【怨毒障碍のシンギュラリティ】
・二〇一七年、四月二日、日曜日/一回目
この日、
午前十時、これまでのように七戸鳴海が七戸鳴紗を強姦。同時刻、鳴海小遥が七戸鳴紗に会うために隣町のバス停へ。※鳴海小遥は家を出る前に、「鳴海繋がりで仲良くなった子の家に遊びに行く」と奥村遥人に伝えた。
午前十一時、鳴海小遥が七戸鳴紗の家へ到着。七戸鳴海が七戸鳴紗を縛り、猿轡を噛ませた後で対応。そのまま鳴海小遥も捕まえ、七戸鳴紗ともども強姦。
正午十二時、つけっぱなしにしていたテレビから、バスが民家に突っ込み、爆発炎上したというニュース速報が流れる。生き残った乗客の証言から、運転手の失神で制御不能とのこと。事故を起こしたバスは七戸鳴海の家の前を通る路線バス。
午後十三時五十分、七戸鳴海が時間を巻き戻す。
・二〇一七年、四月二日/二回目
一回目と同じ流れで七戸鳴海が二人を強姦。鳴海小遥に対する暴力行為がエスカレートしていく。
・二〇一七年、四月二日/三回目
同じ流れで七戸鳴海が二人を強姦。鳴海小遥に対する暴力行為が拷問へと変わっていく。
・二〇一七年、四月二日/四回目
同じ流れで七戸鳴海が二人を強姦。鳴海小遥を拷問の末に殺害してしまう。※念の為記述するが、拷問、殺害によって廃人になる訳ではなく、殺害後に肉を食われることで発症する。
・二〇一七年、四月二日/五回目
同じ流れで七戸鳴海が二人を強姦。鳴海小遥を拷問して殺害後に肉を食べた。これまで七戸鳴海は、七戸鳴紗の代わりに他の人物で加虐行為と食人行為を行っていたが、七戸鳴紗が隣にいる状況で行ったそれらの行為で歯止めが効かなくなり、七戸鳴紗に対しても拷問と食人行為を行ってしまい、結果七戸鳴紗も死亡。時間を巻き戻す。
・二〇一七年、四月二日/六回目
当然のように七戸鳴紗は廃人のようになっていた。とりあえずその状態の七戸鳴紗と性行為をしようとしてみたが、悲鳴や抵抗がなく、興奮出来ないことに気付く。※
廃人となった鳴海小遥は、バス停で車道側に倒れ、トラックに轢かれて意識不明の重体に。
七戸鳴海は七戸鳴紗で興奮出来ないことに絶望し、ふらふらと家の外へ。そこでバス事故のニュースを思い出し、気まぐれに事故を回避。後に表彰され、ニュースでも取り上げられる。※バス事故に関しては、回避出来ずに自分が死んだら死んだでいいと思っていた。また補足情報として、二〇一〇年~二〇一四年の能力の検証期間中も、気まぐれに時間の巻き戻しによる人助けをしている。この人助けに関しては七戸鳴海の性質に反しているように思えるが、実は「自分が生かしてやっている」という万能感で、何度も自慰による射精をしている。
・二〇一七年、四月二日(奥村遥人サイド)
奥村遥人は幼少期より、一度見た記憶を忘れないことや、幽霊が見えること、他者の感情の色や記憶が見えることを誰にも打ち明けられずに悩んでいた。そこへ二〇一〇年頃からデジャブ、いわゆる「既視感」と呼ばれる、経験したことがないことを経験したことがあるように感じる現象を、頻繁に体験するようになる。※もちろんこれは七戸鳴海の時間の巻き戻しによる影響であり、奥村遥人は時間を巻き戻されたとしても記憶を保持している。
そうしてこの二〇一七年の四月二日、奥村遥人はある違和感に襲われる。この日、自室でテレビを見ながらくつろいでいたのだが、ふと自分の中に別の記憶があることに気付く。バスが事故を起こして爆発炎上したという速報が流れる記憶と、速報も何もなく、いつも通りのテレビ画面が流れている記憶。これはどういうことだと悩んでいたところで、鳴海小遥がトラックに轢かれ、病院に運ばれたが意識不明の重体だと連絡が入る。※鳴海小遥はトラックに轢かれたことで意識不明の重体であり、目を合わせて記憶を読むことは出来ない。
