第4話 ホンモノだ
-side エドワード-
「エドくんはなぜこんなところに来たの?」
ベッキーが聞いてくる。うーん、本当は他国から逃げてきたからなんだけど、そー言うわけにはいかない。冒険者間では御法度な詮索をやってくるあたり、こういう臨時パーティを組むとかはやったことがなさそうだ。やっぱり貴族の令嬢が濃厚だなー。
「うーん、トロール王国の美味しい食べ物が食べたいと思ったんだよね」
「なるほどー!それはいいわね!」
ベッキーの顔色がーーパアッ!と明るくなる。
さっきから思っていたんだけど、このオネーサンチョロすぎない?
すぐに騙されないか心配何だけど……。何でろくに護衛もつけずにこんなところでうろついているんだろう?危なっかしい。余計な詮索をするのはあまり良くないし、こっちが巻き込まれる可能性も高いことを考えると迂闊に聞けないのが残念なところだ。
ーーカア〜カア〜
そんなことを考えていると、モンスターがきた。黒い鳥の魔物ーー名前はブラックロウ。
俊敏性:⭐︎4
賢さ:⭐︎3
耐久:⭐︎1
攻撃力:⭐︎1.5
レビューを見てわかる通り、賢く攻撃的で、厄介な相手だ。
冒険初心者の最初の壁と言われている。
ちなみに、この魔物は爪で攻撃されるが、攻撃されても痛いだけで、すぐにやられると言うことはない。
だから、冒険初心者にとっては訓練相手として非常にありがたい存在である。
早いし賢いので、攻撃は当たらないが耐久はペラペラなので当たったらほぼ確実にワンパンだ。
低ランク冒険者はこの魔物で全ての戦闘の基本となるエイム力を磨くのだ。逆にこの魔物を倒せないのに、下の階まで行ってしまうと危険である。
ちなみにこのレビューは最弱の王スライムを⭐︎1、全ての能力値が平均的な魔物、オークが⭐︎3とした時の比較である。
「きた!!あの魔物はあたしに任せて」
「はーい」
ベッキーが率先して、行ってくれる。
自信ありみたいだねー。まあ、1人でこんな辺鄙なところに来るくらいだからね。
よっぽど、ダンジョンに潜り慣れているのだと思う。
ちなみに、俺もあの魔物は自動追尾火球魔法を使って一撃で倒せる。
だがまあ、せっかく倒してくれると言っている相手の好意を断るのは何だし、相手の動きなども把握してほしいし、倒してもらおうか。
「ウィンドカッター」
彼女がそう唱えると風の刃が現れ飛んでくる。
ーーカ、カアアア。
みじん切りにされてあっという間に終わってしまった。
「見事」
「これくらい当然よ」
やはり、かなりの魔法使いなようだ。少なくともエイムはそうとういい。
魔力量も多いのだろう、魔法の術式には無駄がある。
流石にこれくらいの相手では立ち回りなど他の実力を測るのは無理か。
「さて、このくらいの相手はつまらないわね、サクサクいくわよ」
「……」
うーん、これくらいの相手ってオネーサンにとってはこのダンジョンの魔物全部こんな感じで倒せると思うけど、知らないのかなあ?うーーん。
言いづらい。
「何よ?どうしたの?」
「あのさ」
「ん?」
「知っていたらあれだけど、多分このダンジョンオネーサンにとっては簡単すぎるよね?もっと難しいダンジョンの方がいいんじゃない?」
「あーいいのさっきも言った通り、日頃のストレス発散だから」
うーん、知っていたようだ。やっぱり、この人ホンモノだ。
----------------------------------
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます