かくして俺の苦悩の五百日はあっけなく終わったのだった。
沼津平成
かくして俺の苦悩の五百年はあっけなく終わったのだった。
【仮名・勇者】
俺、勇者。
え? もっとマシな名前はないのかって?
鈴木勇者だよ、だから。
え? 鈴木ナントカじゃないのかって?
だーかーら、俺は鈴木勇者だよ本当に、信じてくださいマザー。
まっ、それじゃ俺が仮名だとしても鈴木勇者という前提で話を始めようと思う。
手紙はそんな書き出しからはじまっていた。そんな手紙が、ファンタジーRPGとはなんの縁もない沼津平成に届けられたのは奇跡としかいいようがない。
「まあいいか♪」
沼津平成は続きをめくることにした。
「楽しそうだしね♪」
というわけで俺の名前は勇者となった。
縦から読むと、俺ー鈴江ー熊井ーと、俺の苗字が鈴江であるように思える。確かに俺の苗字は鈴江だったが、それは俺が鈴江妙子のもとにいた時代だけだった。
お前は熊井。まあペンネームだけどな。
まあいいや、それで俺は今何もない世界の中にいるわけ。閉じ込められたんだ。
おまえ、助けに来てくれないか。魔王が、一分に一回、決まって便箋を差し出すんだ。
「契約者をかけ」と。
だから手紙が書けてる。どうだ助けてくれないか。
沼津平成は冒険に出ることにした。馬車の代わりに列車を使って魔王のいる都会に行って、
「やい魔王!」
と叫んだ。
「おい、こんな大通りで俺の正体をばらすな」魔王は笑った。魔王は顔色を変えた。「って、おまえなんで俺が魔王ってこと知ってるんだ」
沼津平成はあの手紙を投げた。「それじゃ、おさきに」
「ああっ、まてーっ!! でも先にこれ読んじゃおーっと」
魔王が手紙を読んでいる間に沼津平成はひっそりとした家のような魔王城に潜り込んで勇者を救出しましたとさ、めでたしめでたし。
え、どうやって救出したかって?
入り口のドアらしき小さな穴を開けただけ。
トン……
音を立てて、五百日間の苦労は報われたわけだよ。
かくして俺の苦悩の五百日はあっけなく終わったのだった。 沼津平成 @Numadu-StickmanNovel
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます