電脳セカイで虚乳な彼女

(アックマ)

一章 花弁の開花

第1話 何を求めるか


  VRMMO その名を冠するモノの多くは、大規模 大人数、協力型の要素を一周したゲームだ。


 今の時代、そんなゲームが無数にある中、鬱蒼とした悪雲立ち込める業界に、

その他全ての導き手となる一つのゲームが、それだけで一つのコンテンツになろうとしていた。


  [S]VRMMO

    ocial


 『新しい自分になれる』をメインテーマに掲げ、 世界中の人が自由に関わり合う為に、世界各国の大企業、天才プログラマーたちが次々と名乗りをあげて、作り上げていった革命的なゲーム。


過去、未来に限らず、世界にあるすべてのゲームが体験できると言われ、世界最大級規模のプラネットフォーム上で行われている。


まさに社会を創り出すゲーム。


通称。



第二の世界

   『電脳世界リバーススカイ。』


俺は今日、彼女をこのゲームに誘う。

ホームページにひっそり書かれている、

簡単な説明文を読んだだけで、こんなに面白そうなんだ。

どんな人だってやりたくなるはず!


 そんな主人公、海輪かいわヒロシの確証のない自信は、彼女の一言目で打ち砕かれた。


「むり……。」

ガーン!、そんな古典的な効果音が頭の中で響いた。


「そこをどうにか、お願いします!」


「なんでよ、私がゲームとか機械、全般苦手なの知ってるでしょ。」

眉を顰めた彼女は、ゲームが何かでは無く、操作に自信がないようで弱い口調で断っていた。


「知ってます、でもコレだけは違うんです。操作の仕方も、ほぼ身体を動かす感覚って書いてたし。…それに飛沙ヒサゲームは下手でも、体動かすのは得意でしょ?高校までは県大会、主将で行って、確か……400キロメートルとかだっけ。」


