第9話 対決
「―――」
コツコツと足音が聞こえる。その足音は異様に響き渡り、脳が覚醒する。
「―――!」
顔を上げた女の前にいたのは、ゴルド・ネリーというサイコ野郎だ。
「気分はどうだい」
「……」
「無視か。誰が君の怪我を治してやったと思ってるんだ?」
「……誰のせいで死にかけたのよ」
「これはこれは、言うじゃないか。この宇宙のゴミが」
そう言って、ゴルドは音読のように記録していたことを読みげる。
「君の産まれはなんてことない夜の星。あそこは貧富の差が激しく、産まれで人生が決まるといっていい。あんな場所にいて、犯罪歴がないとは驚いた。ついでに戸籍のような社会番号もない。ああ、勿論褒めているとも。ゴミなりに必死に生きてきたんだとね」
ゴルドは女が寝ている間にほとんど全てを調べていた。女の着ていたドレスから夜の星を特定。夜の星の個人データに血液や髪の毛を照合し、逮捕歴と戸籍がないことが判明。監視カメラの映像から女が盗みで生計を立てていることも知っている。
ここまでくれば誰だって分かる。この女は宇宙のゴミだ。
「だが、そのドレスを買うほどのいい収入があったようだね。赤い変なスーツを着た男さ」
そう言われてすぐには浮かばなかった。なぜなら、ナンバーフォーという男は初めて会った時以来、あの赤いスーツを着ていないからだ。大体はジーパンにシャツ。ジャケットを羽織ったりしている。
ああでも、この星に着いた時も赤いスーツを着ていた。あれが勝負着とは。昨日はジャケットだったけど、その方がいい。
「ふふ」
思わず笑っていた。ナンバーフォーのことを思い出すだけで、何故か笑みが浮かび、同時に重い荷物を背負わされた気分になる。
「ほほう。随分と余裕があるようだね」
女の笑みを、嘲笑の笑みと取ったのか、ゴルドは微笑みという仮面を捨て、ナイフを手に取る。
「君は自分の立場を分かっているのかい? 金貨の居場所を吐かなければ一生このままだ。空腹に悶えても、痛みに泣き叫んでも、私は気にしない」
そう言って女の頬をナイフでなぞる。目の下が切れ、血が頬を流れる。
「そう、たとえ拷問官が現れようと、嗜虐趣味の変態が現れようと、私は見てみぬふりをする。けれど、そんな私もたった一つの言葉には反応する」
そう言って、女を殴りつけた。
「金貨はどこにある! 吐け!」
すでに女の身体は調べてある。しかし金貨は出てこなかった。身体を改造しポケットを作っている可能性もあるが、無理に開けようとすると中身が潰れる可能性がある。どこかに隠したにせよ、女に直接話を聞く必要があった。
女は毅然とした態度で無言を貫く。
もう一度殴る。それでも効果はない。
「やはり、暴力には慣れているか」
ゴミはゴミなりに死地に立つことが多い。生半可な暴力では意味がない。しかし、残念ながらゴルドは拷問官ではない。方向を変える。
「そうそう。君はこの星に来るとき一人ではなかったね」
「……」
「金を盗まれたというのに、一緒の船に乗せて旅行とはね。君のような女を買う男がいるなんて驚きだよ」
その言葉に、女の眉が動いたのをゴルドは見逃さない。
「宇宙のゴミ女、そこまでして女に飢えた男。反吐が出るね」
ゴルドは言葉を区切りながら発した。最初は無反応、二つ目の言葉に口元が歪み、三つめも無反応。
それだけでゴルドは、女に飢えた男、この中に女の弱点があると見た。
「男とはいい仲だったのかい? それとも、ただの一夜の相手か? どちらにせよ、その男はキチガイだね」
三つ目。どうやらこの女は、一緒に旅行に来た男が侮辱されることを嫌がっている。
「そう言えば、彼らが止めていた船も君たちが泊まっていたホテルも、私はすでに調べてある。今はどちらにも現れてないが、もし私が見つけたら、どうすると思う?」
女は答えに窮する。
なぜだろう。フォー、コイン、シャロムが簡単にやられるとは思わないが、そもそもあの三人とはすぐに別れるはずだった。
だから、どうなろうと関係ないはずだ。
関係ないはずなのに、胸が苦しい。自分のせいであの三人が酷い目に遭うと責任を感じる。今までこんなことはなかった。
ゴルドは満足のいく反応だったのか、ニヤリと口角を吊り上げて言う。
「どうだい。金貨の場所を吐かないのか? 今ならあの男たちを見逃してもいい。さあ、どうだ」
反応はない。むしろ女自身迷っているようでもあった。
ゴルドはその様子を唇を噛みながら見ている。
気にくわない。ゴルド・ネリーは自分の想い通りにならないと怒りが湧いてくる。ましてや、あと一歩で誰にも負けない価値が手に入るというのに、なぜこの女は口を割らない。
ゴルド・ネリーの価値はゴミ一人喋らすことが出来ないのか?
