、すごい人なのは疑いもない。
でも、もっと天才の迷言みたいなモノを期待していたのに、意外に普通だった。
まあそうか、第一印象と間口は広い方がいい。
広場の一番目立つ場所、噴水の上に大きく映る、テキストメッセージを見ながら広場を歩いていた。
「ヒサ、ゲームの世界に行くぞ!」
「何言ってんの?もういるじゃん」
その世界にあった服装に自動的に変わる機能で着せられた、とてもシンプルな服装で、
地面をコツコツ蹴る、電脳世界でもリアルな感触が足に返ってきて、その振動に浸る。
「ここはまだ、…ホテルのロビーみたいな場所なんだ。
ここからゲームの世界を指定して、そこの部屋に遊びに行く、感じに近いんだよ。」
自分の知っている知識を、初心者にも分かりやすく変換しながら話している。
身振り手振りをしつつ、話しながらも移動して、その場所に着く。
・無数に存在するゲームの中から、行きたい世界を選択できる場所。
多色光のパネルが並んで、タイトル、と光のパネルの中から、画面みたいにその世界が映っている。
下の方にはジャンル別や、検索機能まで入っている、見やすさ、綺麗さ、使いやすさ、コレには流石大企業の知恵も入っているんだなと感心する。
「へーそういう感じなんだ、じゃあまずは簡単なゲームから、」
ジャンル
●RPG
●アクション
↓ポチッ
◯ボードゲーム
・オセロ
・チェス
・将棋
・カード
・その他
「それは違うよ!」
ヒサが簡単そうなボードゲーム類に逃げの一手を伸ばした時、ヒロシは声を上げて、その手を静止した。
「な、何…」
「苦手だからこそッそれを克服して、これからはどんなゲームも楽しめるって、気持ちを作ってこそなんだ!
だから、ヒサの一番苦手なバトルアクション物にしよう。」
「えーーー」
大口開けて駄々をこねるヒサに向かって、再度説明をする。
「動いてみてわかったでしょ、この世界では現実、もしくはそれ以上に動かせる体だし、あとはゲームでこの体を動かすだけだよ。
思ってたよりは、簡単なんじゃ無い?。」
「ほんとー?……そんなこと言ってキャラクター作る時も、ボタン操作はあったよ。」
「ごめん、それは俺も知らなかったんだって、…ヒサやっぱ困ってたか。」
試しに、一番人気の異世界物を選んで押してみると、
簡単な説明が出て
認証マークと年間ランキング一位の金エンブレムも付いている。
「このゲームは天才プログラマーが一人で作り上げていったって噂もあって、作者の素性が何もわかんないんだって、
あ、もちろん安全は確認されてるし、
一人で作ったとは思えないほどの、作り込みと戦闘のリアル感から世界中でも評価も高いんだ、どう?試してみない。」
「…うん行ってみる。」
手を重ねて、光の画面に深く手を入れた瞬間。
全身が光に包まれて、何も見えない空間の、どこからか風切り音のようなものが聞こえた。
シュンッ
_____
「この世界には、多種多様なモンスターが存在する、剣と盾がメインのリアル異世界バトルものだ。
魔法とかスキルとかは無いぞ。
でもな、レベルも無いのに、難易度管理が完璧でな、今からすぐにラスボスと戦うこともできる。
まあ…勝てるかは別の話だがな。
でもやっぱり最初は、スライムたっぷりの、スライム平原がおすすめだぜ。…聞きたい事はこんなもんか?」
中世の街並みに、溶け込むような地味な服装で、世界特有の装備を腰につけて、案内人の話を聞いていた。
「ありがとうな、おっさん。」
「オウ、頑張んなよ!」
言われた通りの道を歩いて、お礼を言うと、案内人のおっさんは、景気のいい顔で手を振ってくれた。
少し離れた位置で、終始無言だったヒサが背中を突いてくる。
「ねぇねぇ、あの人もプレイヤーなの?
あんな小さい箱に閉じ込められて、本当に楽しんでるのかな、…少し可哀想だなって、なんで笑ってんの!」
ヒサの勘違いも納得の、小さい小屋だ。
布団一つ敷ける大きさも無いし、扉もついてないような、小屋にあんな大男が入ってるんだ。
人間が何か大きな圧力で、囚われてると考えても不思議はないでも、が腹を抱えて爆笑するのを抑えられなかった。
「いやそういう目線もあるよなって思ってさアハハハ……あの人は、NPCだよ。」
「NPC、ノンプレイヤーキャラクターってやつ?」
「うん、急に話しかけられたのに、何の反応も無かった、それに俺らのちょうど中間を見てるようで、目線も少し可笑しかったでしょ。」
言われれば確かにと、おじさんと目が一度も合わなかったのを思い出す。
そしてヒサは感心する。
「へーヒロシ、そんなとこまで見てるんだ。」
「そりゃあな、色々と知識として知ってたって、初めてやるゲームだぞ。」
「そんなもん、なのかな?」
「そうだそうだ、興奮しないほうがおかしいよ。」
そんなこんな、ヒロシ自身のゲームの美学を語ったところで、語った相手は街並みの方に夢中だった。
それでも二人の阿吽の呼吸で完璧なタイミングで、話に相槌を打つ。
中世の町を越えて、街の大きな門をくぐればすぐに目的の場所が見えた。
『スライム平原』
視界の端にログが出る。
スライム狩り 難易度G
制限時間五分の間に、
五体以上倒せばクリア。
「ヨシ!じゃあやるか!」
ヒロシは突然のクエストに、HPが表示されているモンスターを目の前にして、我慢できないようで飛び出した。
腰につけていた剣を抜き、
スライムをずっと全力の鋭い目で見つめると、
スライムもコチラを、睨んできたように感じた。
プルンとした半透明の青いスライム、
目はない顔もない、でもモンスターの威厳はある気がした、
風が強く吹いて草木が待って落ちる。
その刹那
スライムと同時に動き出し、切り掛かる。
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