「今から誘う人にゲームは下手とか、ひと言余計ですッ!、あと400メートルね、そんなに走ったら人は死ぬから。」


 ヒロシは否定的な言葉に、無いも同然のプライドを殴り捨てて、床に伏せ足元をゴロゴロしながら、再度渾身のお願いする。

「やってやってやってやってやってよー!」


ガッ、足元をちょろちょろとするのが、かなり鬱陶しかったのか、雑に頭を足裏で踏んづけられて止められる。



海輪カイワヒロシの彼女

荘加ソウカヒサは幼少期から、長距離や陸上部でとにかくきつい種目を走り続けていた。

さらに高校の運動部時代は、大会に備えて走ることに、より本腰を入れていた。

その賜物か、ヒサの薄い小麦肌で細い足には、しなやかな筋肉がほっそりと包んでいる。


だが同じ理由で、彼女の胴体は、かなり慎ましい身体をしている。踏みつけられたヒロシは足元から上を見上げたのに、真っ先に見えたのは天井だった。


一時的にその場を堪能して、ヒロシはまた地面の方を向く。


「お願いします!」

土下座、両手を地面に突き頭を地面にピッタリとつける。


「ウゥ……やめてよ…どうやんの、」

頭を下げ続けている時間、かなりの葛藤があったのだろう、彼女の声は苦しそうに聞こえた。


「えっと、操作感は旧型のVRとヘッドセットを着けるところは同じ、でも寝た状態から、電脳世界に入るから、旧型の何かにぶつかるとか色々な、危険がないんだって。

俺もやったことはないから知らないけど、絶対楽しめると思うんです。」


よくわからない説明をしている自覚はあるが、それが意図だ、ゲーム類や機械類についてそこまで知らないヒサには、分からない内に畳み掛けるべきだと。

「うーん………まあ絶対…下手とか、笑ったりしないなら、、」


「良いのやったぁ!じゃあ最新機種ポチッ」

ポキーン。ヒロシのいつのまにか取り出したスマホから、何かを買った音が鳴る。


「は?何してんの?…何円」


「今セールで、安くなっててかなりお買い得 ……ですよ。」


「何円!?」

胸ぐら掴まれて、近づいてきた顔の迫力に負けて、ヒロシは白状する。


「16万です。自分の懐から全部出します。」


大学生の二人にとっては、かなりの大金。

自分の口から素直に吐いたが、やっぱり説教が始まってしまう。


2時間後、正座をしてかなり萎んだヒロシは、まだまだ説教を受けていた。


「そういう今までのなかったじゃん。

私の物まで勝手に決めるとか。」


「はいごめんなさい。全くその通りです。」


「そうじゃなくても私たち一緒に暮らしてるんだよ。16万は大金だし、ちょっと相談ぐらいは、してほしかったな。」


「ハイ……最愛の彼女と一緒にゲームができると思ったら、指が勝手に動いて……自分で買いました。」

自分の心の底から、言える本心を伝える。


「……ムウゥ、その言い方はずるい……でもダメ!ヒロ今度からは一緒に考えるんだからね。」


俺の愛称はヒロらしい…出会った当初にヒロシと名前を説明したのに、その時から何故かヒロと言われた。

それが大学に入って、今の関係まで続いて、何となくヒロと呼ばれ続けている。


顔を少しだけ赤面させながら、釘を刺すように指を指されてしまう。その仕草はやっぱり俺の心に刺さる。

 たまにわざと、その仕草を見たくて、意地悪してしまう事もあるが、今回は本心から反省をしている。



 家にヘッドセットが届くまでの数日間、

PV映像を見せたりして、電脳世界の事を教え続けたら、彼女も段々と暗い表情がなくなってきた。


もしかしたら、彼女もやりたくなってきているんじゃ無いか?と思っていたその時に、

それは来た。


ピーンポーン

特急便トッキュウビンです。」


「「遂に届いたか。」」


ヒロシの待ちに待った歓喜の気持ちに比べ、ヒサの気持ちは正反対に違っていても、心の中でつぶやいた言葉だけは完全に一致した。


ヒサはヒロシから、ゲームを長時間やる事も考えて、事前に多少の事は済ませてきた方がいいことを知らされて、準備をしていた。


小さく作ったおにぎりを頬張りながら、

小さいパックに入った野菜ジュースを飲んでいた。

何となく昔の運動部時代を思い出す、軽食。


あらかたの家事も一緒に済ませると、

待ちきれない様子のヒロが、顔を覗かせて声をかけてきた。


「じゃあ、あっちの広場で待っててな、

でそっから一緒に始めようぜ。」



「はーい。」


部屋に戻ろうと、廊下を歩いていると、

一人になったヒサは少しだけ考えてしまう。


本当に大丈夫かな、

……私、昔好きなアニメのキャラクターがいて、それが出るって言うゲームを買ったんだよね。


でもそのゲームがよりによってアクションゲーム…だったんだよね。

…小学生の私はチュートリアルの敵にも負け続けて。


結局、ビスケット缶に封印したのが、クローゼットにまだあるのに。

まあ今でも、体は結構動く自信あるしコレは大丈夫だと良いな…。


カチャ


二人とも同時にベットに寝て、

灰色とオレンジ、二人とも違う色の同じ機種のヘッドセットを被る。


ヘッドセットをつけると画面が全部黒に変わって、ロゴとタイトルが出て来る。突然ロゴが大きくなって、画面全体が白く染まった。



『周囲の音を消しますか?』


初めて方は、ヘッドセットの設定があるとヒロも言っていた。


「ウン消して、そのために色々済ませてきたんだから。」


『了解しました。』


「結構眩しいかな?設定が…アレ…何で?

服も薄着だし、ココってもうゲームの中なんだ、すごい。」


気がついたら、ドーム型の白い部屋に立たされてた。

そして私の目前には、小さく自分が写ったパネルが浮いている。


 トップスとパンツだけの薄着になっていて、ちょっと、恥ずかしい感じの格好だった。


「…なになに」

モジモジしながら、パネルに近づいていって、見てみたら。


*警告

『キャラクター設定で、作ったキャラクター・アバターは、相手に見えるだけであって、体に定着し操作感には影響はしません。


出来るだけ自分の体に似せたキャラクター・アバターを作ってください。

(これは他の方が見て不快感を得るような、異形型のキャラクター・アバターを生み出させないための警告です。)

髪色など…最低限の変化なら警告は表示されません。』


「ウン分かった。」

パネルの下の方にある、緑字の許可を押すと

ステータスと、それに対応したボタンが横に表示される。


 ヘッド   ーー◯ーーーーー

 フェイス  ーーー◯ーーーー


 チェスト  ◯ーーーーーーー

 バック   ーー◯ーーーーー


 レッグ   ーーーーー◯ーー

 筋肉量   ーーーー◯ーーー


「なるほどね、ココをこうして、」

慣れないバー操作で、自分の勘に頼ってヘッドのバーの右端を指で押すと。


急に頭が大きくなって、一瞬にして視点も高くなった。

その衝撃でまるで頭が重くなったように感じて、足がふらついたが、頭の重さはただの錯覚だった。


頭がちっちゃくなっていく。

「……頑張ろう。」


慣れない操作に手間取って、自分の体を作っていくと、そういえばヒロシが、「細かい設定は画面に映る自分に触れば操作できる」と言っていた事を、思い出す。


その後。

「ヨシッ、なんとなくできたかな。」


自分の写しにしか見えない、それは実際と同じように下を見れば、くるぶしまで正確に見える、自分が出来た。


おもむろにトップスの上から、自分の胸を触る。

「このゲームの初期設定よりも小さかったから、下げたけど、また言われちゃうかな…」


…小さいって


なんとなく、目が惹かれるチェストの文字。

そして+のボタン。

一度だけならと、そんな悪いことをしている人みたいな事を思いながら、

不慣れで手が滑ったのを装って、チェストの数値を最大まで上げる。


ボンッ!!


