第5話 掲示板の民
-side エドワード-
「それで、エドこそこんなマニアックなダンジョンにどうしてわざわざ入ったの?行くにしてももっと安全なところあったわよね?」
「趣味だよ?記録つけてるんだ」
2階層は難なく突破した。おそらく、次がラストの階層だろうという手前の休憩スペースにて俺はお姉さんに話す。ちなみに、休憩スペースは簡素だったので、ここでの居心地は⭐︎1。休憩スペースが良かったら、お気に入りになるケースも多いがここは1回入ればもういいかなという感じのダンジョンだ。
お姉さんがホンモノの貴族令嬢だという事を知った俺はノートを見せる。
「……!これ!冒険者ギルドの掲示板に書いてあるやつよね?多くの冒険者が参考にしている!いつもとってもお世話になっているわ!」
その返しがホンモノすぎて笑えてしまう。
俺が最近掲示板に載せている情報はそこまで優しくはしていない。優しい情報はギルドに売ってそれをギルドが編集して出版しているからだ。初めは掲示板に情報を載せていたが、噂を聞きつけたギルド上層部から多くの冒険者が必要としているなので売って欲しいという依頼が来たのだ。
もちろん、匿名でだ。俺の身分はその際に一部のギルド関係者に明かすことになったが、そのおかげで色々ギルドが便宜を図ってくれることになった。
それはそれとして、そう言う経緯があるから今掲示板を見ている時点で冒険ガチ勢なんだよねえ。
多くの冒険者と言ってるけど、本当なのだろうか?
「そーなの?確かに趣味で掲示板に投稿しているけども」
「そうよ!難攻不落と呼ばれるダンジョンの評価まで載っているからどこのヤバい冒険者だと噂されているから気になっていたのの、あなただったとは……、はあ、納得」
「ということは、お姉さんも掲示板の民?」
「そうよ」
おお、数少ない同士がいて嬉しい。
あまり、掲示板の民ということを全面に出すと冒険ガチ勢ということがわかってしまい引かれてしまうことも多いので全面には出さないようにしているからね。
同志を見つけるのは一苦労だ。ちなみに同志のほとんどはバケモンみたいに強いので大体がAランクかSランクである。
お姉さんみたいな、平均くらいの冒険者は稀だ。きっとこの人も強くなるだろう。
もちろん、貴族令嬢なのである程度の強さは求められているだろうが、そこまでのガチさは求められる場合は数ないのでどこまでその強さが役にたつかは疑問なところではあるが。まあ、それは俺も他人のことを言えないのでツッコミはしない。
「それにしても、こんだけ早くダンジョン攻略が進むとは思わなかったわ」
「まあ、お姉さん結構強いからやりやすかったよ、基礎がしっかりしている」
「そう?あなたみたいに強い人にそう言ってもらえて嬉しいわ?」
おお、俺の見た目だと身分がわかっていたとしても、普通は俺の実力を見たら初対面だと気味が悪がられることがほとんどだけど、そんな事ないようだ。ちゃんと1人の人間として尊敬してくれている感じがする。
いい人だな。
「本当だよ、だって魔物解体する時にそんなに躊躇なくザクザクいける人中々いないもん」
「そ、それはよく言われるわね」
よく言われるんだ。
「でもでも!ほら、美味しいもの食べたいと思ったら、自分で捌かなきゃいけないでしょう?」
「うんうんそーだね」
「あっ!もう聞いてない!ーーって先行かないでー!」
美味しいものを食べたいからと言って別に魔物を捌く必要はないんだけど、食へのこだわりも強いようだ。
多分、これ以上はツッコミが追いつかなさそうなので、そういうことにしておこう。
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