第2話 真面目な副会長さん?

『えーでは、新入生の皆さんは体育館に移動を始めてください』


 近くのスピーカーからそんな放送を聞き、わたしはどうしようかと頭を抱えた。

 えっ、もう……??

 10分前くらいに校舎の中に入って、案内されたところに来たんだけど……確かにさっきから同じ制服を着た人が見つからない!

 もしかしてわたし遅れた?


 一瞬そんな考えがよぎったけれど、校門で引き留められている時に周りに人はたくさんいたし、遅刻ってわけではないと思う。


ということは。



「迷子……」



実は、わたしは自他ともに認める方向音痴。

それがこの広い学園に着たらどうなるかなんて最初から分かっていたはずなのに!


がーんと落ち込みながら、トボトボと歩いていた時だった。


「そっちじゃないです。荷物はここに置いてもらうのがいいと思います。ん……まさか……」


 へっ……??

 その声に振り返ると、今度もまたまたイケメンさん……!

 深緑のメガネをかけていて、すっごく知的な雰囲気を感じるよ……!

 ん? ネクタイ……青色?


 あなたも同学年ですか……!


 まさかこの学年にこんなイケメンさんがたくさんいるなんて……!


 って、そうじゃない!


 誰、この人……?


「あの、あなたは……!」

「……ハッ、すみません。僕は副会長の葉桐はぎり かえでです。以後、お見知りおきを」

「あ、ハイ……。って、副会長さん……! 同学年で? 副会長さんっ……⁉ すごい……っ!」

「考えたことが言葉になってます……。……あの、あなたは1年A組の……朝比奈さん……ですよね?」


 なんで名前を⁉

 この学校の人は私のこと全員知ってるの?


 躊躇いながらもうなずくと、めがねさん……じゃなくて葉桐はぎりさんが「なるほど」と言ってわたしの顔をじろじろと見てくる。


 なんか変かな? そんなイケメンさんにずっと見られたら心臓が持たないよ……!!

 まっすぐな視線に耐えられなくなり、ぎゅっと目をつぶる。


「もしかして迷子ですか?」

「あ、ハイ……入学式の会場までよければ案内……」

「はい、では案内します。あ、まず先に荷物を置く場所ですが、教室はこの後みんなについていけば分かると思うので荷物だけとりあえずここに置いておいてください。あとで僕が1年A組に届けます」

「えっ、あ、ありがとうございます! ちょっと待ってください」


 急いで指定されたロッカーにわたしは荷物を置く。

 なんかロッカーの位置高くない?

 背伸びをして指先でちょんと押して入れる。


 でもしっかりは入らなくて――。


 ドサァァッ!


 カバンの痛みを覚悟して……。


「痛――――っ……く、ない?」

「これ、入れておきます」


 うしろからわたしのカバンを支えてくれていたのは……葉桐さん……?


 なんてことないように後ろからやってるけど、これ!

 すごい近い!

 近いです~~っ!


「あ、の……っ! 距離が! ななななんか近い気が……??」

「ア、すみません……。では、案内します」


 きりっと副会長さんの顔に戻った葉桐さんは、前を歩いて体育館まで案内してくれる。

 うー、わたし、本当にどこ来ちゃったんだろう……?


「そういえば、ここの生徒会長さんって……」

「いずれ分かります。近ければ、今日の入学式できっと」


 入学式で……会える……?

 どういう人なんだろう、ちょっと気になるかも……?


 ワクワクしながら、わたしは黙って葉桐さんの後についていった。


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