その2
──イリスの家──
「改めて、あたしはイリス。此処、チュウフク村の一員よ」
木造の……言っちゃ何だが粗末な家屋に案内されたシギは、時間的にはまだ明るいと言うのに人の気配が余りしない村の様子に戸惑っていた。
逆に考えれば、まだ明るいからこそ外に仕事に出ていて人が居ないのかも知れないが……
「俺はシギ。見ての通り、うだつの上がらない平凡な男だ」
尚、シギは高校を卒業したはいいが就職活動に失敗し、現在絶賛無職の身であり……転移寸前はどうしよう……と、ボーーっと歩いていただけだった。まさかの次元を超えた召喚である!
「そ、そっか……しかし、あの連中のランダム召喚ってそこまで上等だったかしら?」
イリスはチュウフク村より遠い所から人を呼び寄せると言った意味で呟いていたが、他にも何人か巻き込まれていたのでアリなのかも知れないと戦慄していた。
◆◇◆
「所で……」
シギが改めて切り出す。
「な、何かしら?」
「この村には他に人は居ないのかい?」
不思議に思ってたけど一応訊いた方がいいかなと思い至り、質問することにした。
「あーー……一応居るわよ? でも、暫く戻って来ないんじゃないかな?」
イリスがそう答えると、
「狩りか何かを生業にしてるのかい?」
と訊いてみたけど、曖昧に笑みを浮かべるだけではぐらかされてしまった。
(何か隠してる? んーー……無理に訊くのも何か違うしな)
「それよりあんたこそ何が目的で……って、召喚されたんだったわね……」
そう……。俺は気付いたら召喚されていた。言わば巻き込まれ召喚だと思うんだが……
よくあるラノベの大掛かりな勇者召喚とは違って犯罪者(だよな?)のランダム召喚の巻き込まれなので規模というかしょぼいと言うか(すぐ開放されたのでイマイチ危機感も無いし)……
それにランダム召喚は適当な周辺に存在する人をランダムに召喚するだけのスキルで大抵の場合は歩いて帰れる距離なので迷惑かも知れないけどそれだけのスキル……と言う事らしい。
「うん……しかも」
「しかも?」
「帰るアテもない……」
苦笑いになるイリスに泣きそうな顔の俺。取り敢えず暫くは泊めてくれるとの事……だけど、翌日、スキルについて色々と検証してたらトンデモない事実が分かったのだった……
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