第4話  ポジティブ化計画

陽川さんへの提案、それは───


「ポジティブ化計画?」

「そう、ポジティブ化計画。」


というものである。

さっき色々話してくれた時にネガティブ過ぎて話しにくそうだったし、何より土手で話し始めた時から考えついていたのだ。


「でも何するの?」

「普段の生活でちょっとずつ考え方を変えていくんだよ。何かを言われた時に、一瞬ネガティブに考えてもいいから、無理矢理自分が嬉しく思うように考えを持っていくんだ。」

「でもそれって───」

「最初はそんな考え方して大丈夫か不安になると思うけど、慣れきたらだんだんそのことも気にしなくなるよ。」


そう言うと陽川さんは少し心配そうな顔になる。


「さっきも言ったけど大じょ」「そうじゃなくて、陰山にそんなに面倒見てもらうと、なんだか申し訳ないってゆーか、なんとゆーか…」

「それも大丈夫だよ。この計画は俺のお節介みたいなものだから。なんならやらなくても「それは嫌だ!」」


強く否定した後に彼女は続ける。


「自分はこんな思考回路のせいで沢山苦労してきた。だからこれから先もう同じような苦労はこんなにしたくない。だから、自分を変えたい。」


と目を合わせ強く言われた。

本人がこう言ったのなら、俺がやることはただ1つ。陽川さんが変われるまでそばにいることだ。


「わかった。じゃあこれからもよろしくね、陽川さん。」

「うん!よろしく!」


そう言って俺たちは立ち上がって握手を交わした。

◇◇◇

その後、帰る時に陽川さんがスマホを持って、


「陰山、そ、その…ら、LINE交換しない?」

「……ハッ」


少し考えたあと、思い出した。そういえば俺たちはお互いの連絡先を知らない。家で実行委員の仕事をしても次の日学校で会うから進められたのだろうが…よくこれで仕事できてたな、俺たち。


「や、やっぱり嫌だった?ごめん、忘れて…」

「陽川さん、ネガティブになっちゃってるよ。」

「あっ…ごめんなさい。」

「いいんだよ、最初はそんな感じだよ。あとこういう時は、ごめんじゃなくて、ありがとう。」

「ん、ごめ…じゃない、ありがとう。で、LINEは…?」

「よろこんで!」


やった、と小さくガッツポーズをする陽川さん。正直に言って可愛い。ポジティブ化計画は俺が発案したけど、俺が大丈夫かな…可愛すぎて尊死しちゃうかも。


ちなみにLINEを交換したあと、『これからお世話になる』ということで、河川敷からそう遠くない位置にあるチェーンのコーヒーショップに寄った俺たちは、店員にカップルだと間違われ、少し気まずい雰囲気が流れたのだった。

◇◇◇

「今日はありがとね、陰山!あと、明日からもよろしく!」

「うん、こちらこそよろしく!あ、解散する前にひとついいかな。」

「ん?なにー?」


陽川さんを呼び止めると、駅の方に向かって歩いていた足を止め、こっちまで来てくれた。


「ずっとポジティブに考えようとしてたら疲れると思うから、俺と二人でいる時は素を出してもいいよ。」

「───ッ!」

「あ、家でゆっくりしてる時も───って、どうしたの、陽川さん。体調───」「もう!ほんとに!陰山ってば無自覚すぎ!鈍感!」


気を抜くタイミングを教えようとしたら腕を叩かれた。何か嫌なことでも言っただろうか。それにしては陽川さんはとても嬉しそうである。


「と、とにかく、あたし帰るね!陰山といる時と、家にいる時は素を出してもいいんだね!それじゃ!」

「あ、あぁ…」


陽川さんは早口でそう言って改札の向こうへと行ってしまった。


…明日一応謝っておこう。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

更新空いてしまってすみません!


そしてラブコメ週間ランキングで640位程だったのが470位まで上がってきました!

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