いいや、そんなことはない。このゴルド・ネリーの価値はもっと偉大で強大だ。そうだ。この女は宇宙のゴミだ。そんな奴が本当に怖いのは、死しかありえない。
緊急連絡を告げるランプが長机の上で光っても、無視するほど、ゴルドは必死になっていた。
持っていたナイフを女に向け振り上げる。そして、そのまま心臓の近くに突き刺した。
「―――ッ!」
声にならない声を上げ、女は暴れようとする。しかし、縛られた身体は打ち上げられた魚のように、滑稽にうねるだけだ。
痛みが全てを支配する。ドクドクと心臓が早鐘を打ち、生命の危機を知らせてくる。
ああ、このまま死ぬのか。
女はどこか遠くを見ながら思う。
どうせ死ぬなら、心から笑って死にたかった。
女の諦めた顔を見て、ゴルドは嫌味ったらしく笑う。
「この傷なら一時間も放置していたら確実に死ぬ。その間に金貨の場所を吐けば助けてやる」
女はその言葉を聞いていた。
「……金貨は―――」
言おうとした。言おうとして、とても大切なことを思い出した。
あの金貨を持っているのは自分ではない。
ハッとする。
そうだ。金貨を取った夜、バーで酔っ払い、フォーのポケットにねじ込んだのだ。
「……金貨は? 金貨はどこにある!」
言いかけていたはずの女の目が変わる。
「―――言えないわ」
言えるはずがない。わが身可愛さにフォー達を売るなど、どれだけフォーに幻滅されるか。笑われるか。
「な! ふざけるな! 今言おうとしていただろ! なぜ、急に、このままだと死ぬぞ。いいのか!」
「どうせ死ぬならカッコよく、よね」
何となくフォーが言いそうなセリフを言ってみた。刺さったナイフは血管を傷つけ、赤い血液を絶え間なく流し続ける。
だんだんと意識が怪しくなっていく。
幼い自分が現れる。次に路上で寝起きしたこと。初めて盗みに成功し、まともな食事にありつけたこと、騙そうとして騙され骨を折られたこともあった。
これは走馬灯というやつだろう。人が死ぬ間際に見て、自分が幸せだったかどうかを確認する儀式。
だが、それにしては短い。もうフォーに出会ってしまった。
財布を盗んだはずなのに、なぜか一緒の船に乗り、旅をした。馬鹿なフォーに突っ込むコイン、シャロムも加わって騒ぎが大きくなる。見ているだけで飽きない。彼らを見ていると自然と笑みが浮かび、自分とは思えない行動をする時もある。
くだらないことで言い争いをした。くだらないことで笑った。
その時、ようやく気付いた。
楽しかったのだ。フォーといると、楽しかった。だから、離れたくなかった。同時に、別れるのが怖かった。所詮自分は盗人、宇宙に捨てられたって当然。
だから、去ろうとした。自分から去れば、まだ傷つかないから。
なのに、なのに……。
女は死を覚悟したはずだった。けれど、思う。
まだ死にたくない。
ゴルドは女の表情から、生への執着を読み取っていた。だからそこ、焦りに似た感情に支配される。
金貨の場所を吐くだけで、生が得られるというのに、女は口を割らない。なぜなら、ゴルドの言葉に価値がないから。価値ある言葉なら、女は口を割るはずだ。
ゴルドは叫ぶように言う。
「き、貴様のような宇宙のゴミ、誰が気に掛ける。捨ててあっても誰も目を向けない! いいのか、金貨の場所を吐けば、地位をやろう。有名にしてやろう」
まだ死にたくはなかった。けれども、彼女は言う。
「お断りよ」
「! ふ、ふざけるな! この期に及んで助けでも期待しているのか。誰が貴様のような宇宙のゴミを助けに来る。そんな馬鹿がいるはずないだろう!」
ええ、そうね。そう言おうとして、たった一人思い当たる。
女は笑みを浮かべていた。
