第6話
湊さんが会社に行くのを見送ってすぐの事だった。
ポケットに入っているスマホが突然鳴り始めた。
私は一瞬驚いて、急いでスマホを取り出した。
画面に表示された名前を見て、私は少し緊張しながら電話に出た。
「もしもし、お母さん?電話かけてくるなんて珍しいねどうしたの…え、おばあちゃんが?分かった、すぐ行く!」
お母さんの声が緊迫していて、私は心臓がドキドキと早鐘のように鳴り始めた。
電話を切ると、私は急いで湊さんに連絡し、事情を伝え実家に向かった。
実家に駆け込むと、足に包帯を巻いているおばあちゃんの姿が目に飛び込んできた。
私は一瞬、息が詰まるような感覚に襲われた。
「おばあちゃん!」
私はおばあちゃんの姿を見て涙がこぼれそうになった。
「彩花久しぶり、元気してたかい」
おばあちゃんは笑顔で私を迎えてくれた。
「おばあちゃん、階段から落ちたって聞いたよ。大丈夫なの?」
私は心配でたまらなかった。
「もう、あの子は昔から大袈裟なんだから、骨をちょっと折っただけだよ」
おばあちゃんは軽く言ったけど、私はまだ心配だった。
「ちょっとって、ほんとに大丈夫なの?」
私はおばあちゃんの手を握りしめた。
私に心配かけないために、嘘ついてる可能性だって、、
「足以外どこも何ともなってないから安心しなさいな」
おばあちゃんは優しく微笑んだ。
「頭打ったりしてない?」
「してないよ。何も無いから入院せずに今ここにいるんだから」
おばあちゃんの言葉に少しだけ安心した。
「病院に行って、ちゃんと診てもらったんだよね」私は念を押すように尋ねた。
「診てもらったよ。もう、彩花も母親に似て心配性なんだねぇ」
心配しないわけない。
「そりゃ心配するよ、何も無くてよかった…あ、そっか、足の骨は折っちゃったか」
でも、命に別状はなくてよかった。
「ごめんね、気が動転して彩花に電話しちゃった」
お母さんが申し訳なさそうに言った。
「ううん。電話してくれてありがとう」
「湊くんは?」
おばあちゃんが尋ねた。
「湊さんは最近忙しくて、私一人で来た」
「久しぶりに湊くんの顔を見たかったけど、残念」おばあちゃんは少しがっかりした様子だった。
「おばあちゃん、落ち込まなくてもまた今度会えるよ」
「今日泊まってくでしょ?」
お母さんが尋ねた。
「うーん」
私は少し迷った。
家事のことも、最近全部湊さんに任せっきりだったのに、湊さんは快く受け入れてくれるだろうか。
「せっかくここまで来たんだし、泊まってきなよ」お母さんの言葉に、私は頷いた。
「湊さんに聞いてみる」
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