Chapter7 溺愛のはじまり
第32話 恋は盲目?
資料を抱えたまま、生徒会室の前まで来たんだけど……。
すると中からはカチャカチャというパソコンの音が聞こえてきて、お疲れ様です、と心の中で頭を下げる。
神楽祭の後だから……やっぱり終わってもあとの始末がいろいろあるらしくて忙しいらしい。
ガチャッ。
神楽さ――じゃなくて、蒼良さんと一緒に中に入ると、振り返った朔人さんが目を丸くする。
「乃彩ちゃん⁉ 蒼良と一緒って珍しいね?」
「えっと……その」
「えっ、マジじゃん。どうしたの?」
「あのですね……」
朔人さんの声を聞きつけた晴馬くんも集まってきて、わたしは真っ赤になってうつむく。
蒼良さんはというと、そんな声は無視で、すたすたと自分の仕事場に行ってしまった。
こういうのって……言った方がいいのかな。
で、でも別に言わなくてもいい気が……する。
わたしがおろおろとためらっていると、蒼良さんが立ちあがってこっちに来た。
それで、わたしの肩を抱き寄せて、ぼそっとひとこと。
「付き合うことになった」
かっ、かぐ――蒼良さん……⁉
それから数秒後。
「「はああああああああっ!!??」」
意味を理解した朔人さんと晴真くんの絶叫が、生徒会室の中に響き渡り――。
ガチャ。
「うるさいですよ、……って、蒼良……⁉、と朝比奈さん……⁉」
奥の部屋から出てきた葉桐さんもまた、目を見開いた。
わたしはどうすることもできなくて、真っ赤な顔のまま下を向いた。
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【蒼良side】
生徒会の仕事も一段落し、下校時刻になったので乃彩を先に帰らせ、あとは俺たちで残りを終わらせることに。
乃彩もまだ手伝うって言ってたんだが……夜遅いしさすがにこれ以上はな。
自分の仕事を終えた朔人と晴真、楓が集まって何やら話しているのが聞こえた。
「乃彩ちゃんと蒼良が付き合うっていまだ信じられないんだけど……」
「おれも同感」
「てかあの不愛想な蒼良だよ? 乃彩ちゃんも苦労するなぁ……」
……。
女子と仲いいお前に言われたくないな。
女子とつるんでるやつの彼女の方がよっぽど苦労しそうだ。
「晴真はどうなの? まだ乃彩ちゃんのこと――」
「うん。諦めるつもりなんてさらさらないよ」
「晴真、それは略奪愛というやつではないでしょうか……」
……。
あいつ……。
話しに上がってる恋人の前で堂々と略奪宣言か?
いい度胸だな……。
いつのまにか、隣で黙って二人の会話を聞いていた楓も話に入り始めた。
朔人と晴真はともかく、楓はこういうタイプじゃないのにな。
「というかさ、そういう朔人はどうなの?」
「ノーコメントで」
「はあ? じゃあ楓は?」
「すみませんがノーコメントでお願いします」
「はあっ??」
楓は唯一、乃彩に害がなさそうだったが……そうも言ってられないな。
晴真だってこれから絶対容赦なくアタックしてくるし、朔人も……隙があれば危なさそうだし。
だからって譲る気もないけど。
ぱたりとパソコンを片付け、書類をクリアファイルに入れて引き出しにしまう。
「おい」
「あ、蒼良仕事終わった?」
終わってないが……自分の彼女の話であそこまで盛り上がれたら、さすがに我慢できない。
俺はガタンッと椅子から立ち上がる。
「乃彩は俺の彼女だ。譲る気なんてないからな」
そういうや否や、俺は立ち上がってバックをつかみ、生徒会室を出た。
「蒼良、変わったな」
「ね」
「ですね」
静かになった生徒会室では、まだ3人の影が映っていた。
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