第3話 小鳥先輩、ショッピングデートの誘惑に堕ちる
「はぁ……はぁ……そ、その……アオカゼくんは、ずいぶんと大胆なファッションをしているけど……こういう、なんというか、ライトノベルの美少年みたいな服が好きなんですか?」
ソファーでエロいファッションの美少年と腕や太ももが密着した体勢で話をしているのもあってか、小鳥先輩の息は極めて荒く、強く興奮している様子が伝わってくる。
それでも、なんとかサークルの先輩としての威厳を発揮しなければと思っているのか、小鳥先輩はあたかも自分が平常心であるかのように装って、日常会話を仕掛けてくる。
「はい。こういう服、格好よくないですか? 小鳥先輩は、こういうファッション、お嫌いですか?」
小鳥先輩の左手を取って俺の太ももの上でぎゅっと握りながらの問いかけに、小鳥先輩はまたしても顔を赤くしながら、
「い、いえ……ま、まあそこそこ好きですかね……そこそこは……」
と照れすぎて素直になれない前世の童貞男子のようなムーブをしている。
「そうですか、気に入っていただけてるんでしたら、良かったです! 実は俺、もっとこういう格好いい服を買いたいなって思ってて、今度ショッピングに行こうかなって思ってるんですけど……小鳥先輩、良かったら一緒に行きませんか?」
前世だったら美少女にしか許されない無理やりなデートの誘い方だが、残念ながらこの世界の弱者女性が美少年にこのような誘い方をされてしまったら、もうイエスという以外の選択肢は残っていない。
「え、え、え! 2人でショッピング!? そ、そ、それって、で、で、デート……ぜ、ぜひ! ぜひ行かせてください!」
服装こそオタクファッションとはいえ、黒髪ロングの整った顔の美少女が俺とのデートに顔を赤らめて喜ぶ姿は、前世であれば強く喜びと幸福感を感じさせる物だっただろう。
だが、既にこの世界の女性というものがいかに性欲にまみれた愚かな存在なのかを、道端や大学構内ですれちがう女たちからひしひしと感じていた俺は、そうした女の一人であるこの少女が思い通りに性欲と恋心に操られている事を、ただ暗い喜びとともに見つめているだけだった。
「うわぁ、うわぁ、どうしよう……デートなんてしたことないのに……」
動揺して考えが口から漏れている先輩に苦笑しながらも、俺は先輩をさらに都合よく操るための、こんな言葉を刻み込む。
「その、小鳥先輩とデートするのは初めてですし……せっかくなら記念にプレゼントとかしてもらえたら嬉しいなって……ダメですか、先輩?」
美少年ファッションの衣服は、前世でいえばブランドものの服なので、学生にはかなり高級品である。
「ぷ、プレゼント……? そ、その、してあげたいけど、そういう服って高いんじゃ……」
流石にそこまでいくと渋りだす小鳥先輩だったが、俺は前世で、そんな人間を一撃で魅了し華麗に貢がせる邪悪な手口を、既に身を持って体感していた。
「考えてみてください先輩。俺は、先輩が一番好きな、先輩が一番エロ恰好いいと思う服を、先輩のために着てあげるんですよ? もしこの先、先輩とまたデートする事があったら、俺は先輩のプレゼントしてくれたエローい服を着ていくので、先輩はそんな男の子と腕を組んで歩けるんです。その末に、二人で個室なんかで休憩する事があったら、そんな恰好の俺と、二人っきりで、先輩はなんでも好きな事を――」
その男の俺からすればやや陳腐な誘惑は、脳みそが性欲と恋心でいっぱいになっている小鳥先輩にとっては破壊的な効力を持って、そのまま小鳥先輩の思考回路を乗っ取ってしまう。
「はぁ……はぁ……アオカゼくんがわたしの選んだ服でデートしてくれる……エロい服で一緒に休憩……なんでも好きな事を……そんなの……そんなのエロすぎて……はぁ、はぁ、我慢できな……」
ちょっと誘惑が効きすぎてしまったのか、先輩はいよいよ理性を失って俺を襲ってしまいそうな雰囲気を漂わせていたので、そこで俺はぴょん、とソファーから立ち上がって、距離を離して先輩に向かってウインクした。
「連絡先、交換しておきましょうか? デート、楽しみですね、先輩? 俺も先輩がどんな服をプレゼントしてくれるのか、楽しみにしてます」
満たされないままの強力な性欲を抱えたまま、ぽつんと座る事になってしまった先輩は、俺の提案を断る事もできず、きっとデートの時には大金を持ってきてくれることだろうと期待できた。
ま、サークルクラッシャーとしての初手としては、上々の成果かな。
前世、どう頑張っても手の届かなかったような美少女を思い通りに操るのは最高に楽しく、心の中のダークな渇望が満たされるのを強く感じる。
この調子で、どんどん美少女たちを俺に夢中にさせて、俺の中にある暗い欲望を満たしていこうと、俺は心の中でほくそ笑むのだった。
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