閑話「イリスから見たシギ」
──見た事の無い男の子──
それはいつもの、巻き込まれないと思っていた災難だ……
(またあいつら……もう碌なスキル持ちが居ないからやらないって言ってなかったっけ?)
だけど、話してる内容を盗み聞きしてれば、念の為とか抜かしてるし……迷惑千万なんだけど!
特に、今は村の人たちがあたしを除いて買い出しとか溜め込んだ素材を売りに出掛けているから留守はあたししか居ない……そりゃあ足腰が弱くなった爺ちゃん婆ちゃんは残ってるけどさ?
そんなこんなで憤慨していると、ゴミスキル持ちと鼻から相手にされてない、見た事の無い服装の男の子が居た。
(誰だろう?)
なんとはなしに見ていると、
「それより、此処って何処なんだ?」
……と呟いているのが聞こえてきた。
(え? ランダム召喚ってそんなに遠くの人は巻き込まない筈なんだけど……)
でも、明らかに此処が何処だか分かってない感じでキョロキョロしている。あたしはすぐ村に戻ろうと思ってたんだけど、あの男の子が気になって暫く様子を見る事にした……
◆◇◆
「あの……すみません」
話し掛けようかどうしようか悩んでいると、向こうから話し掛けてきた。うちの村には同世代の男の子が居なかったのでちょっと緊張……19歳で女の子って言う歳か? って突っ込んだ
「あ……はい。何でしょうか?」
念の為、お淑やかモードで対応する。地全開で話すとね……多分引かれるし。
「あの……此処は「日本」……ではないのでしょうか?」
ニホン? そんな名前の村、あったかな? んーー……記憶には無いなぁ……よっぽど遠くから引き寄せられたのかな?
「いえ、「ニホン」という村の名前は聞いた事はありませんが……」
さすがに知ったかぶりは不味いよね……って事で、正直に返したよ。希望を持たせておいて、上げて落とすのは悪い事だし。
「そ、そうですか……どうやって帰ればいいんだろう?」
どうやら相当遠くから巻き込まれた模様……連中はとっくに居なくなってるし、残ってるのもあたしとこの子だけだ。あたしは仕方ないなぁ……と思い、
「宜しければうちの村に寄って行きませんか?」
と、柄じゃないけど救いの手を差し伸べた。いやだってさ……このまま残して村に帰った後、無残な死体で……とかなってみ? 無念でゾンビになって徘徊されでもしたら……怖っ!
「い、いいんですかっ!?」
「はい……この辺の道に慣れてますし、宜しければ!」
見た感じ、そこそこ誠実そうだし……多分大丈夫!……だと思う。名前は「シギ」かぁ……え、歳は18ぃっ!?……あたしと1つしか違わないじゃない! 童顔っぽい顔に騙されたぁっ!
所持しているスキルはスキルコピー……って連中の1人と同じなのか……覚醒したばかりって事はまだレベル1よね?
試しにスキルコピーを使ってもいいか聞かれた。今持っているスキルは殆どがレベル1より上なので失敗するだろうなと思ったけど許可した。だけど……
「え?」
「どうしたの?」
「あのさ……」
「うん?」
後ろを振り向いてシギに何があったかを確認すると……
「体力上昇(小)パッシブスキル……って、覚えてる?」
「あ……れ? あたし、そのスキル名、言ったっけ?」
シギは頭を振る。言ってないよねぇ……
「うっそぉーー……幾らランダムでも、レベチのスキルはコピーされない筈なのにっ!?」
体力上昇(小)はレベル3のスキルだ。レベル1のスキルコピーじゃコピー出来ない筈なのに……何だかムカついて足早に歩き出すけど、彼も問題無く付いて来る。
(本当にコピー出来てるのね……一体どういう事かしら?)
あたしは彼のスキルに興味が湧き、それ以上に村では余り見ない態度と性格の彼そのものにも興味が湧いた……まぁ、まさかこちらからプロポーズする事になるとは、この時は夢にも思ってなかったけどね?(苦笑)
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