第4話 信長様…デスヨネ。
清洲城に着くと一室に案内され、夕餉をご馳走になった。別に信長と面を突き合わせて一緒に食う訳ではなかった。よかった。信長と分かってしまえば、飯が喉を通らなかったかもしれん。
夕餉の内容は、白米の飯に汁物に焼いた魚が一尾。
今日獲れたものだろうか。鮮度が良さそうで脂ものってて美味かった。
同席者は無かったため、落ち着いて食べれた。と、同時に今後の事を冷静に考える時間もあった。
あ、そうそう。気になる携帯電話だけど、もちろん圏外だった。充電が心許ないから、とりあえず電源落としておいた。…使い道があるとも思えないけど。
そして、夕餉後すぐに
「飯は美味かったか?」
日が落ちて周囲はすっかり暗くなっているが、灯火が点けられた室内の一段高い場所に座った若殿は昼間の庶民と同じような服装ではなく、小綺麗なパリっとした格好になっており、肘掛けに肘を置きながらそう聞いてきた。
うわぁ、こうして見ると迫力あるなぁ。
魔王の雰囲気十分だわ。俺、昼間によく軽口叩けたな。
「はい、大変美味しくいただけました。」
「では、そちが見聞した話とやらを話してみよ。嘘偽り無く…な?」
ん、おや?
これプレッシャーかけられてる?
「まず海外の国、南蛮と呼ばれる国の情勢ですが…」
「待て。まず、その服装を買った場所を答えよ。何という店で店主は誰だった?わしもそのような奇抜な服装に興味があるからな。どこで買ったか是非とも知りたいところだな。」
…えっ。店?購入相手?
堺の商人っていうと今井宗久?でも、屋号なんだっけ?いや、思い出せたとしても問い合わせて確認されたらおしまいだ。
(※現代と違って堺まで片道何日もかかるのでわざわざそんな確認はしません)
「そして、那古野と言ったな。那古野のどこにおったのだ?」
まずい、答えられない。
「那古野はわしに縁深き土地でな?那古野城は、わしが産まれた際に父である信秀がわしにくれたのよ。とある事情によりつい先年から居城をこの清洲に移しておるが、ようするに産まれも育ちも那古野な訳だ。そちのような者を見た事もないし、そちのような存在がありそうな家も心当たりが無い。」
話しながら
あうあうあうあ。
冷や汗が止まらない。マズいマズい。
否応なしに
「念のため、そちが飯を呑気に食っている間に、那古野に使いを出して確認したが、そちのような存在は見た事も聞いた事も無いそうじゃ。」
どうする?どうする?
俺の
…4枚とも『絶体絶命』だったよ!
「嘘偽り無く…」
「
そういうと、ニヤリと笑った。
若殿は…いやもう信長様でいいよね。
清洲城主で父親が信秀だっていうんだから。そこまできて若殿が信長じゃなかったらおかしいし。
どれぐらいおかしいかっていうと、
フランスワールドカップのメンバー発表の時に岡田監督が
「外れるのはカズ、三浦カズ」
って言ってキングKAZUが日本代表から外れた時に、
実は外れたのが三浦知良じゃなくて、三浦友和(俳優、妻は山口百恵)だったくらいおかしい。
いや、その例えの方がおかしいだろ。
あー、いや何言ってるんだ、オレ。っていうかどうしたらいい?
こんなどうでもいい事考えて無いでこれを突破する良案を考えてくれよ、俺の
「ん?答えられんか?そういえば、そちの名前を聞いてなかったのう。それくらいなら答えられるであろう?」
「…末次武政と申します、信長様。」
気付いたら喉がカラカラで、唾を飲み込みながら答える。
「末次…か、聞かん名じゃな。生まれはどこじゃ?」
「名古屋…にござりまする。」
「先程告げたように、わしは生まれも育ちも那古野じゃ。そして、そのような出で立ちでなくとも、主のような人物を見た事は無い。
ふー、すー、はー。
ここいらが潮時か。これ以上、誤魔化すのは余計に事態が悪化するだけな気がするよ。
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新作書き始めたので、以前なろうに掲載した作品を多少の改稿をして新作宣伝用に投稿します。本作は全19話で、全話投稿済です。よろしくお願いします。
↓新作です
何度倒してもタイムリープして強くなって舞い戻ってくる勇者怖い
https://kakuyomu.jp/works/16818093082646365696/episodes/16818093082647161644
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