第13話 優しさに甘えて
「……ぅ……」
ど、こ……?
うっすらと目を開けると、そこには真っ白な天井。
横を見れば、わたしが今まで愛用してきた目覚まし時計。
じゃあここは……わたしの部屋?
あ……そうだった、少しだるくて……玲音ちゃんと一緒にわたしの寮まで来て……。
で、どうなったっけ?
ぼんやりとしている中、ガチャという音が聞こえたのち、「乃彩ちゃん、起きてる?」という声がした。
玲音ちゃん……?
片手にお盆をもって入ってきたのは玲音ちゃん。
今日は夜一緒に食べるはずだったのにこんなことにまで巻き込んじゃってごめんね……。
「食べられる?」と言われて目の前に差し出されたのは、ふわふわ卵が入ったうどん。
ありがとう……。
おいしそうなにおい……!
わたしがずずっと食べ始めたのを見て、玲音ちゃんはベットの横にある椅子に座りながら、「生徒会役員の部屋って豪華だねー」と呟いている。
「玲音ちゃん、ごめんね……」
「だいじょーぶ! あっ、でも私そろそろ帰らないといけなくて……ごめんね」
「ご飯だけでも作れてよかったぁ」って言って笑う彼女に、心の中でごめんと謝る。
ホント、いつも頼ってばっかりだなぁ……。
「でもね、実は頼んであるから!」
え?
誰に……何を……??
ガチャリ……。
「入るぞ」
えっ⁉
「ちょうどいいタイミング―っ!」と言って笑う彼女に、わたしは状況が理解できないまま、玄関の方に目を向ける。
最近聞いた声と、このオーラ……!
「がぐらざんでずが……?(神楽さんですか……?)」
「……お前の友達に頼まれた」
チラリとみれば、残りの生徒会のお仕事が終わって来てくれた感満載の神楽さんが立っていた。
「神楽様が来てくれたら安心だね」と言って帰っていく玲音ちゃんを見て、わたしは改めて神楽さんに謝った。
「あの、ずみまぜん……」
「気にしてない」
ううう……本当に反省してます……。
こんな大事な時期に……。
……というか……。
「神楽さん……なんでわたしの看病に……? ……女嫌い、と聞いていて……別に来なくても……」
「……恩がある」
「え?」
恩がある……って、わたし何かしたっけ?
うどんを食べながら、今までのことを思い返すけど思い当たるものがない。
ひとりで考え込んでいると、神楽さんがぼそりと言った。
「生徒会に入ってくれたことだ」
「え……そんなことで……ですか……?? でも、女嫌い……」
「お前なら大丈夫だ」
そう言って小さく笑った神楽さん。
あんまり見せない完ぺきスマイルにドキュンと心臓を撃ち抜かれる。
反則です、その笑顔は……。
うう、心臓が何個あっても足りない……!
わたしだけって……?
あ、生徒会で一緒に仕事をさせてもらってるし、確かになれてるのかな……?
そうだとしても嬉しい……!
その後もズルズルとうどんを食べて、時折神楽さんの言葉に相槌を打つ。
特に会話がたくさんあるってわけじゃないし、逆に黙っている時間の方が長いかも。
でも、すっごく心地よくて、安心感があって……。
「ふわぁ……眠くなってきちゃいましたね……こんな時間……」
「寝るか?」
「そう、ですね……」
もう一回ふわっとあくびをして、近くのテーブルにうどんの器を置いた。
おいしかったぁ……。
と思っていたら……。
ふわっ、と目の前に神楽さんが来て、おでこに手が当てられる。
「かっ、神楽さん……⁉」
「熱……まだあるな。今日はゆっくり休め」
突然のことすぎて追いついていかない。
でも、今、神楽さんがわたしのおでこに……。
たった一瞬だけれど、その感覚が残っているような気がして、そっとおでこに手をやった。
ずっとドキドキしてる。
分からなかった神楽さんのことが、少しずつ少しずつ分かってきた。
ぼんやりとする頭の中で、「おやすみ」という声が聞こえた気がして――。
その声につられるように眠ってしまった。
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