第8話 現状認識と展望

「で、あるか。」


で、あるかキターーー、本当に信長って「であるか※」言うんだ?

なんか歴史の証人になった気分(そこか

※信長の登場する作品で、信長が肯定の意を表す時によく使われる定番表現。


「ただ、一つ言えることがあるとするならば、信長様に直接ご助力する事に関しては迷いがありますが、かといって織田家以外のところに行く気はないという事です。」


「その言葉をそのまま鵜呑みにも出来ぬが…とりあえずは、まぁよい。

天下統一した後に天下分け目の決戦?とか、そちが名前を濁した天下統一者と江戸幕府の開闢者かいびゃくしゃなど気になる点も多々あるが、今日はもう遅い。部屋を与えるがゆえ、ひとまずは休むと良い。

また、明日の夕餉後にでも話を聞こうか。それくらいなら構わんだろう?」


「はっ。…つきましては、紙と筆をお借り出来ますでしょうか。

自分の知識を整理してまとめつつ、話をする際の資料にしたいと思います。」


「よきに計らえ。」




信長様の退出後、小姓の案内で与えられた部屋に入ると敷かれていた布団に寝転がる。


「ふぃー、緊張した。

しかし、どうするかな…。」


信長様に仕えてよいのだろうか。なんとなく覚えている歴史としては、足利義昭を引き連れて京に上洛した後は、信長包囲網(第一次~第三次だったかな?)が敷かれて、さすがの信長も大苦戦で全ての選択肢が正解だった訳ではないだろうが、もしどこかで史実と違う場所で一つ誤った選択をしただけで、織田家は戦国時代にすり潰されていたかもしれないくらい瀬戸際の攻防の連続だったはずだ。

そこを切り抜けた時に一気に戦国の覇者たる地位に登り詰め、天下統一に手が掛かった…正にその直後に本能寺の変でたおれた。

その大苦戦の連続を自分が未来を教えることで何かの歯車が狂い、信長の飛躍が無くなってしまう事は無いだろうか。

それだけが、それだけが本当に気掛かりだ。


そこさえしのげれば、あとは本能寺の変を起こさせないようにすればいいだけ。明智光秀が裏切った理由ってはっきりとは分かっていないんだけど、ある程度推測はされていて


・本能寺の変の直前に徳川家康の接待役を務めたがそこで不備があり、それを信長に大勢の前で面罵めんばされた。


・山陰地方の攻略を言い渡された時に切り取り放題(敵から奪った領地はそのまま自分の物にして良い)という条件をもらったが、その代わりに現在の領地は即時召し上げとなった。秀吉等の他の重臣は、現在の自領地を認められたまま各地の攻略に向かったのに対して、光秀は領地を取り上げられた訳だ。

そのため相手から領地を奪うまでは自領地が無い状態となり、自分の部下や兵達に給料を払えなくなった。


とかこんなところが主な理由だと思われてる。

と、まぁそんなマイナス感情がいっぱいの状態の光秀の目の前に、(秀吉の毛利攻めの応援のために大坂に行く途上の)信長様は本能寺にわずかな手勢で宿泊してしまった事が原因で本能寺の変が起きた訳で、そんな隙を見せなければ謀反自体起こらなかった(本能寺の変後の光秀の行動に計画性が見られないため衝動的に行動した可能性が高い)と思われるし、少なくともそこで信長様が討たれるという最悪の事態は避けれた筈だ。


そこだけは確実に信長様を助ける…自分なら救う事が出来る。


え?歴史改変していいのかって?それはもう考えない事にしたよ。

信長様の近くで歴史が作られるのをみたい。歴オタ…まではいかないけど、歴史好きにしてみれば、目の前で――特等席で歴史が紡がれるのを見ることが出来るこんなチャンス逃したら勿体ない!


ちなみに仕える相手として、信長様以外は考えてないよ?そこまで魅力的な大名ってそんなに浮かばないしなぁ。

武田信玄とか上杉謙信とかの有名どころも魅力的ではあるけど、信長様より年齢上で先に死んじゃうの知ってる分、信長様より上がり目少ないかなぁ。第一既に大大名だから、自分みたいなのがお目通りが叶う気がしないし、相手にもされなそう。

徳川家康…今は松平元康か?は、放っておいても…むしろ放っておいたら天下が転がり込んでくるしなぁ。自分がいなくていい…言い換えると役に立てないともいうね。


間をとって豊臣秀吉…今は木下藤吉郎か?は、どうかって事になるけど、信長は自身のカリスマと戦略眼で戦国時代を登り詰めたタイプだけど、秀吉は本人の能力よりも配下の能力を上手く使ってのし上がったタイプだと思ってる。

そう考えると信長より上手く使ってもらえるという可能性もあるけど、彼の元には綺羅星の如き将星達が集まってともに立身出世するからなぁ。…自分もかなりの存在感を示さないと家中で秀吉に具申出来る位置にはいられないんじゃないかな。

百戦錬磨…になる歴史上の偉人たる武将達に混じって、一般人の自分がそんな力を発揮できるとは思えないよ!

それに第一今の秀吉の身分って足軽くらいな感じで俺の事を養う事なんて出来ないだろうし、ねぇ?それと信長様以上に本能寺の変を秀吉に伝えるのがなんか怖い。なんでか言葉にしづらいけど。


今の心境としては、ちょこっと助言して食客しょっかく辺りの身分で落ち着けて、帰還手段とか探せたら良いかなぁって気持ちかなぁ。戦国時代にも僧だけどいたでしょ。助言者アドバイザー的な。太原雪斎たいげんせっさいとか安国寺恵瓊あんこくじえけいとか。食客じゃないかもしれんけど。

武将になって大暴れ?軍師になって大活躍?

ないない。まずそんな度胸ないし、責任も持ちたくないし、もし現代に帰還するならそういう身分は足枷になるからね。


「はぁ、でも現代か。帰れるんかな…」


しかし、何がどうなって戦国時代にいる事になったのやら。現代はどうなってるんだろ。いなくなって心配されてるんかな。


「風呂、入りたい…」


ふと、そんな言葉が漏れた。

疲れたし、風呂入りたいよ。そういやこの時代に風呂って多分無いよなー。

でも五右衛門風呂ってものがあるし…って、あれは石川五右衛門が豊臣秀吉に釜茹での刑にされただけでこの時代ではまだそれが風呂って訳じゃないな、間違いない(キリッ

武田信玄とかは温泉入ってたみたいだね。そう考えると武田家も…(マテ

湯は…無理か、水と手拭いもらって、身体拭いてから寝ますかね。


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新作書き始めたので、以前なろうに掲載した作品を多少の改稿をして新作宣伝用に投稿します。本作は全19話で、全話投稿済です。よろしくお願いします。


↓新作です

何度倒してもタイムリープして強くなって舞い戻ってくる勇者怖い

https://kakuyomu.jp/works/16818093082646365696/episodes/16818093082647161644

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