第27話 ドキドキの校内デート?

「次、どこ行く?」

「え、あ、えっと……じゃあ晴真くんのクラス……B組のところで……!」

「分かった」


 短く答えて、B組の方に向かう神楽さん。

 わたしもドキドキしながら、急いで神楽さんの背中を追う。


 どうして、二人で校内を回ることになったかというと……。


 それは、さっきの休憩が終わった、少し後のこと。


 ――『朝比奈いるか……?』


 ――『あ、は、はいっ!』


 ――『この後仕事入ってるか?』


 ――『いえ、とくには……確か自由時間だったと思います』


 ――『……生徒会の方の仕事があって、来てもらいたいんだ』


 ――『そうなんですね! では、10分後……』


 という会話をして、生徒会室に集まったところ。

 葉桐さんが仕事を全部やっちゃったみたいで、結局やることがないからっていって、今は流れで一緒に回ることになったんだけど……。


 ちらっと隣の神楽さんの顔を見る。

 そしたら、急にこっちを見た神楽さんとばちっと視線が絡んだ。


「……どうした」

「い、いえ……」


 神楽さんと、一緒に文化祭を回るなんて……っ。

 ドキドキがっ。


 心臓はバックバクでいつ破裂してもおかしくないよ……!

 

「B組は抹茶喫茶か……抹茶は食べれるのか?」

「は、はい。あ、でも……」


 抹茶は食べれる。でも、ためらってしまうことが一つ。


 神楽さんと一緒に……⁉

 む、無理っ。

 心の準備がっ……。


 わたしが「やっぱりやめましょう」と言いかけた途端、神楽さんが立ち止まって横を向く。


「……朔人とは一緒に入ったのに」

「⁉ な、なんでそれ知って――」

「……詰め寄ったら話してくれた」


 んん⁉

 こ、怖いよ……詰め寄ったって、なにしたんです……??


「……朔人はよくて、俺はダメなのか?」

「う……や、やっぱり行きましょう!」


 ず、ずるい……。

 神楽さんが、やきもち……?

 か、可愛い……。


 って、不謹慎か……、ごめんなさいっ。


「行くぞ」

「あ、はい!」


 すこ~し満足げな声に、わたしは思わずくすりと笑いをこぼす。

 どさくさに紛れてわたしの手首をつかんできた手は、溶けそうなほど熱かった。


 ・・━━・・━━・・━━・・━━・・━━・・━━・・


 抹茶喫茶に入ってからは終始キャーキャー騒がれていたけれど、騒がれている当の本人は完璧スルー。


「おいしかったです……!」

「……だな」


 なんかB組の人が優しくて、けっこう割引してくれた。

 わたしは抹茶ラテを頼んで、神楽さんは抹茶アイス。


 少し分けてもらったけど、すごくおいしかった……!

 ホール(教室だけどっ)で動く人はみんな衣装を着てて、そのクオリティもすごい!


 そろそろ戻るかってなって、わたしたちは生徒会室の方に向かう。


 しばらく文化祭のことで盛り上がっていたけど、生徒会室の前に着いたときに、ふと言われた。


「……朝比奈って、後夜祭誰と見るんだ?」

「え? あ、花火のことですか? わたしは……う~ん、玲音ちゃんとか誘おうかなって思ってます」

「……そうか」


 なぜかほっと安心したように表情を緩めて中に入っていく神楽さん。

 ん……??


 しばらくその行動と言葉の意味を理解して、ようやく答えにたどり着く。

 あ……そういう、こと……?


 ――『一緒に花火を見たいと思う人が、今自分にとっての大切な人なんだって。ほら、最初の花火が上がる前に告白すると、想いが届くみたいなのあるじゃん?』


 玲音ちゃんから言われた言葉が、頭の中で繰り返される。

 でも、何でほっとしたんだろう……。


 あ、一緒に見る人がいるかって心配してたのかな?

 あはは……まぁ、友達玲音ちゃんくらいだし……。


 一緒に花火を見たいと思う人……かぁ……。

 ふと、頭に浮かんだのは……。


「神楽さん……」


 ――『絶対成功すると思うよ、告白』


 ……っ!!


 そんなのわからないけど。


 玲音ちゃんの想いを知ったし、約束したから。


 もう、ここまで来たなら、どんな結果になっても玲音ちゃんが励ましてくれると思うし……。


 告白しよう、神楽さんに。


 今、わたしが抱いている、大切な熱い想いをすべて。

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