その14

──異世界5日目 その2──


〈ファングベア レベル3のテイムに成功しました〉


「お、おう……」


 あっさりし過ぎじゃね?……とは思ったが、レベルマックスなら当然か……と思い直して次は名付けかなと考える。


〈良ければ名付けを。名付けをする事により、よりテイム対象との親和性が向上します〉


「……それって上位種族にパワーアップしたりってこと?」


〈そのような事はありませんが、呼び易い名前を付ける事で親密になり……また、助けになる事も増えるでしょう……〉


 あぁ、そういう事ね……まぁ、最初の子だし……と思いつつ、目前のファングベアを見る。先程見た時は、精悍と言うよりは怖い魔獣!……って雰囲気だったが、今はそんな雰囲気は無くなり……気の抜けたマスコットみたいなまでもある。


「うーーん……じゃあ、「ベンケイ」で」


 イリスさんが「誰の名前?」って顔をしてるけど、ファングベアの名付けは終わったようで、ステータス表にはきっちりと名前が記録されていた。



【ステータス】

◎名前:ベンケイ

◎種族:ファングベア

◎年齢:3

◎性別:オス

◎職業:天然の狩熊(狩人準拠)

◎特殊:シギの従魔

◎技能:

「狩人スキル一般」

「身体強化スキル一般」



「へぇ……動物にも職業とかあるんだなぁ……」


「んな訳無いでしょ!……ったく、初っ端からテイム成功させるとかフザケてんの!?」


 ど、どうやらスキル提供者はご機嫌斜めらしい……ここは一つ、お礼をすべきだろう……多分。


「イリスさん……テイマースキル、コピーさせてくれて有難う!……お陰でこんな可愛い子がテイム出来たよ!」


 そんな礼に不機嫌さが消え、照れ隠しに


「そ、そ〜お?……ならいいのよ!……こんど、あたしにも貸しなさいよね?」


 ベンケイを見詰めて満更でも無さそうなイリスさん。チョロ過ぎないか?……とは思ったけど、取り敢えずはスルーして……何に使うんだろう?(抱き枕……じゃデカイよな。添い寝でもして貰うのかな?)


◆◇◆


 取り敢えずはこちらの言葉と言うか、何を言ってるのか意思がある程度通じる様で、イリスさんと2人でアレやっちゃいけないこれやっちゃいけない……などと禁則事項を叩き込みながら……歩くのがかったるくなって、現在は抱えてもらってる。


 一応、最初に生活魔法スキルの浄化クリーンで清潔にしたので問題は無い筈。まぁ、引っ掛かってた木の枝葉などの大物は自分で払って貰ったけど(苦笑)


ドスドスドス……


「そろそろチュウフク村だな……あ」


 道中、ランダムエンカウントがあると面倒だったので、掛けておいた隠蔽全盛りセットを解除した。そしてひとっ走り走って貰って攻撃しないようにとイリスさんに頼もうとして、


「何イキナリ解除してんのおっ!? バカバカバカ!」


 ……と怒られた。いや、言うまでもなく矢がビュンビュン飛んできてるし(ベンケイは平気で回避かイリスさんが降りて空いた腕でパリィしてた)村の男たち総出で迎え撃ってるってね……


「うん、ゴメン。後で無事に戻れたら一緒に謝ろう?」


 と、お願いポーズで謝ったら、


「クッ……惚れた弱みか……」


 って呟いてた。やっぱ結婚しないと駄目なのかなぁ?

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