作詞作曲編曲イラスト全部一人でしてたらVtuberになってた

神埼ミクル

プロローグ:一人の曲と収入源

今この社会では人と音楽との距離が極端に近くなっている。


歌うことも、聴くことも、作ることも今ではどこでも誰でもできる。


趣味として作曲したものを動画投稿サイトに上げさえすれば何十何百何千者人に聞いてもらえる可能性もある。


それだけで生計を成り立たせる人がいるほどだ。


ここにもその一人がいた。




カチッカタカタカタと部屋中にタイピング音とクリックする音が響く。


「ん…ここはこのコードで…もっとドラム刻むか…」


部屋にはソファとローテーブル、扉を一枚開けるとベッドとモニターやキーボードなどでもう何も置けないであろうデスクがあった。

そしてそのデスクの前で一人もくもくと一人モニターに向かっている男がいた。


カタカタカタッタンッ


「よし…きりが良いから今日はここまでにしよう。あとは明日だな。」


そう言うと俺は椅子のリクライニングを思いっきり倒して体を伸ばした。


「んにゃ〜…腹減ったわ…」


そう言うと冷蔵庫の中を覗きつまめそうなものを取り出してソファにエナドリと一緒にダイブした。


「今日はなんか面白いテレビあるかなぁ」


そんな適当呟いて番組表を見漁る。


こんなどこかのオヤジみたいな俺でも一応作詞作曲編曲イラストを担当しておりそれなりに人気もあると自負している。


「今日のテレビくそかよ…なんも面白そうなのねぇじゃん」

「しゃーない配信漁るか…」


そう言ってスマホに目を向ける。


「最近は動画より配信のほうが需要高ぇのかな…」


生配信の欄を見るとゲーム配信や雑談、ASMRなど様々なジャンルの配信が表示される。


「やっぱ他の収入源も作るべきだよな…」


俺は密かに焦りを感じていた。

最近の俺の曲の再生量が少しづつ減ってきていて収入が減ってしまう可能性が出てきたのだ。


元々曲作りは趣味の一環でしかなかったのだが一回投稿してみようという軽いノリで投稿してみるとバズってしまい投稿を続けるを得ない状況になってしまったのだ。


だがそれも今は曲を投稿するだけなのが影響したのかだんだん再生数も落ちてしまっていた。


「はぁ…」


ため息を吐きバイト探そうと検索欄に指を運ぶと気になる記事が記載してあった。


『Vtuber事務所 LyR1c BeAtリリックビートオーディション開催決定!!本日○月○日20:00より受付開始!!』


「…Vtuberって金稼げんのかな」


そんな不純極まりない理由でおれはオーディションに申し込んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る