第二章:水葬人夫

薔薇の刺靑のある右腕が

錨の縄を投げる


少年は

喉元まで癩病に愛されていた


水底に沈む嬰児の様な石達――或はサイレンのこだまたちは

排水路へと續く濁流の中

銅錆色の、

緑靑の涙をしたたらせていた


呼ぶ声――水門へと身を乗り出して狂った女が叫ぶ、


――マリオ、マリオ!あなたはどこ、マリオ!!


濁流の底は、

その目を渦巻かせて

叫びさえをもかき消してしまうだろう


――復、復だ、今日も復一人、消えたって――、


朽ちた部屋へ遺された

自動仕掛けの時計人形より、

次の聖水曜日には

埃の羽根でも生え來ることであろう


錨には少年の――嬰児の亡骸が縺れ絡まり、


失踪届が提出をされる



あたらしい宵だ――、而して呼ばうふるいものどもは、


何処へ、

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