第7話 そんなの聞いてない!
そしてその後、葉桐さんは一度も迷うそぶりを見せずに学園長室に到着。
うう、いろいろ確認したいけど……今は違う、話の方が優先……!
えいっと気合を入れなおして扉を見上げる、けど……。
あのう、なんか大きくないですか……??
今からここに入るんだよね? 無理——っ!
しかしそんなわたしを無視して、葉桐さんがコンコンと大きなドアをノックした。
奥からは「入ってください」と声がかかって、葉桐さんにうながされるままわたしは中に入った。
うわああっ。
中の装飾はすごく豪華。
白が基調のデザインで、すっごくおしゃれ!
壁に飾ってある絵画とかも高級感がにじみ出ている……!
「朝比奈さん、何度もすまないね。時間がないから少し手短に話すんだけど、まずはそこのソファに座って、さぁさぁ」
「あっ、ありがとうございます……わっ、すごいフカフカっ」
「アハハ、気に入ってもらえたようで何よりだ。では、本題なんだが……」
ゴクリ。
こんなところに呼ばれるなんて、相当な何かが――。
「実は、生徒会に入るにあたって寮が変更となる」
「寮が……変更になる⁉」
「そうなんだ。入学式でも話したが、生徒会特待生の特別寮は、『星乃館』の最上階。君も、生徒会に入ることになったら、寮がそっちに移動になる」
入ることになったら、ってわたし、もう入るって言っちゃったから……。
でも、寮も変更になるなんて聞いてない……!
……かといって、今の寮に思い入れがあるわけじゃないけど……。
昨日、荷物を整理したばっかりの部屋。
キッチンはまだ使っていないし、冷蔵庫なんて何も入れていない。
「あの、一般の寮と特別寮は何か違うところが?」
「まぁ、違いがなきゃおかしいんだけどね。大きな違いと言えば、広さが大きくなるかな。1.5倍くらい大きくなる。あとは、家具とかが特別版になるかな?」
「1.5倍!? それに特別版……っ」
「いいでしょ?」と笑う学園長さんにわたしはうなずく。
生徒会、きっと大変だけど絶対いいじゃん!
友達とは寮が離れちゃうけ、ど……。
んんっ!?
「あの、生徒会メンバーって確かわたし以外全員男子……」
「そうだね」
「デスヨネ―……」
「さすがに嫌だと思うから、いちばんはじっこの部屋を提供するよ」
いちばん端……。っていうことはまぁ左右から挟まれるよりもいいのかな?
学園長さん……ここはしっかり分けてよ……。
「で、どうかな? 本題はこのことだったんだけど」
「どうって……。そこしかないのなら、そこで大丈夫です」
「そう言ってくれてありがたいよ。じゃあ、今日か明日のうちに荷物移動できる?」
「今日か明日ですか……⁉」
帰ってからってことだよね……。
でも、生徒会のみんなにもあいさつした方がいいだろうし……。早めの方がいいよね。
「分かりました」
「よし、じゃあよろしく。時間取ってすまないね。じゃあ」
「は、はいっ!」
ばたり、と大きなドアを閉めてふうっとためていた息をついた。
緊張したけど……それよりも寮の話の方がびっくりだったなぁ。
でも、最上階ってことはきっと景色もきれいだろうし……。
よしっ、まずは荷物をまとめよう!
日にちが経っていないから、とくにたくさんあるってわけじゃないし。
すぐに終わらせて、しっかり挨拶しよう!
改めて気合を入れ、わたしはクラスの方に戻ったのだった。
このときは迷わず無事に教室に帰ることができた。
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