第2話

 銃声が響き渡った直後、伊吹とイヴァンの戦いは突然の爆発音で中断された。港の遠くで起きた爆発は、双方の注意を引き、戦闘は一時的に休止状態となった。


「状況が変わったようだな…」と、伊吹は冷静に呟きながら、イヴァンを睨んだ。彼の言葉は、ただの観察ではなく、何かを予感しているかのようだった。


 その瞬間、伊吹の通信機に部下からの緊急連絡が入った。「リーダー! 貨物船の中で異常な事態が発生しました。何かが、巨大化しています!」


「何だと?」伊吹は驚きを隠せなかったが、すぐに冷静さを取り戻した。「詳細を報告しろ」


「貨物室にあった動物用コンテナが破裂し、中から異様に大きくなった生物が出現しました。それは…イベリコ豚です!どうやら、何らかの実験が行われていたようです」


 その報告に伊吹は眉をひそめた。「巨大化したイベリコ豚? アメリカが何を隠していたか、ようやく理解できた。だが、どう対処するかだな…」


 一方、イヴァンもこの異常事態に気づき、護衛部隊と連携を取ろうとした。しかし、通信は遮断されており、彼は船の中に何が起こっているのかを直接確認するしかなかった。


 港の霧が晴れる中、巨大化したイベリコ豚はすさまじい勢いで暴れ回り、船や港の施設を破壊し始めた。その姿はまるで巨獣のようであり、普通の武器では到底太刀打ちできないほどの力を持っていた。


「これはただの豚じゃない…」イヴァンは自分に言い聞かせるように呟いた。「これは何か…もっと恐ろしいものだ」


 伊吹は状況を分析し、決断を下した。「この混乱を利用する。ライフルの奪取が第一目標だが、もしこの豚が手に負えないならば、奴を封じる手段を探さねばならない」


 その頃、イヴァンは船内を進みながら、偶然にも貨物船の船室で一冊の本を見つけた。それは古びた官能小説だった。しかし、そのページには異常な記述があり、豚の巨大化に関する古代の呪術について触れていた。どうやら、この船は単なる兵器輸送ではなく、実験的な呪術技術をも扱っていたようだ。


「呪術…これが鍵か?」イヴァンはそう考え、船の奥へと進んだ。彼が辿り着いたのは、船の深部にある実験室で、そこには異常に大きな試験管や未知の化学薬品が並んでいた。


 一方で、伊吹は自らの計画を進めつつも、巨大な豚がさらに暴れ出すのを見て状況が悪化するのを感じていた。彼の体には過去の戦場で負った古傷が痛み始めていた。特に痛風が再発し、激痛が足を襲う。


「この身体では限界が近い…」と伊吹は苦々しく思ったが、すぐにその思考を振り払った。「今は止まっていられない。計画を完遂するまでは…」


 イヴァンは巨大化した豚が再び港に上がろうとするのを阻止するため、実験室で見つけた化学薬品を混合し、即席の武器を作ることに成功した。伊吹も一時的に痛風の痛みを抑え、最終的な決戦に向けて動き出した。


 伊吹とイヴァンの最終決戦は、港を舞台に、巨大化した豚を巻き込みながら展開された。彼らは互いに一瞬の隙を狙い、衝突するたびに火花を散らした。


 最終的に、伊吹はイヴァンに強烈な頭突きを食らわせ、その隙を突いて豚に向けた化学薬品を放った。巨大化した豚は薬品の影響で次第に縮小し、ついには元の大きさに戻った。


 イヴァンは伊吹を倒し、貨物船を封じることで、再び港の平穏を取り戻した。しかし、この一連の事件の裏に隠された陰謀は、まだ明らかにされていない多くの謎を残したままであった。


 物語の結末として、イヴァンは伊豆の温泉地へと休養に訪れた。彼は戦いの疲労を癒しながら、再び介護の仕事に戻ることを決意する。そして、伊吹が残した暗い影は、世界中に新たな波紋を広げることとなるのであった。

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