電脳世界で虚乳な彼女

(アックマ)

第1話 何を求めるか


 ソーシャルVRMMO

 その名を冠するモノの多くは、大規模 大人数、協力型の要素を一周したゲームだ。


 今の時代、そんなゲームが無数にある中を、導き手となる一つのゲームが、そうだけで一つのコンテンツになろうとしていた。


 『新しい自分になれる』をメインテーマに掲げ、世界各国の大企業、天才プログラマーたちが数々と名乗りをあげて、作り上げていった革命的なゲーム。


 過去、未来に限らず、世界にある、すべてのゲームが体験できると言われ、世界最大級規模のプラネットフォーム上で行われている。

通称。


 第二の世界   電脳世界リバーススカイ


俺は今日、彼女をこのゲームに誘う。ホームページに書かれている、説明書を読んだだけで、こんなに面白そうなんだ。

どんな人だってやりたくなるはず!


 そんな主人公、海輪ヒロシの確証のない自信は、彼女の一言目で打ち砕かれた。


「むり……。」


「そこをどうにか、お願いします!」


「なんでよ、私がゲームとか電子機器、苦手なの知ってるでしょ。」


「知ってます、でもコレだけは違うんです、操作の仕方も、ほぼ身体を動かす感覚って書いてたし。

それに飛沙ヒサゲームは下手でも、体動かすのは得意でしょ?高校までは県大会、主将で行って、確か……400キロメートルとかだっけ。」


「今から誘う人にゲームは下手とか、ひと言余計です。

あと400メートルね、そんなに走ったら人は死ぬから。」


 ヒロトは否定的な言葉に、無いも同然のプライドを殴り捨てて、床に伏せ足元をゴロゴロしながら、再度お願いする。


ガッ

 足元をちょろちょろとするのが、かなり鬱陶しかったのか、雑に踏んづけられて止められる。



海輪カイワヒロシの彼女

荘加ソウカヒサは、幼少期から、長距離を走り続けていた。さらに高校の運動部時代は、大会に備えて走ることに、より本腰を入れていた。

 その賜物か、全身も同じ、薄い小麦肌の細い足にしなやかな筋肉がほっそりと包んでいる。


 その所為か、彼女はかなり慎ましい身体をしている。足元からなのに、天井が見えた。


一時的にその場を堪能して、ヒロシはまた地面の方を向く。


「お願いします!」


「ウゥ………どうやんの、」

かなりの葛藤があったのだろう、彼女の声は苦しそうに聞こえた。


「えっと、操作感は旧型のVRとヘッドセットを着けるところは同じ、でも寝た状態から、電脳世界に入るから、旧型の何かにぶつかるとか色々な、危険がないんだって。

俺もやったことはないから知らないけど、絶対楽しめると思うんです。」




「うーん………まあ絶対…下手とか、笑ったりしないなら良いよ。」


「良いのやったぁ!じゃあ最新機種ポチッ」

ポキーン、

ヒロシのいつのまにか取り出したスマホから、何かを買った音が鳴る。


「は?何してんの?…何円」


「今セールで、安くなっててかなりお買い得 ……ですよ。」


「何円!?」

胸ぐら掴まれて、近づいてきた顔の迫力に負けて、ヒロシは白状する。


「16万です。自分の懐から全部出します。」


自分の口から素直に吐いたが、やっぱり説教が始まってしまう。


2時間後

かなり萎んだヒロシは、まだまだ説教を受けていた。


「そういう今までのなかったじゃん。

私の物まで勝手に決めるとか。」


「はいごめんなさい。全くその党利オウです。」


「そうじゃなくても私たち一緒に暮らしてるんだよ。16万は大金だし、ちょっと相談ぐらいは、してほしかったな。」


「ハイ……最愛の彼女と一緒にゲームができると思ったら、指が勝手に動いて……自分で買いました。」

自分の心の底から、言える本心を伝える。


「……ムウゥ、その言い方はずるい……でもダメ!ヒロ今度からは一緒に考えるんだからね。」

俺の愛称はヒロ、あった当初にヒロシと名前を言ったのに、何故かヒロと言われた。

それが大学に入って、今の関係まで続いて、何となくヒロと呼ばれている。


顔を少しだけ赤面させて、指を刺されてしまう。その仕草はやっぱり俺の心に刺さる。

 たまにわざと、その仕草を見たくて、意地悪してしまう事もある。

 が今回は本心から、反省をしていた。



 家にヘッドセットが届くまでの数日間、

映像を見せたりして、教え続けたら、

彼女も、段々とイヤイヤでは無くなって行った。


ピーンポーン「特急便トッキュウビンです。」

((遂に届いたか。))

