その17

──異世界6日目 その2──


 外に出るとチュウフク村の連中が騒いでいた。何なら臨戦態勢と言ってもいい。


「いつもこんななのか?」


「いつもはあたししか居ない時を狙ってるからねぇ……初めてかも?」


 お留守番の悲しい定めって奴かな?……と生温かい目で見てると、村はずれに数日前に見た……怪しい連中を発見。ザワッ……と、たちまち村人たちの殺気が膨れ上がる!


「オリバーは弱いんだから、殴りに行こうだなんて思わないでよね?」


 イリスさんにそう釘を刺され、


「……ちっ。分かってらいっ!」


 と、舌打ちをしてそっぽを向くオリバー。まぁ、うん……弱いなら自重しないとね……何て思ってたら怖い顔を向けられた。何も言ってないのに何で考えてる事がバレたんだ?……解せぬ。


◆◇◆


「あぁっ?……んなの俺らの勝手だろうがっ!」


「そうだそうだ!」


「迷惑掛けてネーしよ!」


「そうだそうだ!」


 ……いや、取り返しの付かない迷惑は掛けられてるんだけどな?……現在進行形で!


 村人たちとスキルテイカーたちとのやり取りで、焦れったい思いをしつつこの鬱憤をどう晴らそうかなどと考えていたシギ。


〈ランダム召喚スキルに依る召喚に於いては、被召喚者の存在していた次元座標は失われます……〉


「え?」


〈つまり、どんなに願った所で生まれ故郷に戻れる可能性は……兆が一の可能性は無い事も無い訳ではありませんが〉


 あぁ……矢張りそうなのかと、心の何処かで縋り付いていた、可能性は絶たれた……恐らくは、生きてる間に戻る事は出来ないのだと……


〈現在、射程距離内ですが。奪いますか?〉


 何をか? 勿論奴らの「スキル」だ……シギは、スキルテイカーたちの、所有スキルを「取捨選択して」奪い去った。今後、悪事を働けない様にと……



「鑑定スキル」

「ランダム召喚スキル」

「スキルコピー」

「スキルペースト」

「転移スキル」

「詐欺スキル」

「詐称スキル」

その他、各種スキル(多くて書き切れない)



「なっ!?」


 スキルテイカーたちから驚愕の声が上がる……が、何か致命的な言葉でも漏らしたのか、途端に大騒ぎになる。


「フザケるな!」


「お前らのせいで!」


「記録は取ったかっ!?」


 村人たちは鬼の首を取ったかの様な騒ぎになり、聞き耳を立ててると……


「どうやらお上に引っ立てられるっぽいわね」


 イリスさん曰く、そういう事になるらしい……


「……これで、あいつらも……成仏してくれるかもな……」


 こちらでもそういう表現するんだな……


「そうね……とうちゃん、かあちゃん……」


 手を合わせながら祈るイリスさん。え?……そゆ事?


 その時、薄っすらとイリスさんの左右に男女の影が現れ……ポンポンとイリスさんの肩をたたいてから、こちらを見る。まるで……後は頼んだよ? と言ってる様に……


(マジかぁ……御両親公認かよ……)


 などと頭を抱えるシギ(笑)


 男なら、腹を決めなあかんだろう!

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