その10

──異世界3日目 その2──


「水汲みでボアに良く遭遇するのかって?……そんな訳無いじゃん!」


「いや、昨日初めてでイキナリ遭遇しましたけど?」


 ……と言う訳で、昼と夕飯の仕込みでほぼ使い切った水瓶2号くんの水を汲む予定だったけど、急遽「生活魔法スキル」の「水召喚」を試す事に……


 いや、レベル1だと一口くらいの分量しか出ないので、ちょっと喉乾いたな……とか、ちょっと汚れたので……くらいにしか使わないらしい。便利は便利なんだけど、水瓶一杯に……となると水属性魔法の同名魔法のが使い勝手がいいってね……


「じゃ、まずは洗うか……」


 家の外に持ち出し、ゴロンと静かに横倒しして……底側を上にする。そのままだと口側が見えないが、構わず


「水流召喚(但し、水瓶の内部の汚れが落ちる程度で)」


 すると、どう解釈したのか……水瓶の内側全体に


プシャー……!


 ……っと、シャワーの様な細かい水流が当たり、満遍なく洗い流していく……


「終わったかな? じゃ、浄化クリーン


 水流に依る大雑把な洗い流しを終えた後、浄化で綺麗にしていく……これは聖属性魔法スキルの下位互換で汚れを落とすのが主目的、らしい。レベルマックスだとアンデッドくらい浄化しそうだけどね?


「ラスト……微風ウィンド(温風程度に調節して)」


 水瓶の下半分に風を送り込み、中の水分を飛ばす……蒸発を待ってたら時間外掛かり過ぎるからだ……流石にそのままだと矢張り時間が掛かるので、ちょっとした工夫はさせて貰っているけど。


 こうして水瓶を洗ってから、元の位置に戻すと……


「身体に良い水よ……水瓶一杯に永久とこしえに湧き出せ!」


 と調子に乗って唱えたのだが……


◆◇◆


 翌朝……朝飯の後片付けを終え、水瓶を覗いた時だった。


「あれ?……確か少し使ったよね?」


 水瓶の水を洗面器に数杯くらい使ったのに、減ってない……と言われた。足した?……との問いには、いいえ?……と返したが。


 そしてイリスさんが狩りに行く(ただし、鳥や小型の獲物を対象に)と言うので、水筒に水瓶の水を入れて持ってって貰う……俺もその辺をぶらつこうと水筒を持って出掛ける事に……これである程度水量が減ったので検証可能だ。


 ちなみにお弁当は乾燥させた野苺だ。ドライフルーツみたいなもんだな……ま、まぁ……食えないよりゃマシだが。念の為、黒パンも持って来たけど……これ、クソ硬いんだよな……


◆◇◆


 検証結果……俺より早く帰ってたイリスさんに先に言われましたよ、ええ……


「あんたが居ないのに勝手に水が増えてるわよっ!? ど、どうなってんのっ!」


 ……と。どうなってんだろね?(苦笑)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る