第24話 新しい感情……? 【蒼良side】
今日は海の近くにある、最近オープンした『沖島水族館』に来ている。
オープンしてから間もないせいか、常に人の出入りが激しかった。
夏休み3日目。
なぜこんなところに来ているのかというと、昨日生徒会の仕事が終わった後――。
――『みなさん、夏休み中に水族館に行きませんか……⁉』
って。
どうやら、朝比奈が三井と林からチケットをもらったそう。
朝比奈は気づいてないみたいだが、これ、かなり貴重なチケットだ。
先着数十名様とかいう……。
まぁ、三井は家がすごいからな……林もだけど。
「蒼良、今日って乃彩ちゃん来るんだよね?」
「……たぶん」
海を見ながら話しかけてきた朔人に俺はうなずく。
来るって言ってたはず……。
「たぶんって……。もし来なかったら男4人で水族館?」
あからさまに顔をしかめる朔人に、俺も想像してげっそりする。
もともと、こういうところ得意じゃないんだが……。
何が悲しくて男4人で水族館に行かなきゃいけないんだ……。
「というか蒼良、よく来たね。ぜったい人ごみ多いところ苦手そうなのに」
「……朝比奈に言われたんだ。断れない」
「……?? 乃彩ちゃんだからってこと?」
「……世話になってるから」
きっと朝比奈以外の女子に誘われてたら絶対来なかった……。
キャーキャー言われんのも嫌だし、ずっと話してて正直面倒だ。
でも、朝比奈は……。
「あ……お待たせしました……!」
その声に、俺と朔人がほぼ同じタイミングで振り返る。
「っ……」
「乃彩ちゃん! かわい~っ。めっちゃ似合ってる‼」
「そ、そうですか……! 嬉しいですっ……!」
いつもと雰囲気が違くて、大人っぽい感じの朝比奈。
かわいい……。
さっそく二人で盛り上がるのを見て、騒ぎ始めた心臓をしずめる。
って……。
かわいい?
今、朝比奈に対してかわいいって思った……のか……?
女子に囲まれて、確かに客観的に見ればかわいい女子なんていただろう。
でも、こんなに強く思うのは……。
――朝比奈が、初めて?
「蒼良~もう晴真と楓来てるって! 入口の方にいるみたいだし、いこ~」
「……ああ」
朔人が歩き始めたのを見て、俺も後ろからついていく。
すると朝比奈が俺の方に来て話しかけてきた。
「きっと……こういう場所苦手ですよね? 無理やりごめんなさい……!」
「大丈夫だ」
苦手だけど……。別に……。
すまなそうに謝ってくる朝比奈に、どこまで真面目なんだと突っ込みたくなる。
律儀すぎるだろ……。
そんなことを考えていると、朝比奈が「あの」と言って俺の方を見てきた。
「きょ、今日の神楽さん……すっごくかっこいいです……っ」
っ……は……?
ぎゅっと目をつぶって、そう言い切った朝比奈。
赤くなって、小さくなってる。
なん、だよ……。
心臓もバクバク言ってるし、なんだ、これ。
「そ、それだけです……! あの、じゃあ!」
恥ずかしそうにうつ向いて、それからあわててぱたぱたと小走りで入口の方に走っていった朝比奈。
マジでなんなんだ……?
今日の俺、おかしくねーか……?
「蒼良、はやく行きますよ」
「朝比奈さんも待ってるし早く!」
「あ、そんなに急がなくても……!」
「でも~、はやく行っていろいろみたいでしょ? 蒼良~置いてくよー」
「今行く」
ぼーっとしながら返事をして、速足でみんなの方に向かう。
「神楽さん、楽しみましょうね……!」
「……ああ」
ふわりと笑った朝比奈に、俺は一瞬固まりながらもうなずいて――。
「か、神楽さんっ⁉」
朝日奈の手をそっと取った。
「……離れるなよ」
「……⁉」
いつも、朝比奈の隣で案内したのは楓だったが……。
――今日は俺がエスコートさせてもらう。
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