離婚話(麻也視点)
今日は弟・萌の入学式で引っ越しの日だった。
姉さんと弟がいるが仲はそんなによくない……
決して二人が嫌いなわけじゃないが
母さんの«お気に入り»の俺が特に姉さんと
仲良くすることを嫌っているから話せずにいる。
俺と母さん、姉と弟と父さんと分かれていて
父さんも滅多に帰って来なくなり
今では家に母さんと二人きりだ。
弟の入学式から三ヶ月経ち、
今日から夏休みだが二人は帰って来ないだろう。
+‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥+
夏休みも半ばになった八月中旬、
父さんと母さんの喧嘩する声で目が覚めた。
時刻はまだ朝方の午前五時。
「二人とも、朝方からうるさいんだけど?」
夏休みくらいゆっくり寝かせてほしい。
『起こして悪いな』
いいのか悪いのか幸いだったのは
今が夏休みで近所の人達も旅行に
行っていることだろう。
「まぁいいけど、朝方から母さんは
何でそんなに怒鳴ってんだ?」
話を要約すると父さんに好きな人ができたから
離婚してほしいということと親権は
父さんが持つということだった。
姉さんは成人済みだから主に
それで反論した母さんが
怒鳴り散らしていたらしい。
正直に言えば、俺はいいと思う。
姉さんは去年、家を出るまで家事全般を
こなしつつ、勉強も頑張っていたし、
母さんに嫌われているのを気付いていながら
それでも淡々と全てをこなしていた。
『菜々華と萌は二人暮らしだし、
離婚が成立すれば私もこの家を出る。
麻也がここに残りたいというなら
親権のことは気にせずにこのまま二人暮らしを
続けることは可能だがここに居たくない
と思うなら休日に物件探しに付き合うぞ』
そう言われて、ふと思った。
父さんと話すのも久しぶりだと……
「高校卒業まではここに居るよ」
俺も家事ができないわけじゃないが母さん一人じゃ
何かと大変だろうから後一年ぐらいは
家にいようと思う。
『そうか、麻也は優しいんだな』
その言葉に苦笑で返した。
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母さんがごねにごねて離婚が成立したのは
十二月半ばだった。
二人が離婚したからといって生活が
大幅に変わることはない。
家賃や俺の養育費や小遣いは変わらず
振り込まれているし
不自由することなく学校にも通えている。
萌とも学校では話すようになった。
「お兄ちゃん、これお姉ちゃんから」
主に姉さんからの弁当を
届けてくれるようになったからだ。
一時期、萌が引っ越した春から二学期までは
購買で済ましていたけど離婚が成立してから
また、姉さんが弁当を作ってくれるようになった。
「毎日ありがとうな、姉さんにも伝えといてくれ」
長い間にできた溝はそう簡単には埋まらない。
それでも、こうして毎日俺の分まで
作ってくれることに感謝している。
「わかった、だけどお姉ちゃんは
直接言ってもらった方が嬉しいと思うよ。
僕は教室に戻るから、食べ終わったら
お弁当箱取りにくるからLINEしてね」
俺と一緒にいた友人にお辞儀してから教室に戻って行った。
「なぁ麻也、姉弟仲よくないって言ってたよな?」
「そうだな、うちは元々バラバラだったからな(苦笑)
母さんは俺が«お気に入り»で姉さんのことは
‹‹苦手››にしてて弟はどっち付かずだったんだが
去年からは姉さん側について今年の春からは二人暮らしだよ。
それでも、一貫して変わらないのは
姉さんが
ご飯や弁当を作ってくれることだな」
そうだ、姉さんは何時だって理不尽なことも
我慢してろくに話さない上に今は別々に
暮らしている俺にもこうして弁当を作ってくれている。
「いいお姉さんなんだな。
さっきの弟くんじゃないがきちんとお姉さんに
お礼言った方がいいと思うぞ」
そうだよな……
「放課後、LINEしてみることにする」
「それがいいと思うぞ」
萌と宵の助言を聞いて放課後、姉さんに
これまでの謝罪と感謝のLINEをした。
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