その7

──異世界2日目 その5──


「じゃあ……何して貰おうかな?」


「え?」


 ニマニマとするイリスさん。いや、一宿一飯の恩があるし、タダ飯喰らいになるつもりはないけど……


「イキナリ狩りは無理よねぇ……」


「いやいやいや……玩具の弓なら引っ張った事有るけど……」


「玩具ならあるんだ……ひょっとして、狩りとかしない地方の出身?」


 などと、根掘り葉掘り聞かれたんだけど……


「え? 学校に通ってたんだ!……ひょっとして、イイとこの坊っちゃんとか?」


「坊っちゃん言うな!」


 ……と揶揄われたり。いやホント、勘弁して下さい。公立の小中高だったので。まぁ、高校は普通高じゃなくて、偏差値の低いとこだけどさ……


◆◇◆


 でだ。俺は今……イリス宅の外に居る。何でって、水汲んできてって言われたから。今朝使った分で、水瓶の貯蓄量が限界を迎えたらしい。


「井戸は在るけど、出来ればちょい離れた所に小川があるから、そっちから汲んで来てくれる?」


 何故?……と訊いたら、そっちのが美味しいし長持ちするからだと……確かにその通りだ! と言う訳で、方角を聞いてから外に出たんだけど……迷ったぁっ!


「何処だ此処は……いや、私は誰?……とボケたりはせんが……」


 思い切り道に迷う。否、道なき道なので……クソッ……マジ、ナビが欲しいわ!


〈ナビゲーション、でしょうか?〉


 うわビックリしたぁーーっ!?


「えっと……カーナビみたいなスキルとかあんの?」


〈カーナビは存じませんが、似たようなスキルは御座います……修得致しますか?〉


 します致します、使いたいとその場で土下座するシギ。何となく戸惑う雰囲気を感じるが、その直後……


〈マップスキルを修得しました〉


〈使用する場合は「マップ」或いは類似語で意識すれば目前に表示されます〉


〈使い方は別途ヘルプが御座いますので、そちらを参照して下さい〉


 と、連打でシステム音声で案内されたのだが……


「……取り敢えずやってみっか」


(……マップ)


 ぶわっ……と、目前に地図が現れる。歩いてきた部分だけ色付き、未踏破部分はグレーアウトな典型的なゲームのマップだ……


「常時表示されるミニマップもあれば……あ、出た」


 視界の邪魔にならないよう、右上にミニマップが張り付く。頭を動かすと追随するけど、目玉を動かすと固定されている仕様だ。そのままだと見難いので距離感や拡大率を調整していく……


◆◇◆


「ふむふむ……理解した」


 あれから結構経っているし、そろそろ動かねばならない……何しろ、イリス宅のすぐ後ろに在る筈の小川から……見当違いの方角に歩いてたからなっ!


※大体、反対方向へ1km歩いたと思いねぇっ!(苦笑)


「この辺って、獣とか魔物とか出たりしないよな?」


 取り敢えず、マップのナビゲーションが頼りだと歩き始めるシギ……だが、世の中にはフラグと言う言葉がある。そして……


バキバキバキ……


ヴッ……モ゙ッ……


(何か出たぁーーっ!?)


 と、そこへマップスキルさんが反応する。


〈ファングボア レベル3〉


〈遭遇したばかりだが興奮している〉


〈毛皮を丁寧に剥げば防寒着に加工可〉


〈牙は装飾品に加工可〉


〈お肉は下拵えをきちんとすれば肉料理は美味〉


 いや!……情報は有り難いですけど!……弱点とか無いのぉーーっ!?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る