赤とロペピクニック

 県庁所在地の商店街には今も魅力的なお店がたくさんあるけれど、ロペピクニックがなくなったことがどうしても悲しい。

 私は、小学校で時にいじめのターゲットになってしまう、いわゆる「同じ洋服しか着ない子」だった。夏は黄色のシャツにデニムのショートパンツ、冬はスヌーピーが描かれた上着に長ズボン。その記憶が強いから、春や秋にどうしていたかは覚えていない。季節が巡ると前年の服なんて入らないのが小学校高学年。

「もう着れない服も多いから一緒に買いに行こう」

両親のその言葉を渋々受け入れて車で一時間、屋根付きなのに冷気が流れ込む商店街に向かった。当時はもうレディースのSサイズが着られたから、キッズブランドではなくロペピクニックにたどり着いたのだと思う。そこで私は赤いコートと出会った。それまでサイズの確認だった試着を、自分に似合うか確かめるものだと初めて感じられた。あまりにも気に入ってしまった私に、店員さんから「このまま着て行かれますか?」の質問。もちろんでしょ、そんな表情をした。その日は赤いコートで街に繰り出して、それからもおしゃれさんの多い都会に行くときの特別な服と決めていた。インターネットでМサイズも入手して、そのデザインとは十五歳くらいまで友達でいることになる。

 地元から新幹線の駅は遠いけれど、大学受験をきっかけに利用したタイミングでその近くのロペピクニックを利用した。ちなみに受験本番とは思えないほど遊んだ理由は、気負った私に父が言った「旅行気分でいいよ」の言葉だった。真に受けないとやってられないよ。秋が始まったころ、いきものがかりの曲「好きをあつめたら」が使われたロペピクニックのCMを見た。実際に店舗を訪れると、赤のセーターとオレンジのセーターがあり、光が当たればその色味の違いはわずかだった。でもここで選んだのは、やっぱり思い入れのある赤色。リュックに単語帳、スーツケースに新しいセーターを入れて、受験の遠征を明るく終えた。

 冬服には愛を感じる。寒くなったら、やっぱり涼しい時期から、いろんな人に会って「あったかそうな服着てるね」と言い合いたい。

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