その11

──異世界4日目 その1──


「村の人たちっていつ帰って来るんだ?」


「いつもならそろそろなんだけどね……隣町まで行くなんて言ってなかった筈なんだけど……」


 隣町と言っても日本の都会とは大違いで歩いて数分……なんてことは無い。街道沿いに歩いても最低でも数日から数週間はザラにかかるらしい……


(此処の立地の場合、その街道に辿り着くまで数時間……俺の足だと地図があっても1日がかりだとか……マジかよ……)


 尚、交流と物々交換も兼ねて隣り村には寄るとの事……だったら、呑み会とかで遅くなってるだけじゃないか?……と言ってみたら、


「あの呑ん兵衛共が……戻ったらとっちめないと……」


 ……と、変な火を着けてしまった模様。多分前にもやらかしたんだろうな……俺知ぃ〜らねっ!(苦笑)


◆◇◆


「戻ったぞ! イリスぅーー! ちゃんとお利口さんにしてたかぁっ!?……ック」


 うわぁ……瓢箪から駒……じゃないっけ? 棚からぼた餅……も何か違うな。兎に角、冗談混じりに出た言葉が、実は正解を……と、イリスさんから怒りのオーラが……ちょまっ! 弓を引かないっ! あれは狩りの対象じゃないですよっ! ドウドウ……


シャっ!


びいいいんっ……


「うわ本当に撃ちやがった!」


「避けてなかったら眉間にズドンですねぇ……」


「うむ、見事だ」


 いやあんたら、何冷静に評価してんですかっ!?


「腕を上げたわねぇ……イリス!」


 男性陣に続いて女性陣も戦闘種族っぽい台詞だし……orz


「所でこちらは?」


 そういやイリスさんが暴走してたから自己紹介を忘れてたな……


「えっと……ランダム召喚に巻き込まれた、異世界人のシギと申します」


「ランダムって……まだあいつら居るのかい?」


「え、えぇ……皆が居ないタイミングでやらかしてるのよ……」


 イリスさんは目を泳がしながら、答え辛そうにしている……


「あんた、この前は「自分のスキルが出尽くしたから、もう来ないんじゃないか?」って言ってたわよね?」


「えぇ、まぁ……」


 そう思っていても唯の推測であり、犯罪者が満足しない限りは延々と続けられるだろう……「スキルコピー」を持っている限り。


(あ……そう言えば)


 そこで一つ思い付いた。だが、動物(だよな? 猪って名前に付いてたし)から「スキルを奪う」事ができたのだ……悪事を働く人物からスキルを奪えば、犯罪を犯す事が出来なくなる。だが、倫理感と言うものがある……この世界でそんなことをしても大丈夫だろうか?……と。

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