第3話 クラスのマスコット

 俺は状況を把握した。


 ――作戦を練り直す必要がある。


 そして月見へ諸々の謝罪もしたいところだ。


 あぁ――


『明日もまた、ここで待っている』


 あれは取り下げねば……。


 というか待っても来ないだろう。


 早めに対処したいが月見はいつ登校してくるか。


 少し視線を教室側に向け――――


 ちょうどこちらへ歩いてくる女子生徒と目が合い、すぐに逸らされた。


 印象に残る女子だろう。


 サラサラと流れる長い黒髪、凛々しく整った顔立ち、黒のストッキングに包まれた脚を含めスラリとしていながらも、女子ですら思わず目が引き付けられそうな豊満な胸元。


 まさに美人だ。


 そしてそんな彼女と並び歩くもうひとりの女子生徒。


 ちょうどこちらを見ていたため挨拶する。


れい、おはよう」


「おはよ。というか今日も髪やばいし。やめたほうがいいって、それ」


「……ふむ」


 ――ぜひ昨日言ってもらいたかったが……。


 呆れた声音の彼女は月見 麗という。


 ――月見 花とは双子で、その妹だ。


 だが先ほどの美人と同様にスラッと高めの身長で、長い髪を金に染めパーマもかけている。


 まさにギャル、という見た目だが彼女はけっこうしっかりした人物だ。


 あぁ、双子の外見で同様なのは容姿端麗な点と控えめな胸元で――


「いいじゃない。クラスのマスコットにしましょう、みんな笑顔になれるわ」


 ……好評なのか?


 艶やかな黒髪が横を通り過ぎ、真後ろの席へ。


「いや、アンタ全然笑ってないけどね」


「む……」


 そんな麗の返しに俺は後ろへ振り向き――


「見ないでくれる?」


「……ああ」


 ――すぐに視線をまた前へ。


 というか月見――姉の月見が2つ隣の席にもう来ていた。


 静かに入ってきていたらしい。


 華奢で可愛らしい姿が横目に見え――


 ちらりと視線がこちらを向いた。


「っ……」


 目が合った――瞬間に何事もなかったかのように逸らされる。


 やはり昨日の俺は色々とダメだったのだろう。


 というか月見はこんなにもご近所さんなのだ、告白など中々どうかしている。


 流石にメイリーさんも方針転換してくださるだろうが……。


「……はぁ」


 俺の悪評がまた――いや気にするまでもなく元から手遅れだったか……。


 ちなみに、俺は当たり前のように彼女らと会話していたが別に仲がいいわけではなく、話すとしても麗が話しかけてくれたときぐらいだ。


 実際すでに俺のことなど眼中にない。


 ――あぁそういえば。


 先ほど俺をマスコットにするという冷酷な提案をしていた美人、名前を夢山 結美乃ゆみのという。


 サイボーグだ。





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