 気持ちは正反対に違っていても、心の中でつぶやいた言葉だけは完全に一致した。



 ヒサはハルトから、ゲームを長時間やる事も考えて、事前に多少の事は済ませてきた方がいいことを知らされて、準備をしていた。


小さく作ったおにぎりを、頬張りながら、

小さい野菜ジュースを飲んでいた。

何となく運動部時代を思い出す、軽食。


あらかたの家事も一緒に済ませると、

待ちきれない様子のヒロが、顔を覗かせて声をかけてきた。


「じゃあ、あっちの広場で待っててな、

でそっから一緒に始めようぜ。」



「はーい。」


部屋に戻ろうと、廊下を歩いていると、少しだけ考えてしまう。


(本当に大丈夫かな、……昔…高校時代好きなアニメのキャラクターがいて、それが出るって言うゲームを買ったら、アクションゲーム……だったんだよね。……チュートリアルの敵にも負け続けて。


ビスケット缶に封印したのが、クローゼットにまだ、あるのに。

まあ今でも、体は結構動く自信あるし、大丈夫だと良いな…。)


カチャ


二人とも同時にベットに寝て、

灰色とオレンジ、

二人とも違う色の同じヘッドセットを被る。



ヘッドセットをつけると画面が全部黒に変わって、ロゴとタイトルが出て来る。

突然ロゴが大きくなって、画面全体が白くなっていく。



『周囲の音を消しますか?』


初めて方は、ヘッドセットの設定があるとヒロも言っていた。


「ウン消して、そのために色々済ませてきたんだから。」


『了解しました。』


「結構眩しいかな?設定が…アレ…何で?

服も薄着だし、ココってもうゲームの中なんだ、すごい。」


気がついたら、ドーム型の白い部屋に立たされてた。

そして私の目前には、小さく自分が写ったパネルが浮いている。


 トップスとパンツだけの薄着になっていて、ちょっと恥ずかしい感じの格好だった。


「…なになに」

モジモジしながら、パネルに近づいていって、見てみたら。


*警告

『キャラクター設定で作ったキャラクター・アバターは、相手に見えるだけであって、

体に定着し操作感には影響はしません。


出来るだけ自分の体に似せたキャラクター・アバターを作ってください。

これは他の方が見て不快感を得るような、異形型のキャラクター・アバターを生み出させないための警告です。

(髪色など…最低限の変化なら警告は表示されません。)』


「ウン分かった。」

パネルの下の方にある、緑字の許可を押すと

ステータスと、それに対応したボタンが横に表示される。


 ヘッド

 フェイス


 チェスト

 バック


 レッグ



「なるほどね、ちょっと難しいけど…頑張るか。」


慣れないボタン操作に手間取って、でも作っていくと、

そういえばヒロシが、「細かい設定は画面に映る自分に触れば操作できる」と言っていた事を、思い出す。



「ヨシッ、なんとなくできたかな。」

自分の写しにしか見えない、それは実際と同じように足を見れば、くるぶしまで正確に見える。


おもむろにトップスの上から、自分の胸を触る。

「このゲームの標準よりも小さかったから、下げたけど、」


小さいって


なんとなく、目が惹かれるチェストの文字。


一度だけならと、そんなことを思いながら、

不慣れで手が滑ったのを装って、チェストの数値を最大まで上げる。


ボンッ


「わあすごい!、ついに私にも成長期が来たのね。…………ってそんなわけないよね。

やっぱり戻しておくか。」


キュ


元の胸に戻ったのに、

無情な喪失感が残った。


また……言われちゃうかな…?



