その20

──異世界7日目 その3──


グアウッ!


ギャリインっ!


 爪が伸長し、突進して来たファングボアの頭部を叩いていなすベンケイ。


「うわぁ……凄い迫力。ベンケイ、俺降りた方が戦い易くないか?」


 だが、ベンケイは頭を振り……そのままで居ろと言う様にチラッとだけ視線を向けて来た。


「分かった。だけど振り落とされるかも知れないから、一つだけ魔法を掛けさせてくれな?」


 シギは総合馬術スキルに内包されていた魔法スキルを発動した……


「落馬防止……それと、騎乗対象体力上昇」


 途端、ベンケイの体躯がビルドアップし……唯でさえ筋肉ムキムキな熊ボディが益々マッスルに成る!(笑)


グアアッ♪


「うおっと……おお、立ったら背中から勝手に都合がいい位置に移動するんだ……」


※丁度首の後ろ辺り。見えない鞍に乗ってる様な感じになる


◆◇◆


 それからは暫くは対等なド突き合いだったが、色々と抜かれているボアの方が早く疲弊し……やや怪我をこさえたが、結果はベンケイの勝利に終わった。いや、サポートしてるテイマーが居るのに負ける筈は無いが……


「お疲れさん、ベンケイ」


ぐああッ♪


 ベンケイの実力を測るのに、余り指示を出さずに好きにやらせていたが……


「こりゃ毛皮は傷だらけだし、牙も同様だし……持って帰って使える所があるか、見て貰うしかないかぁーー」


ぐる……


 落ち込むベンケイ。まぁ、今回は実力を見たかっただけだしな。ポムポムと頭を撫でながら、


「次はちゃんと指示を出すから。お互い初心者なんだし、頑張ろうぜ?」


……ぐるっ♪


 初心者と言えばレベルアップしたんだろうか?……と気になり、ベンケイのステータスを見てみた。まぁ、変化してるのはレベルの数値くらいだろうけど……



【ステータス】

◎名前:ベンケイ

◎種族:ファングベア

◎年齢:4

◎性別:オス

◎職業:天然の狩熊(狩人準拠)

◎特殊:シギの従魔(忠誠心向上中)

◎技能:

「狩人スキル一般」

「身体強化スキル一般」



「……あれ?」


 レベル表記が無い。代わりに……


「年齢が増えてないか?」


 確かに前見た時は3歳だった筈だが……


「ひょっとして……動物系ってレベル、イコール……年齢だったりするのか?」


ぐあう?


 いや、流石に質問が高度過ぎたのか、ベンケイは首を傾げるしかなかった……(苦笑)


◆◇◆


コーン……コーン……コーン……


 用意した木こりの斧で、所定の部位を3回軽く叩くと……


〈伐採完了しました。収納枠アイテムボックスに収納しますか?〉


 ……と、毎回聞いてくるので頷いて収納する。最初は声に出して答えてたんだが……面倒になったので、ね……(苦笑) 尚、質問そのものは省略不可と言われた。数少ない出番だからと言われたらね……いや、まぁ……


 ベンケイ? ご飯食べた後、適当に警戒して貰ってるよ。今は見える所で寝っ転がってるけどな(笑)


「さて……これで大木10本か……細かいパーツ用に小さいのも欲しい所だが……」


 そろそろ戻らないと心配されるかもな……と、周りを見れば既に地平線へと近づいた太陽は木陰で見えなくなっており、山の中は暗くなりつつあった。


「……しゃーない。そろそろ戻るか」


ぐあう!


 そうだな!……と同意したベンケイは、のそりと四足よつあしで立ち上がり、ぶるぶると身体を揺すって諸々を払い落とす。


「ははは……そんなに慌てなくていいぞ? 浄化クリーン!」


 生活魔法スキルの清潔魔法を発動させ、ベンケイの身体から汚れが払拭される。


ぐあ!


「いいよ、気にすんな! じゃあ宜しくな?」


 背を低くしたベンケイの背中に乗り、シギが落馬防止を掛けるまで待ってから、ベンケイは全速力(但し、木々はちゃんと避けた)でチュウフク村へと帰還したのだった……!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る