第2話 瓶入りの水道水
水って不思議だ。同じ冷蔵庫の中にペットボトルより、麦茶のボトルより、瓶にいれて冷やした水のほうが美味しく感じる。
飲む時は、同じコップに注いで飲むのに。
別にミネラルウォーターじゃなくても構わない。お気に入りの青い瓶に水道水を注いで冷蔵庫で冷やす。それだけ。
どういうわけか麦茶のボトルよりもガラス瓶のほうが美味しく冷える。よく冷える。
熱伝導率の問題で、早く冷えるのはわかる。だが、一晩冷蔵庫に同じ二つを入れっぱなしにして取り出した時に、やっぱりよく冷えていて美味しいと思うのは瓶で冷やした水なのだ。
日本酒が入っていた真っ青な瓶。
お気に入りのコップは、無印良品の耐熱ガラスマグカップ。唇に触れるガラスが薄くて、飲み物の邪魔をしない良い品だ。プリンも作れる。
すぐに手の届く定位置から取り出して、瓶を傾ける。水は中でとぷんと揺れて、トットットットッと木琴の様な音を立てて注がれる。
冷蔵庫に瓶を戻す一瞬の間にもマグカップの表面は均一に汗をかいてくもりガラスのようになる。
冷やした水と氷水の違いは、氷が無いことだ。
やはり、水を飲むなら縁の薄いガラスが一番好き。氷も無いから、一気に喉へ流し込める。
喉の奥は脳に近い場所だという。
そこが冷えて、ざあっとお腹の中へ冷たい水が流れていく。私の体は雨樋になる。
人の体は約半分が水分で出来ているらしい。水というのもなかなか分からない存在だ。落ち着きがない。致死量は1日6リットルからだとか。中々の量。
飲んだ水の殆どは私の体を通り過ぎて、私の体になるのはおそらく十%にも満たないのだろう。
私の細胞がすべて入れ替わるのにかかる時間と、私の体に含まれる水がすべて入れ替わるのにかかる時間はどちらが早いんだろう。
ぶうんとインバーターの起動音がした。
今日も私は瓶で冷やした水を飲む。
ごちそうさまでした。
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