第三章:苅萱


昔、高野に西行ありき


庵にていみじうおそろしき蛇いづれば、

母こそ

蜿蜒たるみぐしより火を吐きて御たまはりける、


ちちうへ、

ははうへ、


乞ひしかりけるへ

珠の緒に

攀ぢりて零れる

姥捨の櫻の枝折こそを手向とぞおもふ、


僧都、数珠手繰りつつ寒念佛唱へて払ふ淡雪の、


碑こそ観ゆる

見ゆれども、

ははうへは先立ちたまふなり、


ちちうへいづこ

苧環のしがらみからむわがゆびへ

柄杓星こそかけてはおもへ


星読は告げり


ながかたきこそは

なれ履みし幾月歳の影にこそをりぬ


宿業いづれなるか、

珠影!


刹と払ひき宿痾の御手に

係り纏はるくちなはのかげのあり

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