「どうせ死ぬならカッコよく。なんて台詞、私には合わない」
精々しぶとく、がいいところだ。
女の笑みにゴルドは激高した。
「バカが! ここがどこか分かっているのか? 警備は最新鋭のロボット部隊、監視カメラだって無数にある。私が丸腰でいると思うのか? こんなところへ飛び込んでくる馬鹿がどこにいる!」
そう言いながら、脳裏をかすめる緊急連絡を告げるランプ。だが、大丈夫なはずだ。ここにたどり着くまでに精鋭たちが守っている。それに、ここには大切なものなどない。
ゴルドの言い分に女は頷く。
「ま、普通ならそうね。でも、私は知ってる。とてつもなく馬鹿で、とてつもないお人好し。私みたいなのを助けに来る大馬鹿を」
確信めいた笑み。ゴルドの言葉にもはや価値はない。
「だ、誰だって言うんだ!」
ゴルドがそう喚いた刹那、この部屋を守る壁が崩れ落ちる。
鋼鉄の扉が崩れ落ち、暗い部屋に光が差し込む。その光を背に受けて、男は答えた。
「俺だ」
とてつもなく馬鹿で、とてつもなくお人好し。名前も知らぬ女を助けに来るのは、この男しかいない。
「フォー!」
ナンバーフォーがそこに立っていた。
女は安心した。これでもう怖がることは何もない。
フォーと目が合った。
フォーの瞳は女と合うと、ホッとしたようだが、すぐにその下に刺さるナイフを見ている。
女の全身が総毛立った。
怖い。
フォーはいつも何かしらの表情を浮かべている。笑顔だったり、考え込むような顔だったり、真剣な表情だってあった。数秒毎にコロコロとせわしなく変わる表情が、今は、まるで死人のように、全く何も映していない。
女にはそれがとても恐ろしく感じた。
「フォー……私は、大丈夫だから」
怖かった。だから、声を出した。
震えていても、フォーはその言葉をしっかりと聞き届けている。
フォーの瞳に色が戻りかける。
しかし、女の頬を流れる血が涙に見えた。
刹那、フォーは突進する。
ゴルドが何かを言う間に距離を詰めようとするが、その間に何かが割り込む。
ロボット。だが、今までとは明らかに違う。腕が四本あり、全て刀を持っている。
前に突っ込んだフォーへと、刀を突きつけてくる。
その刀をフォーは足場にした。
飛ぶ。
ロボットを飛び越え、そのままゴルドへ殴りかかる。
だが、止まった。
ゴルドが新しいナイフをもって、女に突きつけている。
「……」
フォーは無言で圧力をかける。もしそのナイフを突き刺せば、お前も死ぬぞと。
ゴルドも目で威圧する。一歩でも動けば、このナイフを突き刺すと。
膠着状態。否、ロボットが迫る。
四つの刀を上下左右にわけ、間合いに入ったものを確実に傷つける必殺の剣技。
「一二の三! 一二の三!」
その言葉と共に、フォーはゴルドへ突っ込んだ。
ゴルドがナイフを突き刺そうとした瞬間、頭上からコインが突っ込み、ゴルドの手を思いっきり掴む。
ゴルドの動きがほんの少しだけ止まる。それだけで十分だった。
フォーの蹴りにゴルドは吹き飛び、女を開放する。すぐに抱き留め、ジャンプする。一飛びでロボットを飛び越え、入り口付近で着ていたジャケットを女にかける。
「死ぬな」
フォーは女の瞳を見て言った。
「当り前でしょ。私はしぶとく生き残るわ」
女もフォーを見る。すでに瞳はいつものフォーに戻っていた。
「俺はあのロボットを片付ける。それまで、待てるか」
「いいわ。まだあなたに捕まっておいてあげる」
フォーはふっと笑うと、女を背にしてゴルドとロボットに対峙する。
コインがフォーの頭上で飛び回っているのを、ゴルドは信じられないという顔で見ていた。
「バカな。あのゴミを助けに来たのか」
「ゴミ? 俺はゴミなんか拾ってねーぞ」
