俺の世界

鷹山トシキ

第1話

 国際的なテロリストグループは、ルーマニアの港町コンスタンツァにおいて、アメリカ合衆国が秘密裏に輸送している新型アンチマテリアルライフルを強奪する計画を進めていた。このライフルは、一発で装甲車を貫通するほどの破壊力を持ち、その存在自体が軍事バランスを大きく揺るがすものだった。


 テロリストグループの指導者である伊吹は、かつてルーマニア軍に所属していた狙撃の名手であり、冷静かつ緻密な戦略家でもあった。彼は、コンスタンツァの汽水域に停泊するアメリカの貨物船を標的に定め、計画を練り上げていた。


 作戦開始の前夜、伊吹は部下たちと最終的な打ち合わせを行った。彼の部屋には、テロリストたちが集まり、地図と作戦図を囲んでいた。


「予定通り、明朝の霧が濃くなる時間帯に攻撃を開始する」と、伊吹は低く静かな声で言った。「まず、護衛部隊の注意を引くため、港の南端で小規模な爆発を起こす。その混乱の中で、我々はライフルを奪取する」


 部下の一人が手を挙げて質問した。「伊吹、護衛が思ったよりも多かった場合、計画に支障が出る可能性は?」


 伊吹は冷静に答えた。「その場合は、計画を迅速に切り替える。無駄な交戦は避けるが、必要であれば容赦なく排除する」


 一方、アメリカ側もこの動きを察知しており、護衛部隊の増強を決定していた。その中には、元軍人で現在は介護施設で働くイヴァンが含まれていた。イヴァンは戦場を離れ平穏な生活を送っていたが、今回は特別な依頼を受けて再び戦場に戻ることになった。


 イヴァンは、護衛部隊のリーダーであるウィリアムと共に船内の作戦会議に参加していた。ウィリアムが作戦の概要を説明し終えると、イヴァンが口を開いた。


「テロリストたちがアンチマテリアルライフルを狙っているのは明白だ。だが、彼らがどこから攻めてくるかはまだ不明だ」


 ウィリアムは静かに頷いた。「そうだ。しかし、我々は全ての可能性に備えている。伊吹という男は非常に危険だ。彼を侮ることはできない」


「了解した」イヴァンは短く答え、部屋を出た。


 翌朝、港は霧に包まれ、視界がほとんどない状況となった。テロリストたちは計画通りに行動を開始し、港の南端で爆発を起こした。護衛部隊がその方向に注意を向ける中、伊吹と彼の部下たちは密かに船に接近した。


 激しい銃撃戦が港全体に広がり、緊張がピークに達した。その最中、伊吹とイヴァンが遂に対峙する場面が訪れた。


「ここで終わりだ、伊吹」イヴァンは冷静な声で言い、銃を構えた。


 伊吹は一瞬の静寂の後、冷たい微笑を浮かべた。「終わりなどない。我々の闘いは、ただ次の章を迎えるだけだ」


 二人は、互いに引き金を引く瞬間を待つかのように、緊張した沈黙の中で対峙した。その後、戦いの結末が港全体を震撼させる出来事へと繋がっていく。


 この一連の事件により、世界の秩序は再び揺らぎ、テロリストグループの影響力は一層増していくこととなる。そして、伊吹の言葉通り、彼らの闘いは新たな章へと続いていくのであった。

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