夜、部屋で

「ねえ、はなっち~」

「なに、あやなっち~」


「うちね~、ちっちゃい頃から、女の子になりたかったんだ~」

「え?やっぱり、そうなんだ~」


「幼稚園の時も、小学生の時も、中1の時も、ずーっと、女の子になりたかったんだ~」

「うんうん...」


「今もだよ~」

「そっか~」


「だからね~、あの魔法のお菓子を食べて、女の子になるように魔法をかけてもいいかな~?」

「えー?それは、どうかな~?」


「どういうこと~?」

「魔法かけなくてもいいんじゃないかな~って思って...」


「え?なんで?」

「う~ん、よくわかんないけど、魔法をかけなくても、今のままでいいと思うんだよね~」


「そっかな~?」

「そうだよ~、それにねっ、もしも魔法をかけて~、あやなっち、女の子になっちゃったとしたら~」


「うんっ、女の子になったら~?」

「えっとね~...う~ん、なんだか、うまく言えないんだけど~」


「うち、魔法で女の子になっちゃったら、だめなの~?」

「う~ん...うち思うんだけど~」


「なにを?」

「うちら、もしかしたら、同じ高校に行ってると思う?」


「うんっ、きっと同じ高校に行ってると思うよ~」

「でしょ~、うちもそう思うんだ~。でね、同じ高校に行って、ずっと仲良しで~、その何年後かには~...」


「え?何年後かには?」

「えっとね...うちの思うのは~、何年後かには~、あやなっちとうちとは~...」


「ん?うちとはなっちは?」

「なんか~...もしかすると~...あ、いや、ちがう...もしかするとじゃなくて~...きっと~...」


「え?...きっと?」

「うちら結婚してる気するーっ...きゃあ、言っちゃったー」


「え?うちら結婚?」

「あやなっちは、そう思わないの?」


「あ...うちも、そんな気もするかもー」

「え?なんて?...そんな気もするかも?」


「うんっ、うちら似てるから、何年後かには、結婚してるかも...」

「してるかも?」


「うんっ...」

「うちなんかねー!結婚する気しかしないんだからねーっ!気も...とか、かも...とかじゃないのよーっ!わかるー?」


「あ、はい...」

「ほんとにー?ほんとにわかってんのー?」


「わかります...」

「だからねっ...魔法のお菓子、さっき見たら、あと2つしかないの...」


「えー?あと2つ?」

「そうよー!だから、ふたりで食べて...結婚の魔法をかけるのよっ! !」


「えー?」

「えー?じゃないわよーっ」


「じゃあ食べますか?」

「待って...興奮しちゃって、ごめんねー。今日はもう寝るねっ」


「うんっ、わかった」

「うちの寝てるあいだに、魔法のお菓子食べちゃだめよっ」


「うんっ、うちも寝るー」

「じゃあ、おやすみ~、あやなっち!」


「おやすみ~、はなっち!」

「ごめんねー。またあした~...」

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