待ち合わせ
透と出会って気付けば三ヶ月。
今日は一週間ぶりで待ち合わせをしている。
新聞記者をしている透は会社員の私と違って
休みが不定期のため中々時間が合わない。
だからこうして、会えるのは嬉しい。
『雅昭さん、お待たせ』
走って来たのか息を切らしていた。
『大丈夫、待ち合わせ時間まで後五分はあったんだから(笑)』
妻には少しの罪悪感はあるが誰かに愛される
喜びを知ってしまったからにはそれを手放すことはもうできない。
年の差は三つ。されど三つ。
やる気も気力も胆力も透の方がある!!
『はぁ~雅昭さんに会うと癒される』
私なんかで癒されてくれるならこの上なく幸せだが……(苦笑)
『私も透に会うと安らぐ』
家庭内崩壊とまではいってないが
ギリギリの均衡を保っている状態だ。
そんな中で出会った透はまさに安らぎ。
七菜華は私の理解者で我が家の橋渡しも担っている……
そろそろ解放してあげたい。
私は透にも七菜華にも包み隠さず全て話していた。
『ありがとうな。
何か食べに行かないか?』
夕飯がまだだったな。
二人でこうして夕飯を食べに行ったり、
透の家に泊まる際に妻には⌜知人⌟、
七菜華には⌜恋人⌟のと言ってある。
『歩きながら店探すか?』
食べたい物が思いつかないから歩きながら
探すことにしよう。
『そうだな』
選んだのはラーメン屋だった。
店を出て透の家に向かった。
同性カップルに対して嫌悪感を抱く傾向にある日本では
外で手を繋ぐことすら叶わない。
『透、抱き締めていいか?』
家に着いて手洗い・うがいを済ませた後
色々限界が来ていた私は透に訊いた。
『訊かなくてもいいのに、はい、どうぞ』
ぎゅっと抱きついてぬくもりを確かめる。
『家で嫌なことでもあったの?』
“嫌なこと”という程のことじゃないが……
『“家庭崩壊”とまではいっていないんだが
❨私と娘❩、❨妻と息子達❩と完全に分かれてしまっていてね……
娘は長女だからというのもあって
何かと私達の橋渡しみたいなことを
させてしまっていて、来月から大学生だし
そろそろ、解放してやりたいと思っているんだ』
七菜華自身がどう思ってるかはわからないが
かなりの我慢を強いてしまっている気がする。
『そっか、娘さんの気持ちが一番だけど
家、出たいって言ったらどうする?』
『七菜華の意思を尊重してやりたいさ。
物件探しも一緒にしないしな』
いつまでも、あの三人と私の間に挟まれた
窮屈な思いをさせているのは心苦しい。
『いい父親だな』
今の現状で﹝いい父親﹞と言えるんだろうか……
『七菜華は私達のことを応援してくれているが
私がいい父親をやれているのかは
また別問題な気もするが……(苦笑)』
『雅昭さんがいい父親だからこそ俺達のことも
応援してくれてるんだよ。
俺も長男だから会ったことがなくても話を聞いてるだけで
娘さんが雅昭さんを慕ってるのが
伝わってくるんだよ』
そういうものなのか?
私は物心ついた頃から片親で
母子家庭だったからな(苦笑)
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