「わあすごい!、ついに私にも成長期が来たのね。…………ってそんなわけないよね。

やっぱり戻しておくか。」


キュ!!


元の胸に戻ったのに、

無情な喪失感が残った。


また……言われちゃうかな…?



場面が移る。

噴水の縁に座る平凡で普通な男ヒロシ。

「やっぱ長いな彼女はどの世界に行っても、

着替えは長いものなんだな。

彼女の前では絶対言えないけど、あっこれ鉄則。」


俺の体、標準の体型とほぼ変わらなかった。


リバスカは、ヘッドセットをつけた人の身長や頭囲の大きさで、大体の体の設定をしてくれるはずだが、

俺はパネルに表示された体から少しだけ顔と、身長をいじっただけで、


唯一標準値と差があったのはのは少しだけ伸びた髪だけ、それも数週間後には切るってのに、俺はやっぱり普通か。

そんなため息を吐いていた時に、背後からよく聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「待ったーーー!」


この声はっ、やっぱりゲームの世界でも最愛の彼女と一緒にいられるなんて、最高だな

最高だな……


彼女 (おっぱい)

彼女(おっぱい) <ムギュ

彼(おっぱい)<ムギュ

(おっぱい) <ポンッ


彼女がすべて、おっぱいに沈んだ。


「最高かよ!」


もう勝手に出てしまった一言、

それに反応したヒサも、どこに言われているのか気づいて、胸を寄せる。


「え?ああこれのこと、ちょっとだけ盛っちゃった。」

「ん?…今、ちょっとと言ったか」


「そ、そうよちょっとよ。」

「これがお前の世界で言うちょっとか、」


「元々こんな物でしょ、初めての設定だったし、慣れてなくて、アッ…電脳化して成長とか。」


「そんなモノはねぇ、アッて言って思いついてるのバレバレ過ぎるわ。

でもそうだなぁ、前はいやいやそうだったのに、今はかなり乗り気だな。」


そう言ったヒロは、いやらしい顔で私のお腹の辺りをみていた。

私はもっと見る場所があるでしょと思ったけど、わざわざ言うのも癪だったから言わなかった。


そして場面は少しだけ遡る。


パネルに表示される警告文

『現実の体とかけ離れています。

本当によろしいのですか?』


[戻る]  [このまま決定]



「別に不快感は覚えないでしょ!みんなおっきい方がいいって言うはずよ、大丈夫ッ! 決定!!」


パネルを突き破りそうな勢いで強く強く、

赤文字の決定を押す。


『了解しました。』


 その瞬間、今まで見ないようにしていた不安がヒサを襲った。


なぜなら。

 このゲームのメインテーマの設定を守るためか、この電脳世界では初めて作ったキャラクターしか使えない事を、事前に教えられていたからだった。


途中変更は不可能。

リセットも不可能。


第二の世界。


だが不安も、この世界の景色には勝てなかった。


「えっ、すごい綺麗ーーー!」


初めて降り立った部屋は、白くて丸形しかない近未来的な部屋だったけど


その場に似合わない、両開きでダークオークの大きな扉があった。

少しの力で扉を開けば、そこは別世界だった。



雲によって群青色の空に深みが増す、陰影が無数にあって、角度を変えれば影が顕になる。


運動部時代を思い出す、眩く輝く、

大きな白色のたいよう。


山森よく見れば、村にも、現実世界では見れないような、ピンクや紅葉、蒼い若葉たちがカラフルに混ざり合っている。


神殿に使われていた柱みたいな物が道を挟むようにして、2列並んでいる。


その間には、緩やかな傾斜に沿って、小さい階段が、何段かわからないけど数えられないほど、いっぱいある。


道の先にあるのは


ハート型や星型に空中で曲がる、ゲームだからこそ出来る、神秘的な噴水だった。


噴水の周りには、ベンチや低木が囲い、

広間ができていた。


そして、その全ての場所、視界を向ければ、人のいない場所なんてなくて、ワイワイ楽しげに賑わっている。


突然爆発的な音がして、空を見上げた。

そこには太陽と同じ大きさに見える、その巨体を、自身の翼だけで空を駆けるドラゴン。


タイトルとロゴにも描かれていた、

リバーススカイドラゴンだ。


そしてそのドラゴンより気になる、

噴水の縁に座った、最も信頼している人。


体の一部が重くなった気がするのに、

体は反比例してとんでもなく颯爽と走れた。

彼氏に向かって。


「待ったーーーー!」


「ッ最高かよ!」


「盛って無い?」

「盛って無い!」

「盛ってるよね?」

「盛って無い!…元々!」


歩き出したヒサとヒロシは互いに、

満点の笑顔を向けた。


ゲーム好きの彼氏と、彼女の虚乳と気分が弾む、電脳世界の物語が始まった。

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