第3話 冷静になったサイボーグ

 作戦を練り直す必要がある。


 そして月見へ諸々の謝罪もしたいところだ。


 ああ――――


『明日もまた、ここで待っている』


 あれは取り下げねば…………。


 というか待っても来ないだろう。


 早めに対処したいが月見はいつ登校してくるか。


 少し視線を教室側に向け――――


 ちょうど教室に入ってきた女子生徒と目が合い、すぐに逸らされた。


 印象に残る女子だろう。


 腰元まで届く長い黒髪、凛々しく整った顔立ち、黒のストッキングに包まれた脚を含めスラリとしていながらも、女子ですら思わず目が引き付けられそうな豊満な胸元。


 まさに美人だ。


 その彼女のすぐ後ろから、英単語帳を開きつつもう一人の女子生徒が入ってきた。


「アタシも結美乃ちゃんぐらいアタマ良かったらなぁー……って、ブフッ、今日も髪ヤバすぎでしょ」


 明らかに俺のほうを見て笑っているのは

 月見 れいという女子だ。


 そう、月見 花とは双子だ。


 だがそっくり似ているとは言えず、先ほどの美人と同様にスラリと高めの身長で、長い髪を金に染めパーマもかけている。


 整った顔立ちに派手めな化粧で、まさにギャルだ。


 緩い話し方をするが進学校に入学してはいるため学力は相応に持ち合わせているのだろう。


 彼女の月見 花と似ている点で言えば…………慎ましやかな胸元か。


「あんな人放っておけばいいのよ、今日の単語テスト、まだ自信ないんでしょう?麗」


「えぇー、でもあの壁ドンかっこ笑みたいなやつ結美乃ちゃんも動画で見たでしょ?ちょー笑えたんだけど」


「そうね、滑稽でとても面白かったわ。とはいえ今更の話でしょう、彼がおかしいのはみんな知っていることよ」


「まあねー」


 そんなことを俺に聞こえる声量で話した2人はそのまま後方の自席に歩いていった。横目で見つつ無言で見送る。


 その後すぐにこのクラスの委員長、月見 花も教室に入ってきて2人へ追いついた。


 にしても、彼女たちが来てから教室が一気に華やいだような気がする。


 3人の元には人が集まっていった。


 流石に今は月見へ話しかけられないな……。


 ああ、そういえば、先ほどの辛辣な言葉で精神攻撃をしてきた美人、名前を夢山 結美乃ゆみのという。


 サイボーグだ。



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