揚げ者狩人

上面

揚げ者狩人

 地球にサマーシーズンが到来し、更に高度な知能を持つ海産物が地上に上陸し、更に更に魔王がやって来た。これらのカオス的な状況により人類の文明は後退した。

 知的な海産物を総じて海の者と、魔王によって闇の油を注がれた者たちを総じて揚げ者と呼ぶ。


 日が落ちても地上は常夏。今、私の目の前に揚げ者たちが見える。犬や烏、人の揚げ者たちが逃げ惑う人間を襲っている。彼らは地上に住まう非都市住民であり、厳密には私の保護対象ではない。私は揚げ者たちに対抗する人類の国際的な組織、狩猟教会の揚げ者狩人である。狩猟教会の人力マンパワーは無限ではなく、非都市住民はできれば保護するとしていた。

 

「征くぞ」


 私が背負う棺からくぐもった声が聞こえる。我が師の声である。


「征きましょう」


 私は跳躍した。

 揚げ者たちの集中する箇所に棺を叩きつけるように着地する。

 衝撃波は揚げ者を吹き飛ばす。棺を中心に赤い槍が周囲に生える。


「ハンドレッド・ロンギヌス」


 揚げ者狩りの奥義の一つである。私自身のカロリーを消費し、周囲に赤い槍を生やす。揚げ者狩人はカロリーを消費してロンギヌスを創造できる。

 生えた赤い槍は全てロンギヌスの模倣であり、揚げ者には特攻である。

 揚げ者たちは命無き食べ物に戻った。


 非都市住民の一時の安全を確保し、私は走る。

 現在オオサカ地下要塞都市は揚げ者たちによって襲撃を受けている。

 既に地表三十三層までの侵入を許し、都市住民たちが揚げ者に襲われているのだ。


 私は棺に繋がる鎖を長めに持つ。襲い掛かる揚げ者たちを棺を振り回し粉砕していく。

 揚げ者の開いた穴を通り、要塞都市に入る。

 そして現在要塞都市の侵攻最前線までたどり着く。多くの揚げ者が見える。

 金属製の壁や床は住民の血や揚げ者の黒い油で汚れている。

 揚げ者たちの中に一際目立つシルエットの揚げ者が居た。

 それは闇の衣を纏った巨大なサソリに見える。その衣の質感は高級だ。


「高級揚げ者とお見受けします。私は揚げ者狩人、台場クリストファーと申します。死ね」


 サソリの揚げ者に棺を投げつける。


「サソサソサソ!!この程度の攻撃で闇の衣は剝がれぬサソ」


 サソリの爪に棺は弾かれる。それを回収しながら、私は次の一手を打つ。


「サウザンド・ロンギヌス」


 揚げ者狩人の奥義の一つである。名前の通り千のロンギヌスを射出する。

 ロンギヌスは闇の衣を穿うがち、揚げ者を食べ物に戻す力を持つのだ。

 そして私のロンギヌスの流れ弾で周囲の安っぽい揚げ者たちは物言わぬ食品に戻った。


「効かぬサソ」


 全身をロンギヌスで貫かれながらもサソリは平然としていた。闇の衣の表面に突き刺さったのみで、中まで貫けていない。

 サソリは闇の油を尾から射出する。これは棺で受ける。

 闇の油は浴びたものを揚げ者に変える力を持つ。


「ロンギヌス・バスター」


 これは揚げ者狩人の奥義ではない。ただ単にサソリに刺さったロンギヌスを棺で奥まで叩き込んでいるだけなのだ。なんとなく技名を言いたいので言った。


「痛いサソね」

「なかなか高級なサソリだ。流石甲殻類というところか」


 棺の中の師匠の言う通り、なかなか高級だった。サソリにはなかなかロンギヌスが入らない。平然と私に反撃してくる。

 棺を巧みに使いこなす私でもなかなか決め手に掛ける。

 仕方ない。


「頼みます。師匠」

「うむ。揚げ者十三始祖ユダの名においてここに闇の油を注ぐ。瞬きの間、揚げ者に転ぜよ」

 

 棺が開き、師匠が顔を出す。師匠は魔王を裏切った最高級の揚げ者。

 そのかんばせは女性向けファッション誌の表紙を飾るほどの美しさである。

つまりは渋谷をかつて歩いていたようなギャルの生首である。師匠は魔王を裏切る際に肉体を破壊された。

 私は師匠に嚙まれ、束の間揚げ者になる。全ての能力ステータスが上昇した。


「裏切り者ユダ!?」


 サソリは師匠の高級感溢れる雰囲気に圧倒され、瞬間硬直する。

 私は跳躍した。私の飛び蹴りがサソリに刺さるロンギヌスを深く押し込む。

 サソリはただのサソリの揚げ物に戻った。


「正義は勝つ」


 師匠がなにかイイ感じのことを言い、サソリを吸い込んだ。カービィを彷彿させる。そして私の身体を侵食した闇の油が師匠に帰っていく。

 とにかく揚げ者の侵攻をなんとか撃退した。次に揚げ者たちが侵攻してくる場所は不明だが、私と師匠がとにかく倒す。人間は揚げ者に負けない。


 




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