第33話 大好きな人と
今日は夜、蒼良さんの家で打ち上げパーティーをやることになっていた。
なんの打ち上げかは微妙なんだけど……テストもあったしそれのことかな?
玲音ちゃんも誘ってみたんだけど、「生徒会メンバーに囲まれるなんて心臓が持たない!」って顔を真っ赤にして断られた。
約束の時間、19時になってわたしは自分の寮を出た。
鍵を閉めたらすぐ右にある『神楽蒼良』と書かれた寮のインターホンを鳴らす。
「あ、入って~」
「お、お邪魔しま~す……」
中から聞こえる朔人さんの声で、わたしはガチャリとドアを開けた。
わっ、すごい……!
「朔人さんと晴真くん、もう来てたんだね。わあっ、ケーキ……!」
「乃彩ちゃんショートケーキ好きなんでしょ? イチゴもたくさん乗せたんだよね」
「おいしそうです……!」
テーブルに置かれた大きいケーキにわたしは目を輝かせた。
と、キッチンの方からあるものを手にした晴真くんがこっちにやってくる。
「あとピザもあるよ。蒼良が頼んでくれて」
「ピザ……‼ ホントのパーティーみたいです……!」
「喜んでもらえてこっちも嬉しい」
ふっと笑った晴真くんに、思いがけずドキンと胸が高鳴ってしまった。
は、破壊力……!!
「そ、蒼良さんと葉桐さんは……?」
わたしが慌ててそう言うと、晴真くんが「たしか」と言ってスマホを操作する。
「呼び出されたんだよね~……学校関係で」
「え……」
じゃ、じゃあ今日は晴真くんと朔人さんとわたし⁉
う、嘘でしょっ……。
ちょっぴり寂しさがあるけど、仕事なら……しょうがない……。
「なに、乃彩ちゃん。オレたちじゃ不満?」
「そ、そんなわけじゃ……もちろん楽しみです!」
わたしがそう言い返すと、それと同時にガチャリと寮のドアが開いた。
一斉にそっちを見ると、そこにいたのは――。
「蒼良さん!」
「と、楓か。仕事終わるの速いね~」
「は、遅れるはずじゃ……?」
三者三様の反応を見せる中、蒼良さんがわたしの方に近づいてくる。
「お仕事お疲れ様です……!」
「ああ。……疲れた」
寄りかかるようにわたしの方に頭を預けた蒼良さんに、わたしは顔を真っ赤にしながらうろたえる。
「そこ~いちゃつき禁止~! さっさと食べるよ」
「……」
蒼良さんが朔人さんのことをにらんだ気がしたのは……きっと気のせいだよね……?
・・━━・・━━・・━━・・━━・・━━・・━━・・
「おいしかったです……!」
「ね~」
葉桐さんが一生懸命5等分したケーキを食べ、わたしは片付けを始める。
朔人さんたちも手伝ってくれているからはやく終わった。
時刻は20時半。
いろいろ話したり、晴真くんが持ってきてくれたゲームをやっていたら時間が過ぎるのはあっという間だった。
「名残惜しいけど、今日はこの辺で帰ろうかな」
「ま~、来週あえるしね。おやすみ~乃彩ちゃん」
「では僕も帰ります」
「あっ、じゃあまた来週……!!」
わたしは寮を出ていくみんなを送って、リビングに戻る。
「わたしもそろそろ帰りま――」
「待て」
え……⁉
まさかの待ったに驚く暇もなく、彼の手に引かれて、わたしはソファに座った。
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