場面が移って、

噴水の縁に座る平凡で普通な男ヒロシ、

「やっぱ長いな彼女はどの世界に行っても、

着替えは長いものなんだな。

彼女の前では絶対言えないけどな、あっこれ鉄則。」


俺の体 標準の体とほぼ変わらなかった。

パネルに表示された体から少しだけ顔と、

身長をいじったけど、


唯一標準値と差があったのはのは少しだけ伸びた髪だけ、それも数週間後には切るってのに、

俺はやっぱり普通か。


「待ったーーー!」


そんな事を思っていると。背後から聞き覚えのある声が、聞こえてきた。


(この声はっ、やっぱりゲームの世界でも最愛の人と、一緒にいられるなんて、最高だな

 最高だな……)


彼女(おっぱい)

彼(おっぱい)

(おっぱい)


彼女がすべて、おっぱいに沈んだ。


「最高かよ!」


「え?ああこれのこと、ちょっとだけ盛っちゃった。」

「今、ちょっとと言ったか」

「ちょっとよ。」

「これがちょっとか、」


「元々こんな物でしょ、初めての設定だったし、慣れてなくて、アッ…電脳成長とか。」


「そんなモノはねぇ、アッて言って思いつくな、バレバレ過ぎるわ。

でもそうだなぁ、いやいやそうだったのに、かなり乗り気だな。」


そう言ったヒロは、いやらしい顔で私のお腹の辺りをみていた。

私はもっと見る場所があるでしょと思ったけど、わざわざ言うのも癪だったから言わなかった。


場面は少しだけ戻る。


パネルに表示される警告文


『現実の体とかけ離れています。

本当によろしいのですか?』


[戻る]  [このまま決定]



「別に不快感は覚えないでしょ!

みんなおっきい方がいいって言うはずよ、

大丈夫ッ! 決定!!」


パネルを突き破りそうな勢いで強く強く、

赤文字の決定を押す。


『了解しました。』


 その瞬間、今まで見ないようにしていた不安がヒサを襲った。


なぜなら。

 このゲームのメインテーマの設定を守るためか、この電脳世界では初めて作ったキャラクターしか使えない事を、事前に教えられていたからだった。


途中変更は不可能。

リセットも不可能。


第二の世界。


不安もこの世界の景色には勝てなかった。


「えっ、すごい綺麗ーーー!」


初めて降り立った部屋は、白くて丸形しかない近未来的な部屋だったけど


その場に似合わない、両開きでダークオークの大きな扉があった。


少しの力で扉を開けば、別世界だった。



雲によって群青色の空に深みが増す、陰影が無数にあって、角度を変えれば影が顕になる。


運動部時代を思い出す、眩く輝く、

大きな白色のたいよう。


山森よく見れば、村にも、現実世界では見れないような、ピンクや紅葉、蒼い若葉たちがカラフルに混ざり合っている。


神殿に使われていた柱みたいな物が道を挟むようにして、2列並んでいる。


その間には、緩やかな傾斜に沿って、小さい階段が、何段かわからないけど数えられないほど、いっぱいある。


道の先にあるのは


ハート型や星型に空中で曲がる、ゲームだからこそ出来る、神秘的な噴水だった。


噴水の周りには、ベンチや低木が囲い、

広間ができていた。


そして、その全ての場所、視界を向ければ、人のいない場所なんてなくて、ワイワイ楽しげに賑わっている。


突然爆発的な音がして、空を見上げた。

そこには太陽と同じ大きさに見える、その巨体を、自身の翼だけで空を駆けるドラゴン。


タイトルとロゴにも描かれていた、

リバーススカイドラゴンだ。


そしてそのドラゴンより気になる、

噴水の縁に座った最愛の人。


体の一部が重くなった気がするのに、

体は反比例してとんでもなく颯爽と走れた


彼氏に向かって。


「待ったーーーー!」


「最高かよ!」

「盛って無い?」

「盛って無い!」

「盛ってるよね?」

「盛って無い!…元々!」


ヒサとヒロシは互いに

満点の笑顔を相手に向けた。



ここから彼女の虚乳と気分が弾む

電脳世界の物語が始まった。

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