「違う! 貴様はあの女を助けに来たのかと聞いている」
「そりゃそうだろ」
「あたりまえー。あたりまえー」
クルクルと上空を飛び回るコインを一瞥して、ゴルドは怒りに似た、混乱を見せる。
「分からない。貴様はあの女のことをどれだけ知っている」
「どれだけ……意外とノリがいいとか?」
「馬鹿か。あの女が盗みで生活していたのは知っているのか。売女のような人間だと知っているのか。あの女のことをよく知りもしないくせに助けに来たのか」
ゴルドの言葉にフォーは当然というように答える。
「俺はあいつのことをもっと知りたい。だから助けた。……変か?」
「変人ー。変人ー」
「コイン、お前には聞いてねーよ」
そんなやり取りをゴルドは呆気に取られて見ていた。
信じられない。この男は本当の馬鹿だ。
そんなゴルドに、フォーはドヤ顔で言う。
「過去なんてどうでもいいだろ」
「その通りー。その通りー」
「おいコイン! さっきから俺のカッコいいセリフに口出しすんな。台無しだろ」
「元からカッコよくない。元からカッコよくない」
「な、なんだと! だったらコイン、俺がカッコよくなったらどうする」
「コインの秘密教える。コインの秘密教える」
「言ったな。覚えてろよ」
瞬間、ロボットが四つの刀で順番に斬りつけてくるが、紙一重で避けて蹴り飛ばす。
「フォー二二六式。フォー二二六式」
「確かに見たことあると思ったけど、本物か」
二人の会話に反応したのは、ゴルドであった。
「な、貴様ら。なぜそれを……いや、まさか、貴様そうなのか」
「は? なんのことだ」
そう返事をしながら、ロボットを軽くあしらっていく。
ゴルドは確信したように言う。
「十年前、ニホンで起こった戦争を覚えているか」
刹那、フォーの顔が曇る。
「……俺は関係ない」
「ないわけあるか! 貴様だろ。貴様もあの戦争に参加していたんだろ。そうじゃなきゃ、この殺戮ロボットと渡り合えるわけがない」
その言葉の直後、殺戮ロボットは胸を貫かれていた。
胴体を突き抜けた拳が、優しく、パーツをこぼしながら引き抜かれた。
がしゃん。と食器を落としたような音を最後に、殺戮ロボットは動かなくなった。
「遅い。遅い」
「コイン、お前はどれだけ早くてもそう言うだろ」
「フォーなら出来る。フォーなら出来る」
「お前もちょっとは手伝えよ。もふもふすんぞ」
「おことわりー。おことわりー」
その様子を見て、ゴルドは何かを悟ったようだった。
「そうか。貴様が、あのゴリラが言っていた危険人物か」
「は? 危険人物? それはあんたの方だろうが。人を誘拐して、痛めつけやがって」
フォーはゴルドへ向かって歩き出す。
「待て、私は仲間だ」
「仲間? なにふざけたこと言ってんだ」
「違う。分からないのか。私はあのニホンで戦った仲間だ」
フォーの足が止まった。ゴルドは不敵な笑みを浮かべる。
「あの戦争は酷かった。私達量産品は価値などなく、戦い潰され、戦いが終わればお払い箱。他の仲間は皆死んだ。生き残った私はこうして価値ある者となった。貴様もそうだろう。あの地獄から這い上がったのだろう」
フォーは何も言わない。代わりに答えたのはコインだった。
「フォーは特別。フォーは特別」
「フォー? 四? 四番目、特別……。なっ、まさか! だからあれを。まさかあの―――」
ゴルドが言い終わらぬうちに、大きな声が響いた。
「全員動くな!」
フォーとコイン、ゴルドまでもが驚いて声の方向を見る。
そこには、白いスーツに身を包んだ巨体。ふさふさと色艶のいい黒い毛。ジェントルマン。いや、ジェントルゴリラがいた。
リゴーラ・ラリゴは素手のままフォー達に近づく。
