1話:面接(予定)とハプニング

「…え?」


開幕早々素っ頓狂な声を上げたのはこの俺、月見里拓矢やまなしたくやだ。


んで、俺が変な声を上げたのには理由がある。

それは俺が金を稼ぎたいという不純な理由で受けたVtuberの書類審査、つまりは第一次審査に合格してしまったからである。


別になにか悪いってわけでもない。強いて言うなら自分が今日まで続けて来た仕事の作詞作曲等の締め切りが明後日だということぐらいだ(なお、結構ピンチ)


「…こんな俺が…いいのか?」


と内心不安になりつつも内心はエグいぐらいに興奮していた。


「(これで有名になれる!!!)」


拓矢は幼い頃から有名になることを目標としていた。


有名になるために、中学の頃は剣道の大会で優勝したり、高校では絵画で内閣総理大臣賞を取ったりとえげつないことをしてきた。

作詞作曲もその一環で超有名になりたいがために始めた。


だがその結果は拓矢が想定していたものとは大きく違い、満足できていなかった。

本人は自分には作曲のセンスがあると思っていてすぐに100万人突破するだろうと驕っていた。だが結果は、現在チャンネル登録数は17万6000人ほど。

本人はすごく落胆し、今は金を稼ぐために曲を作り、動画を上げ、依頼を募集しというのを繰り返していた。


しかし拓矢は気づいてない。


他の超有名な作曲者たちには劣るが一般の人や(失礼な言い方をして)底辺の人たちよりは圧倒的に多い。

つまり拓矢は気づいてないだけでその存在が多くの人々にを与えうる存在

なのだ。


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「ん〜…。Vtuberやるなら今のチャンネルは消したほうが良いかな…」


そう俺はいすのリクライニングに背を預けながら呟いた。

正直に言うとどっちでも良いが、もし自分の曲やイラストが他人に使用される時のことを考えると残したほうが良いのかもしれない。


「どうしたもんかねぇ」


年寄りくさいセリフを吐いた俺はLyR1c BeAt《リリックビート》からの通知を開いた。




『 

   第一次審査通過のお知らせ


   月見里拓矢様

   この度は本社の新人Vtuberオーディションに参加していただきありがとう

   ございます。

   今回あなたは第一次審査を通過しました。

   ◯月▢日 12:30 より貴方様の第二次審査を行います。 

   ◯△町▣番地☓丁目までお越しください。


   LyR1c BeAt オーディション担当


                                    』


「第二次審査ねぇ…」


俺のイメージだと面接なんだけど俺大丈夫か?

久しく人と喋ってねぇ。

引きこもって曲を作っていた俺はこの数年間人と顔を合わせて会話をした記憶がなかった。


頭を抱えているともう一つの事実に気づいた。


「…あれっ?この◯月▢日って締め切り・・・?」





「一旦まずいか」


エナドリ6本コースが決定した(良い子は真似しないでね☆)





翌日


「あ゛ぁ゛」

俺はゾンビみたいになっていた。


昨日、締切が明後日でしかも第二次審査があるとわかった俺は一睡もしないで作曲に取り掛かった。

そのおかげか無事に曲が完成しあとはイラストだけとなった。


「ねむいィィ」


目をこすりながら液タブにペンを走らせる。

が、睡眠不足の影響が出ないわけもなく…まっすぐ引いたと思った線はぐちゃぐちゃで、青と思った色は黒で、と酷い有様になった。

そして俺は悟った(は?)。


「寝ないと死ぬ」


当たり前のことを呟いて俺は机に突っ伏した。





目を覚ました頃には窓の外はすでに薄暗く、近くの電柱に止まったカラスがゴミ捨て場を荒らそうとしていた。


そんな感じの外を眺めていた俺はイラストが残っていることを思い出してすぐさま取り掛かった。


やはり人間は休息を取らないことには生活できないらしい


「やっぱ少しでも寝ないとだめだな。なんもできなくなる」


そう、俺は一般常識を脳内に再インプットした。


深夜になり、完成したイラストと曲をミックスし動画にして依頼者に送り付けた。


「よしっ!!もうやることはない!!寝るだけ!!!おやすみ!!!」


と俺は明日のオーディションのことを忘れベッドに飛び込んだ。

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