その18

──異世界7日目 その1──


 流石に性急な気もしたけど……イリスさんと俺は……結婚した。い、いや、まだ地球で言う婚約と結婚の間くらいの間柄になったって聞いたけど……僻地の村だから大した式も挙げられないし、じゃあってんで式場のある街まで行って、そこで……って事になった。


「何々?……あたしとくっつけられて後悔してる?」


「いや、こんな可愛らしい人と結婚なんて……俺でいいのか……って思っただけ」


「かっ……!?」


 皮肉を言われたので真顔で迎撃してみた。そうすると、分かり易く動揺したイリスさんは顔を赤くして……あ、そっぽ向いた。


「何か用事が有ったんじゃないの?」


 放っておくとへそが曲がりかねないので、本題に入れるように誘導してみる。


「……あ、そうそう。例の街なんだけどちょっと遠いのよ。でも、うちの村には馬車なんて気の利いた物はなくてね……」


 せいぜい、あっても荷運び用の荷車が数台あるくらいだそうだ。それでも牽くのは馬ではなく、ロバだそうだ……


「まぁ、最悪はベンケイに惹かせてもいいかもな……あいつ体力も腕っ節もあるし、何より並の害獣や盗っ人より強いし(笑)」


 何より、主人であるシギを助ける為には全力を尽くしてくれるだろう……


「でも、荷車は村で必要最低限しか確保してないから……」


「借りるのは無理か……」


「多分ね……」


◆◇◆


 無けりゃ作ればいいか……と、言う事で……


「先ずは木材を伐採か……」


〈山の主スキル内の生産職カテゴリーを開放しますか?〉


「え?……木こりスキルとかか?」


〈はい〉


「じゃ、じゃあ頼む」


 ……て事で、伐採用の木こり斧などを借りて出掛けるシギ。その際、道具類は限定的だが収納枠アイテムボックスも使えるようになっていた……


「え?……それって木こりスキルの?」


「いや、どうやら林業職スキルというらしいが……木こりスキルは内包されているらしくてな……その関連物と一般的な物の範疇なら収納出来るようだ」


 要は林業で扱う道具類全般と、伐採した木や端材、作業する上で必要な消耗品(水や食料、代えの衣類、怪我をした時に必要な救急医療品など、考えられる物全て)は収納出来るようだ……しかも、時間停止と重量はゼロ、収納容量は無限……とまではいかないらしいが。割と大容量の様だ。


「そんな訳で、馬車の材料を採ってくるよ」


「分かった……無理はしない様に!」


 と言う訳で、弁当を受け取って早速アイテムボックスに仕舞い、朝の散歩から戻って来たベンケイを連れて出掛けるシギだった……


ぐるぅっ!


「え? 背中に乗れって?……あぁ、いい木の在り処を知ってるのか!……そいつは助かる!」


 熊に乗り、出発するシギ……果たして、無事に戻って来れるのだろうか?(変なモノに遭わずに……(苦笑))

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