入り口付近に目をやれば、女が治療を受けているのが見えた。
ホッとする暇もなく、フォーとコインは警戒をする。だが、ゴルドは違った。
「ああ、隊長殿丁度いい所に。こいつらは不法侵入者でしてね。追い払ってもらえますか」
それは、ゴルド・ネリーという男の価値ある言葉。このカジノワールドにいる限り、絶対の言葉のはずだった。しかし。
「ゴルド・ネリー。お前さんはこう言ったな。ニホンの戦争にいたと」
リゴーラは腕まくりをする。
「俺の仕事は分かってるな。あの戦争で生き残った兵器を殺すこと」
「なっ、貴様。まさか―――」
「そうだ。俺はお前さんを殺さなきゃならん」
リゴーラが前に進もうとした刹那、声が響いた。
「ゴルド・ネリー! 覚悟!」
シャロムであった。
今まで身を隠し、ゴルド・ネリーに隙が出来るのを待っていたシャロムが怨嗟の声を上げ、ゴルド・ネリーへと突っ込む。
「シャロム!」
フォーの言葉よりも、ゴルド・ネリーの行動の方が早かった。
シャロムの竜のような攻撃を正面に受けながら、その腕を取り、必要以上に捩じる。
「―――!」
悲鳴は出なかった。
腕はねじ曲がり骨まで砕かれたであろう。
一瞬で気絶したシャロムを盾にしようとしたゴルド・ネリーの前にフォーが立ちふさがる。
早かった。ゴルドはシャロムを捨て、持っていたスイッチを押す。
フォーは投げられたシャロムを抱き留める。
その隙にゴルドは壁と思われる場所へ駆けて行く。それを追いかけるリゴーラ。
だが、室内が煙に包まれる。同時に数多の銃口が現れリゴーラとフォー達を襲った。
ゴルドは隠し扉を使い部屋から消える。
白い煙と銃口を壊し終わるころには、もぬけの殻となっていた。
残ったのは、フォーと抱えられたシャロム、コイン。そして、リゴーラ。
奇妙な沈黙が支配する中、リゴーラが口を開く。
「ナンバーフォー」
「なんだ」
「今はお前さんを捕まえる気はない。先にゴルド・ネリーを片付ける」
「そうか」
「その二人はお前さんの連れか」
「そうだ。あいつは無事なのか」
「ああ、応急処置をしているが、命に別状は無さそうだ」
「そうか」
ほっと、一息ついたフォー。シャロムの方も気絶はしているが命に別状はない。
それを見ていたリゴーラはポツリと呟く。
「……いい傾向だ」
「は?」
「いや、何でもない。コインと言ったな」
「なんだ。なんだ」
威嚇するようにリゴーラの周りを飛び回るコイン。リゴーラは訝し気な目をしながら言う。
「ゴルド・ネリーはシーワン星行くだろう」
「皇帝の星。皇帝の星」
「そうだ。五年前ゴルド・ネリーが内乱を起こさせ、今のトップは奴の手下だ」
だったらなんだという視線に、リゴーラは告げる。
「ナンバーフォー。奴はホテルの荷物から指輪を持っていったらしいぞ」
「指輪? あっ、まさかあれか! でも、なんでホテルに?」
「それは知らんが、あれはお前さんにとって大切なものだろう」
「コイン! 今すぐシーワン星に行くぞ」
「分かった。分かった」
「ありがとう。ええっと……」
「リゴーラだ。リゴーラ・ラリゴ」
「ああ、ありがとう。リゴーラ」
そう言うと、フォーとコインはシャロムと女を抱えて、どこかへと行ってしまった。
一人立つリゴーラの元に、部下が駆け寄る。
「リゴーラ隊長。よかったのでしょうか。ナンバーフォーの優先度は一番上では」
「いいんだ。それより、俺達もシーワン星に行くぞ」
「わかりました。冷凍バナナはどうしましょう」
「今日はいらん。明日食う」
「わかりました」
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