第3話 あ、あれ。貴方はもしや?

その後の道中も取り巻きの人たちと一悶着はあったが、若殿と呼ばれるその人の一言が決定的でとりあえず窮地を脱出する事は出来た。


飯を食わせてもらえるその場所へと向かう道すがら、取り巻きの人達からは白眼視されるが、若殿ではない三騎のうちの一人…若いイケメン…から、親しく話しかけられた。


「いやぁ、若にあんなに対等に口をきけるとは恐れ入るね。

若は殿様でもあるのに見ての通りあんな格好してるし豪放な性格だけど、結構短気だからさ。お前がいつ逆鱗に触れるかとヒヤヒヤしたよ。」


と笑いながらいうと、結構強い力で背中をバシバシと叩かれた。


「この前なんかさ、山賊と意気投合して酒盛り始めたかと思いきや、その直後にいきなり斬りかかって皆殺しだよ。

いやー、びっくりしたね。

山賊と酒盛りし始めたのもビックリだけど、気分よく飲んでるように見えたのに、そこで突然斬りかかったからね。キミもこの後、一緒に飯食うみたいだけど、油断しないようにね。」


「うるさいぞ、犬千代!そんな事を言いながら、あの場で一番多くの首級しるしを挙げたのはお前だろうが!」


と、若殿から木の実っぽい物が飛んでくるが、犬千代と呼ばれたイケメンは肩を竦めながら、器用にもヒョイっと避ける。


うへー、まじか。

今の話を聞いた感じだと、同じ釜の飯を食う仲になっても全然安心できないか。

って、それよりも…えーと犬千代って呼ばれてたよね、このイケメン

自分の脳内DB《データベース》に、一応犬千代ってワードがあるんだよね。


ただ、犬千代って名前はひょっとすると珍しい名前じゃなくて、俺が知ってる人とは同名なだけで全くの別人の可能性も多々あるんだけど…でもまず戦国時代で犬千代って言うと思い浮かぶのは


―――前田利家


加賀百万石の祖で五大老にもなった大大名。若かりし頃は織田信長の側近を務め、槍の又左と称されかなりヤンチャだったとか。

問題は「織田信長の側近」の部分だよな。

チラッと前方で騎乗している若殿を見る。


あー、うん。

なんとなく無意識に考えないようにしてたけど、あれかな?

なんか周りの取り巻きさん達の会話で清洲きよす(清洲城は信長が尾張を本拠地としていた時代のメインの居城)とか聞こえるし…。名古屋にも反応してたし…この時代だと那古野か?

うーん、これはもうほぼ確定かなぁ。


――織田信長


歴史上類を見ないほどの開明的な人物として知られていて、奇妙な存在である自分への理解が多少なりとも期待できる。

その反面、理由は知らんけど結構な数の重臣達が信長の命令で追放されたり、この世を去っていたりするからなぁ…。

ただの家来じゃないよ?重要な家臣で重臣だよ、重臣。重臣ですら…なのに。


俺、明日の太陽の光を拝む事が出来るかなぁ。

そう思いながら一行についていく。


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新作書き始めたので、以前なろうに掲載した作品を多少の改稿をして新作宣伝用に投稿します。本作は全19話で、全話投稿済です。よろしくお願いします。


↓新作です

何度倒してもタイムリープして強くなって舞い戻ってくる勇者怖い

https://kakuyomu.jp/works/16818093082646365696/episodes/16818093082647161644

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