2話:面接(本番)とコミュ障
ピピピピピピッ
無機質な音が部屋に響き渡る。
現時刻は08:34である。
面接の時間は12:30から。
彼の家から会場までは電車の乗り継ぎで2時間半ほど。
まだまだ余裕のある時間に拓矢は起きた。
「ふあぁぁぁぁ」
ねみぃと目をこすりながら洗面所に行き顔を洗う。
冷たい水で顔を洗うと本当にシャキッとする。
その快感が今日も拓矢に訪れた。
「あぁ…最高だわ。」
さて今日は何を食べようか。そう思い冷蔵庫を開けた。
だが忘れてはならない、彼は引きこもりで滅多に外出しない。つまりは…
「・・・何もねぇ」
「コンビニでいっか」
面倒くさがった俺はジャージから黒いTシャツとデニムのズボンと言うありきたりな格好をしてコンビニん朝飯を買いに出発した。
十数分後、拓矢は顔面蒼白で帰ってきた。
原因はコンビニでの出来事にあった。
拓矢がコンビニに入店すると
「いらっしゃいませ!!」
とハキハキとした声で店員が迎えてくれた。
そのことに気分を良くし、ウキウキな気分で俺はおにぎり2つと適当な惣菜をかごに放り込む。
こんなもんかというぐらいに自分が食べたいものを放り込みレジの列に並ぶ。
まだ進まねぇのかなと待っていると俺の前に急にじじいが横入りしてきた。
「は?」
そう声をこぼした。
当たり前であろう。本来自分がそこにいたであろう場所に勝手に横入りされたのだから怒るには至極真っ当な理由だった。
「おい、おっさん!」
そう俺はそのじじいに声をかけた。すると
「あぁ?」
どすの利いた声で睨まれた。
その声と眼力に俺は気圧されてしまい
「あっ、なっなんでもありません・・・」
といってしまった。
コミュ症の性のようなものである。
「なんだよったくっ」
とじじいが悪態をつく姿に俺は更に苛立ちを覚えた
そんなくそじ(((おっさんとのやり取りのあとようやく俺の番になった。
会計さんにかごを渡して支払いの準備をする。するとここでも俺に疲労をためる問題が起こった。
「袋はご必要ですか?」
なんと話しかけられたのだ。
仕事の一環とはいえ自分は話しかけられることに耐性を持っていなかった。
しかも俺は典型的なコミュ障で受験の時よりも強い緊張が体中を駆け巡った。
これは男でも女でも起きてしまう。
「あっ、えっと、は、はい、お、おぉねがぁいしますぅ」
そんなどこか違う国の言語なのではないかと思ってしまう発音で言ってしまった。
会計さんはもちろんドン引き。
何だったら俺の真後ろにいた人は6歩ほど下がっていた。
俺は泣きそうだった。
いつも道理バーコード決済で支払いを終えたあと逃げるように俺は家に帰った。
結果がこれである。
帰りは走ってきたため息は切れており、飲むようにと買った炭酸飲料はぱんっぱんに膨らんでいた。
災難だぁ
俺はもう泣きそうだった。
それでも時間は刻々と迫ってきたので急いで朝食を食べ準備をした。
自分の事務所所属をかけた面接にはポロシャツとデニムで挑んだ。
みんな見よ!これが青春をコミュ症という悪魔に食い荒らされ、おしゃれとは無縁の環境で過ごした姿なのだ!!!(by作者)
そうして順調に電車を乗り継ぎ俺は面接会場についた。
そこは4階建ての小さめなビルで明らかに新築と言えるほどに真っ白だった。
「(これがいつか隣の築10年のビルと同じぐらい黒ずむのか…なんか可哀そ)」
哀れみの目を向けつつ中に入ると看板が置いてあった。
その看板には『LyR1c BeAt《リリックビート》面接会場は二階です』と書いてあった。
その指示通りに二階へゆくとそこには男性二人女性三人計五人が待機用の椅子に座っていた。
そしてちょうど面接室のドアが開き高校生ぐらいの男子が出てきた。
その顔はとても暗かった。
その顔を見て俺含め待機していた人たちが息を呑んだ。
廊下に緊張感が漂った。
みんながみんな神妙な顔つきになっており自分もなっているのだろうなと自覚しながらも不安な状態に陥ってきてしまった。
「次の方どうぞ」
面接官であろう人が面接室の中から声を上げた。
その声に応じてドアの一番近くにいた金髪の男性がガチガチになって立ち上がる。
その時の他の待機者の心象は同じだった。
「「「「「がんばれ(って)!」」」」」
頑張ってくれ!!どんな圧迫面接でも負けるな!!
それから数十分が過ぎとうとう俺の順番になった。
さっきまである程度落ち着いていたのに面接室の扉の前に立つと心臓がバクバクうるさくなった。
「(しずまれ!!おれの心臓よ!!)」
と心のなかで叫びドアをノックする。
そして室内から
「どうぞ」
「失礼します。」
と声がかかったのを確認して部屋に入る。
そこで初めて審査官と相対する。
審査官は4人
「今日はお願いします。」
挨拶をして最初の試練が始まった。
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