・二〇一七年、四月六日(奥村遥人サイド)
失意の奥村遥人が、四月二日にバスの事故を回避したことで表彰された男子高校生がいることをニュースで知る。名前は七戸鳴海。その名前を聞いた瞬間、鳴海小遥が「
・二〇一七年、四月八日(奥村遥人サイド)
七戸鳴海は名前が知られており、隣町の奥村遥人の高校でも名前を知っている者は多かったので、すぐに所在は判明した。そうして七戸鳴海に会い、目を合わせた奥村遥人が時間の巻き戻し、強姦、拷問、食人行為、その他七戸鳴海の全てを知る。真実を知った奥村遥人は放心し、七戸鳴海は「変なやつだな」と思った程度で気にも記憶にも留めなかった。※もともと七戸鳴海は性の対象となり得ない男性の顔を覚えることが苦手。
・二〇一七年、四月六日~同年十月
真実を知った奥村遥人が七戸鳴海の殺害計画を立て始める。だが懸念点が一つあり、それは七戸鳴海を殺せるのかということ。半年に五回や四時間などの法則は分かったが、例えば殺した場合に自動で時間が戻ることはないのか──といったこと。仮に殺した後で自動で時間が戻ってしまえば、自分を殺そうとする存在がいることを七戸鳴海に認識されてしまう。だが殺してみなければ分からないというジレンマ。そこから七戸鳴海の記憶で見た、
ただ、この間に二〇一三年にも原因不明の精神疾患で倒れた人物がいることを知る。名前は
──────
────
──
「気持ち悪いです!!」
ホワイトボードにはまだ続きが書かれていたのだが、途中まで目を通した私は叫んでいた。叫んですぐに目からは涙が溢れ、口からは嗚咽が漏れる。「気持ち悪い、気持ち悪い」と、言葉も勝手に出てくる。理解出来ない悪意と醜悪な肉欲に吐き気がするし、頭が割れるように痛み、鼻からは血がぼたぼたと滴る。
そんな私の様子を見て、
気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い──
頭の中が嫌悪感で満たされ、脳が圧迫されるようにぎりぎりと痛み、地面をのたうってしまう。糸生さんや鷹臣さん、桜子先生がおそらく「大丈夫!?」や「救急車だ!!」などと焦っているが、もはや私には聞こえていない。そんな状態の私の耳に、「ゆるさ……ない……」「なんで……なの……」「いっしょにいるっ……て……」「ころ……してやる……」と怨嗟に塗れた冷えた声がする。それも複数、だ。
続いて狂った笑い声が聞こえ、そちらに目をやった。
ずるり、と、天井から長い髪を揺らめかせながら、顔の崩れた女性がこちらを睨んでいる。
さらに足元からは「あはぁ」と笑い声が聞こえ、視線を向けると頭が割れて脳が剥き出しの女性の顔。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
そう叫んで顔を逸らした目の前に、焼け爛れた女性の顔。気付けば周囲を無惨な姿の女性に取り囲まれていた。状況が分からず、恐怖から漏らしてしまう。気付けば私は、鼻や口から血を垂れ流しながら走り出し、事務所の外へ飛び出していた。
気持ち悪い! 怖い! 頭が痛い! 吐きそう! 嫌だ! 嫌だ嫌だ嫌だ!
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
叫びながら外を走る私を、危ない人を見るような目で通行人が避けていく。そんな私の視界には──
どちゃり、と、目の前に女性が落下して脳漿をぶちまける。
ぐちゃり、と、走ってきた女性の体が腐るように崩れ落ちる。
足や腕には無惨な姿の女性達が絡みつき、私は叫びながら無我夢中で走った。
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