体温計は好きで嫌い
体がだるくて気分もあまり乗らなくて、それでも「熱がないなら学校に行きなさい」と言われた経験が誰にでもあると、私は信じている。水銀が入ったものよりもずっと安全な現代の体温計は、幼い私の味方、成長した私の敵だった。
みんなと同じことをするのは昔から苦手だったし、小学校に上がってそれが顕著になってしまうことにも悩んでいた。でも、ひとつだけ言っておきたい。クラスみんなで仲良く遊ぶとか言いながら、私が本当に楽しめる図書室でのひと時とか、少ない友人と工作をする時間を奪わないでほしかった。学校って好きではなかった。しかし、当時の私がしんどいと感じたときにはたいてい熱があった。学校は休めるほどの体温、テレビを見て3DSもできる体力。この時間を得られるなら、皆勤賞なんて紙一枚をもらえなくてもいいと思っていた。書類に特筆できることもなかったのに、中学受験の時期に担任の先生はどうしてくれたのだろう。
ここまで書いた私は、執筆を投げ出して理由もないのに泣いてしまった。中学時代の話をしてから、私のとった行動を伝えようと思う。私立中学での生活に疲れて十三歳で心療内科と出会った、これはまだ理解してもらえるだろう。しかし、十四歳で小児科と再会する、これは理解に時間がかかりそうだし、私もそうだった。その小児科にかかった理由は起立性調節障害。血圧や心拍数がうまく調節できず、激しいめまい、乗り物酔い、そして何よりも困る朝起きられない症状が出るのだ。人によってはある発熱が、めまいに苦しむ私にはなかった。熱がないなら行くなんて風潮、どこから生まれたんだろうね。この苦しさはいつかきちんと表したいけれど、その時は誰かが読んでくれるかな。今も治ってないけれど、午後からのアルバイトをなんとかしている。
さっきは一時間ほど泣いて、夜の十時になっていた。アルバイトをしているカフェは、ベッドから起き上がることさえできれば近いから、ラストオーダーの十時半までに行けそうだ。雰囲気の温かさと、実際にそうしていた先輩の存在から、お客さんになることに抵抗はなかった。店名は伏せるけれど、勘のいい人ならたぶん分かるココア味のバウムクーヘンを食べた。そのお店が大好きなのにバウムクーヘンは食べたことがなく、店長に「美味しいからいつか食べて」と言われていたのだ。閉店ぴったりでお店を出て、カラオケに向かった。お気に入りの曲に出てくる高いレを地声で出すチャレンジをしていた。一番サビ、二番サビ、落ちサビ(間奏の後の静かなサビ)、最後のサビにその箇所がある。落ちサビの採点のバーを見ると、その音に当たる前に少し低いところを通っている。最後のサビ、力任せだけどやっと出せた。今日の任務完了、そんな気分だった。深夜のこと、高校を卒業してからいい時間に感じている。
憂鬱な朝に、「熱はないけど休みたい? じゃあ今日は心を休ませにどこか行こうか」と言ってもらえる。そんな環境で中高生が生きられることを願っています。
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