第18話 雨の中で見つけた答え
「誰か~っ! 助けてください‼ ここにいますー!!」
バンバンと小屋を叩いてみるけど、ここは建物と建物の影にある場所。
学園の近くだけど、生徒はいないし、かといって通行人はいないし……。
鍵のロックは……。
外側からのタイプか……。
落ちていた木の枝とかで何とかできないかなぁ……。
近くに落ちていた細くて丈夫な枝を手に取り、隙間から鍵をつついてみるけどびくともしないっ。
どうしよう~。
――『もう二度と神楽さまたちに近づかないって約束したら出してあげる』
神楽さま……神楽さん……?
そっか、やっぱりわたしがジャマってことなんだ。
確かに、わたしがあそこにいることについてよく思っていない人がいるっていうのも知ってたけど……っ。
さすがにここまでされると辛いなぁ……。
さっき小屋に入れられたときに突き飛ばされて、膝を擦りむいちゃったんだよね。
あ~血出ちゃってる。
うう、地味に痛い……。
それから10分くらいが過ぎた。
スマホを見て、時間を確認する。
今は4時半かぁ……。
さっきから涼しい風が吹いていて、快適と言われれば快適だけど……。
今日の服装は白いブラウスに、デニムのロングスカート。
今日は天気がいいって話だったから、羽織るものは持ってきてないよ……。
でも、見ると、大きい雲が太陽を遮っていて、けっこう肌寒くなってきたな。
さ、寒い……!
しかも、ぽつぽつって雨も降ってきたっ⁉
わたし大丈夫かなぁ……というか、あの人たちは戻ってくるのかなぁ……。
とにかく今は雨宿りってことにして、雨やむの待つかあ……。
そして、さらに10分。監禁されて20分。
寒い……!
さっきまでそうでもなかったけど、雨が当たるとそれが冷えて寒い……!
最初は誰か気づいてくれるかなって思ったけど、本当にどうしよう……っ!
雨が降り出してから、人通りも少なくなってると思うし……何より、声も届きにくい……。
しかも、林さんと三井さん、来ないし……。
寒いよ……寒いよ……。
誰か助けて……気づいて……。
痛い。
足の痛みじゃなくて、胸が張り裂けそうなくらい痛くて、辛い。
「誰か―っ……」
助けを求めたその声は、雨の音にかき消された。
・・━━・・━━・・━━・・━━・・━━・・━━・・
さらに10分。
足もしびれてきたし、頭が少し痛くなってきた。
どうなっちゃうんだろうって不安が襲って、手もガタガタ震えてるよ……。
ううん、もしかしたら寒さのせいかも。
ふうって息を吹きかけて何とか温めてるけど、雨でぬれた全身がすごく寒い。
ふらっと、体が傾いてバックからスマホが出た。
あわててスマホを回収。濡れちゃったけど、大丈夫っぽい……?
助けて、誰か……!
そう思った瞬間、わたしの頭にある人の顔が浮かぶ。そして、蘇る。
――『…………困ってたら助けてやるから』
頼ってばかりでいけないのに。
いつまでも優しさに甘えてたらいけないのに。
分かってはいるけど、分かってはいるけど……!
震える手でスマホを起動して、トーク画面を開く。
いつか言われたその言葉に、すがりたい。
その言葉を信じたい。
のばした指が画面に触れる前に、やっぱり罪悪感がよみがえってそっとスマホを閉じる。
ダメ。
だって、ひどいことを言っちゃって、傷つけちゃったんだもん。
わたしに、神楽さんに甘える権利は――ない。
「誰かっ……助けてっ……!」
誰でもいいから。
お願い……っ。
すると、そんな思いが届いたのか、草をかき分ける音がしてきた。
もしかして、林さんと三井さん……?
かすかな希望を持って、わたしは余っている力を振り絞って、小屋のドアの前まで移動した。
「朝比奈!」
「……⁉」
この声は……。
神楽、さん……?
なんで来てくれたの?
なんで見つけてくれたの?
あんなにひどいこと言っちゃったのに――。
探して、くれた……?
「神楽さん……! ここです……!」
「ちょっと待ってろ」
ガチャンッ。
「神楽、さん……!」
鍵が外れ、ドアが開いた。
わたしが神楽さんにお礼を言うよりも早く――いつの間にか神楽さんの腕の中にいた。
「もう大丈夫だ」
そっと、温かい腕の中でつぶやかれたその言葉に。
今まで我慢していた涙が決壊した。
「神楽さんっ、うぁあん、あ、りがとうござい、ます、ごめんなさ、い」
何も聞かずに、ただ抱きしめてくる彼の腕。
この温もりの中にいるときの安心感。
「……心配、させんなよ」
「ごめんなさい……」
「でも、無事でよかった」
「うわああん、うっ、う、ありがとう、ございます……!」
寒さに震えていたからだが、少しづつあったかくなってくる。
さっきまで、すっごく不安で、怖かったけど。
今はバクバクと心臓が高鳴っている。
いつも、そばで助けてくれる神楽さん。
困ってたら、必ず助けに来てくれる。
嘘だけど、あんなにひどい言葉を、神楽さんに言ったのに。
いつの間にか、わたしの中で彼の存在が大きくなっていて。
ずっとこの温もりに包まれていたいと思うほど、わたし、神楽さんのこと――。
好きに、なってた?
ドキドキと高鳴っていく心臓が、静かにそれを肯定した。
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